親から相続した不動産の名義変更(相続登記)にかかる費用は、「登録免許税+書類の取得実費+(依頼するなら)司法書士報酬」の3つの合計です。固定資産税評価額1,000万円・土地1筆+建物1棟・相続人3名という標準的なケースなら、自分で申請すれば約4.6万円、司法書士に依頼しても約12万円が一つの目安になります。
ただ、多くの記事が「相場は5〜15万円」とだけ書いて終わります。これでは、手元の見積書が高いのか安いのか判断できません。
日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施・2024年11月公表)の実測値では、同条件の相続登記の司法書士報酬は有効回答1,109件で平均74,888円、10万円未満が84.7%でした。「11〜15万円が相場」という説明は、実態よりやや高めの提示だと言えます。
この記事では、その実測分布で見積もりの高安を判定したうえで、費用が2倍以上に跳ね上がる3つの分岐(私道・公衆用道路の評価/数次相続で登記が1件か2件か/2026年4月施行の住所変更登記義務化)を、申請前に潰す方法までご説明します。
費用は「評価額」だけでは決まりません。私道持分の有無・登記名義人が誰か・登記簿上の住所の3点を先に確認すると、想定外の追加費用をほぼ防げます。
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不動産の名義変更(相続)の費用はいくら?まず何をすべきか
相続による不動産の名義変更の費用は、評価額1,000万円・相続人3名の標準ケースで自分でやれば約3〜5万円、司法書士に依頼すれば約11〜13万円が目安とされています。まずは固定資産税の納税通知書を手元に用意してください。
費用の内訳は3つだけです
相続登記の費用は、次の3項目に整理できます。それ以外の名目が見積書にあれば、内容を確認したほうがよいでしょう。
| 費用項目 | 金額の決まり方 | 標準ケース(評価額1,000万円)の目安 |
|---|---|---|
| ①登録免許税 | 固定資産税評価額 × 0.4%(登録免許税法別表第一) | 40,000円 |
| ②書類の取得実費 | 戸籍・住民票・評価証明書・登記事項証明書の合計 | 約6,000〜10,000円 |
| ③司法書士報酬 | 依頼する場合のみ。筆数・相続人数・難易度で変動 | 平均74,888円(日司連2024年調査) |
①と②は誰がやっても原則同額です。金額の差がつくのは③だけ、という理解が出発点になります。
最初にやることは「3点確認」です
見積もりを取る前に、次の3点をご自身で確認してください。所要時間は30分ほどです。
- 固定資産税の納税通知書を探し、課税明細の「価格(評価額)」欄を土地・建物ごとに書き写す(課税標準額ではなく価格欄です)
- 課税明細に「公衆用道路」「private」等で評価額0円の土地が含まれていないか確認する(私道持分の有無)
- 登記事項証明書(登記簿)を取得し、名義人が亡くなった親本人か、祖父など前の世代のままかを確認する
3の登記事項証明書は、法務省「登記手数料について」(2025年)によれば令和7年4月1日改定で書面請求600円、オンライン請求・送付520円、オンライン請求・窓口交付490円です。オンライン請求のほうが安く済みます。
2024年4月1日から相続登記は義務化されており、改正不動産登記法76条の2により、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象とされています。法務省の案内では、施行日前に発生した相続の期限は「最短で令和9年(2027年)3月31日」と示されています。放置していた実家がある方は、まずこの期限を意識してください。
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司法書士費用の相場はいくら?実測1,109件の分布で判定する

相続登記の司法書士報酬は、日本司法書士会連合会(2024年)の実測で平均74,888円、最頻値は5万円台、10万円未満が84.7%です。見積もりが10万円を超えたら、上位15.3%側にいると考えて内訳を確認してください。
報酬帯ごとの実測分布表
以下は、日司連「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施・有効回答1,109件)の生データを金額帯別に整理したものです。条件は「土地1筆+建物1棟・固定資産評価額合計1,000万円・法定相続人3名でうち1名が単独相続・戸籍謄本等5通の請求と遺産分割協議書・相続関係説明図の作成を含む」です。
| 報酬帯 | 件数 | 構成比 | 累積 | この帯に入る典型ケース |
|---|---|---|---|---|
| 3万円未満 | 7件 | 0.6% | 0.6% | 書類が全て揃い、登記申請のみ代行 |
| 3万円台 | 44件 | 4.0% | 4.6% | 戸籍収集を依頼者側で完了済み |
| 4万円台 | 100件 | 9.0% | 13.6% | 相続人が少なく協議も済んでいる |
| 5万円台 | 203件 | 18.3% | 31.9% | 標準的な単独相続(最頻値) |
| 6万円台 | 188件 | 17.0% | 48.9% | 標準+戸籍収集フル代行 |
| 7万円台 | 168件 | 15.1% | 64.0% | 平均74,888円が入る帯 |
| 8万円台 | 161件 | 14.5% | 78.6% | 不動産が複数、書類がやや多い |
| 9万円台 | 68件 | 6.1% | 84.7% | 相続人が多い・遠方の戸籍あり |
| 10〜14万円台 | 146件 | 13.2% | 97.8% | 数次相続・複数管轄・私道多数 |
| 15万円以上 | 24件 | 2.2% | 100% | 相続人多数、争いの調整を伴う |
平均74,888円/最頻値は5万円台(18.3%)/10万円未満が939件=84.7%/15万円以上はわずか2.2%(構成比は各金額帯の件数から算出)。
見積もりが10万円を超えたら、上位15.3%側です。その場合は「不動産の筆数」「相続人の数」「数次相続の有無」のどれで加算されているのか、内訳を必ず質問してください。正当な加算理由があるケースも多く、金額だけで高い・安いは判断できません。
「11〜15万円が相場」という説明との差
多くの解説記事は司法書士報酬の相場を5〜15万円と幅広く示し、依頼した場合の総額を11〜15万円としています。しかし上の実測分布では、報酬15万円以上は2.2%にとどまります。
レンジの上限だけを見て「高い」と身構える必要はありません。逆に、標準的な単独相続で報酬が15万円を超える見積もりが出た場合は、その理由の説明を求める合理性があります。
報酬に含まれる範囲を必ず確認する
同じ「7万円」でも、含まれる業務は事務所によって異なります。見積もり時は次を確認してください。
- 戸籍謄本等の取得代行が含まれるか(別途1通あたり数千円の場合あり)
- 遺産分割協議書の作成が含まれるか
- 法定相続情報一覧図の申出が含まれるか(一覧図の写しの交付自体は法務局で無料です)
- 不動産の2筆目以降の加算がいくらか
- 登記完了後の登記事項証明書の取得が含まれるか
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相続の不動産名義変更の費用を実額で積み上げる(3ケース比較)
実際の総額は評価額と不動産の状況で変わります。地方の実家なら自分で約3万円、都市部戸建てなら依頼して約16万円、私道+数次相続が重なると30万円超というのが、計算式に沿った積み上げ結果です。
計算のルール
登録免許税は、登録免許税法別表第一により固定資産税評価額の0.4%です。計算時のルールは次のとおりです。
- 土地・建物の評価額を合計する
- 合計額の1,000円未満を切り捨てて課税価格とする
- 課税価格 × 0.4% を計算し、100円未満を切り捨てる(1,000円未満なら1,000円)
ケース別シミュレーション
| 項目 | ケースA:地方の実家<br>土地500万+建物100万 | ケースB:都市部戸建て<br>土地1,800万+建物200万 | ケースC:評価額1,200万+私道持分<br>+祖父名義(数次相続) |
|---|---|---|---|
| 課税価格 | 6,000,000円 | 20,000,000円 | 12,000,000円+私道600,000円=12,600,000円 |
| ①登録免許税 | 600万×0.4%=24,000円 | 2,000万×0.4%=80,000円 | 1,260万×0.4%=50,400円(2件申請なら実質2倍) |
| ②書類実費 | 戸籍450円×3+除籍750円×2+住民票除票等300円+評価証明400円+登記事項証明600円×2+郵送費≒約6,000円 | 上記+筆数分の登記事項証明+戸籍1通≒約7,000円 | 世代が増え戸籍が倍増+私道分の証明書≒約12,000円 |
| 自分で申請した場合の合計 | 約30,000円 | 約87,000円 | 約62,400円(2件申請なら約112,800円) |
| ③司法書士報酬(日司連平均) | 74,888円 | 74,888円 | 74,888円×2件相当+加算≒約150,000円〜 |
| 依頼した場合の合計 | 約104,900円 | 約161,900円 | 約262,800円〜(内訳により変動) |
※報酬は日司連(2024年)の平均値74,888円を基準値として置いたものです。実際の見積額は事務所・地域・難易度で異なります。
ケースCの私道持分の計算式
ケースCの「私道600,000円」は、次の式で算出しています。
近傍宅地の1㎡あたり評価単価 150,000円 × 地積 80㎡ × 30% × 共有持分 1/6 = 600,000円
近傍宅地の単価は、法務局または固定資産評価証明書で確認できます。ご自身の評価証明書の数字を入れ替えれば、そのまま再現できる形です。
表の数字はあくまで計算例です。ご自身の課税明細の「価格」欄の数字を上の式に入れ替えるだけで、おおよその登録免許税は算出できます。手数料は自治体や請求方法で差があるため、実費は幅を持って見てください。
登録免許税が0円になる場合もあります
法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」によれば、次の2つの免税措置があります。
- 相続で土地を取得した人が登記をしないまま死亡した場合(平成30年4月1日〜令和9年3月31日)
- 不動産の価額が100万円以下の土地(所有権移転登記は平成30年11月15日〜令和9年3月31日)
いずれも、申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第1項(または第2項)により非課税」と記載しなければ免税を受けられないとされています。記載漏れは自己責任になりますので、該当しそうな場合は事前に法務局へ確認してください。期限はいずれも2027年3月31日です。
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費用が2倍になる原因を深掘り|見落とされがちな3つの分岐
相続登記の費用が想定外に膨らむ原因は、私道・公衆用道路の課税価格認定、数次相続で申請が2件になること、住所変更登記の同時発生の3つにほぼ集約されます。順に見分け方を説明します。
原因1:私道・公衆用道路は「評価額0円でも非課税ではない」
固定資産税評価額が0円の公衆用道路でも、登録免許税は非課税になりません。登録免許税法附則7条の取扱いにより、近傍宅地の1㎡単価×地積×30%(×共有持分)で課税価格を認定する必要があります。
見分け方は簡単です。固定資産税の課税明細に「公衆用道路」「非課税」と記載された地番があれば、それが私道持分です。郊外の戸建てでは前面道路に持分があるケースが頻出します。
見落とすと、申請後に法務局から補正を求められ、追納と再訪問が発生します。
原因2:数次相続は「1件で済むか2件になるか」で費用が倍違う
登記名義人が親ではなく祖父のままだった場合、これは数次相続です。ここが最大の分岐点になります。
- 中間の相続が単独相続だった場合:中間省略が認められ、祖父から現在の相続人へ1件の登記でまとめられることがあります。この場合、登録免許税も報酬も1件分です
- 中間の相続が単独相続でなかった場合:祖父→親、親→自分の2件の申請となり、登録免許税・司法書士報酬とも実質2倍になります
多くの記事は「数次相続は高くなる」で止まりますが、実際に効くのは「中間が単独相続かどうか」という条件です。ここは戸籍と遺産分割協議の内容次第で判断が分かれるため、司法書士への確認をおすすめします。
原因3:住所変更登記が2026年4月から義務化されました
法務省の不動産登記法改正により、2026年4月1日から不動産の所有者の住所・氏名変更登記が義務化されています。変更日から2年以内に登記しないと5万円以下の過料の対象とされ、施行日前に生じた住所変更も対象で、その期限は2028年3月31日です。
相続の場面でこれが効くのは、次の2つの局面です。
- 被相続人の登記簿上の住所と、死亡時の住民票の住所が異なる場合、相続登記の前提として住所のつながりを証明する書類が追加で必要になります
- 相続した不動産の名義人となった自分が、その後引っ越した場合、2年以内の住所変更登記が必要になります
住所変更登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円、司法書士報酬は日司連(2024年)の実測で平均13,913円(有効回答1,094件、1万円台が853件で最多)です。
法務省「スマート変更登記のご利用方法」(2026年)によれば、検索用情報(生年月日・メールアドレス・不動産の地番等)を申し出れば、以後は法務局が職権で住所等変更登記を行う仕組みが始まっています。費用は0円、電子証明書も不要です。ただし海外居住者は対象外とされています。相続登記が終わったら、この申出まで済ませておくと将来の費用と義務違反リスクを同時に減らせます。
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相続の不動産名義変更は自分でやるべき?司法書士費用を払うべき?
判断は5つの質問で分かれます。すべてYESなら自分で申請可能(実費のみ約3〜9万円)、NOが3つ以上なら依頼を推奨します。日司連の平均74,888円が一つの基準です。
5分岐チャート
| # | 質問 | NOの場合に起きること | 判断 |
|---|---|---|---|
| Q1 | 登記簿の名義人は亡くなった親本人ですか? | 数次相続。中間が単独相続なら1件だが、そうでなければ2件申請で費用は実質2倍 | NO→依頼推奨 |
| Q2 | 対象に私道・公衆用道路・共有地の持分は含まれませんか? | 近傍宅地単価×地積×30%での課税価格認定が必要。補正・追納のリスク | 含む→法務局へ事前照会か依頼 |
| Q3 | 相続人全員と連絡が取れ、遺産分割協議書に実印+印鑑証明を揃えられますか? | 協議が整わず申請できない。期限だけが迫る | NO→依頼、または相続人申告登記を先行 |
| Q4 | 不動産は1つの法務局の管轄内に収まりますか? | 管轄ごとに申請が分かれ、実費・報酬とも加算 | NO→費用加算を見込む |
| Q5 | 平日日中に法務局・市区町村役場へ計3〜4回行けますか? | 手続きが進まない(広域交付・オンライン請求で回数は削減可) | NO→依頼 |
判定の目安
- YESが5つ:自分で申請可能。費用は登録免許税+実費のみで約3〜9万円
- NOが1〜2個:司法書士会や法務局の無料相談で見積もりを取り、加算理由を確認
- NOが3個以上:依頼を推奨。平均74,888円+加算を見込む
どの分岐でも住所変更登記のフラグを立てる
いずれのケースでも、登記簿上の住所が現住所と違えば別途費用が発生します。不動産1個につき登録免許税1,000円+司法書士報酬(平均13,913円)、またはスマート変更登記の申出で0円です。見積もり時に「住所変更登記は必要ですか」と一言確認してください。
Q3でNOだった場合、期限対策として相続人申告登記という選択肢があります。法務省の案内によれば、期限内に「自分がこの被相続人の相続人である」旨を登記官に申し出れば申請義務を履行したものとみなされ、登録免許税はかかりません(添付書類の実費のみ)。ただし権利関係を公示する登記ではなく、持分や取得者は確定しません。売却や担保設定には別途、正式な相続登記が必要になる点にご注意ください。
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ケース別の対処|実家整理で実際に起きること
実家の相続では、登記費用の外側にも費用が発生します。預貯金までまとめて依頼する遺産承継業務は平均272,780円、要らない土地の国庫帰属は負担金原則20万円+審査手数料1筆14,000円です。
ケース1:不動産がどこにあるか分からない
親名義の不動産を把握しきれていない場合、従来は市区町村ごとに名寄帳を取り寄せる必要がありました。
法務省「所有不動産記録証明制度について」(2026年)によれば、2026年2月2日から所有不動産記録証明制度の運用が始まり、所有者本人や相続人等が全国の不動産を一括で検索・証明できるようになっています。書面請求の手数料は検索条件ごとに1通1,600円です(検索条件4件×1通なら6,400円)。
漏れがあると後から追加の相続登記が必要になり、費用が二重にかかります。まずこの証明書で全体像を押さえるのが効率的です。
ケース2:不動産だけでなく預貯金もまとめて任せたい
登記だけでなく、金融機関の手続きまで司法書士に任せる「遺産承継業務」という選択肢があります。
日司連(2024年)のアンケートでは、金融機関3行・各1,000万円の預貯金を相続人3名へ承継する事例(委任契約書・遺産分割協議書の作成、口座解約と振込手続の代理を含む)で、有効回答502件の平均報酬は272,780円でした。
相続登記単体の平均74,888円とは桁が違います。「相続手続き一式でいくら」という見積もりを受け取ったときは、どこまでが登記で、どこからが遺産承継業務かを切り分けて確認してください。
ケース3:山林や遠方の土地を引き継ぎたくない
相続土地国庫帰属制度を使えば、一定の要件を満たす土地を国に引き取ってもらえます。法務省の案内によれば、負担金は原則20万円(市街化区域・用途地域内の宅地等は面積に応じて算定)、申請時の審査手数料は土地1筆あたり14,000円です。
ただし、通りやすい制度ではありません。法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年6月30日現在・速報値)では、申請5,698件(田・畑2,226/宅地1,973/山林868/その他631)に対して帰属は2,885件、却下83件・不承認93件・取下げ1,063件(うち却下不承認見込みが判明したもの375件)となっています。
取下げが1,063件と多い点が実態を表しています。申請前に法務局の窓口相談で要件を確認するほうが、審査手数料を無駄にせずに済みます。なお、国庫帰属を申請するにも前提として相続登記が必要です。
ケース4:手続きの流れを一通り知りたい
自分で申請する場合の標準的な流れは次のとおりです。
- 不動産の特定:固定資産税課税明細+登記事項証明書(+必要に応じ所有不動産記録証明書)で対象を確定する
- 戸籍の収集:被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の現在戸籍を集める
- 遺産分割協議書の作成:相続人全員の実印+印鑑証明書を添付する
- 評価証明書の取得:固定資産評価証明書(1通400円前後)を市区町村・都税事務所で取得する
- 申請書の作成と提出:登録免許税分の収入印紙を貼り、管轄法務局へ提出する
2024年3月1日施行の改正戸籍法により、戸籍証明書の広域交付が始まっています。本籍地以外の市区町村窓口でも被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をまとめて請求できます。ただし本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、戸籍抄本や戸籍の附票は対象外、郵送・代理人による請求もできません。
また、法定相続情報一覧図の写しの交付は無料です(何枚でも0円)。金融機関を複数回る場合、戸籍一式を何セットも取るより費用を抑えられます。
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費用を抑える・再発を防ぐコツ
費用を抑える最大のポイントは、「取れる書類を安い方法で取る」ことと「登記を放置して次の世代に持ち越さない」ことの2点です。放置は費用を確実に増やします。
実費を減らす具体策
- 登記事項証明書はオンライン請求にする:書面600円に対し、オンライン請求・窓口交付なら490円(法務省「登記手数料について」2025年改定)。地図等情報も書面500円に対しオンライン窓口交付440円です
- 戸籍は広域交付を使う:本籍地が遠方でも最寄りの窓口でまとめて請求でき、郵送費と往復の手間が減ります
- 法定相続情報一覧図を作る:写しの交付は無料。金融機関ごとに戸籍一式を提出する必要がなくなります
- 免税措置の確認:価額100万円以下の土地は非課税の対象になり得ます(2027年3月31日まで)。ただし申請書への記載が必須です
放置が費用を増やす理由
国土交通省の平成28年度地籍調査によれば、不動産登記簿だけでは所有者の所在が確認できない土地は約20.1%あり、その原因は相続登記の未了が66.7%、住所変更登記の未了が32.4%でした。
登記を放置すると、次の相続が発生した時点で相続人が枝分かれし、遺産分割協議に必要な同意者が増えます。戸籍の通数も増え、司法書士報酬の加算要因にもなります。
なお法務省の登記統計では、相続その他一般承継による所有権移転登記の件数は令和3年度123.7万件、令和4年度136.2万件、令和5年度150.3万件と増加が続いています(東急リバブル不動産ニュース 2025年3月17日報道)。義務化を受けて手続きが集中している状況とみられ、早めの着手が待ち時間の面でも有利です。
費用の節約は「オンライン請求・広域交付・法定相続情報一覧図」の3点セットで数千円規模、放置の回避で数万円〜十数万円規模の差になります。効果が大きいのは後者です。
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専門家・公的情報の見解
公的情報の要点は「期限は2027年3月31日と2028年3月31日に集中し、無料または低額で使える制度が複数用意されている」という点です。制度を知っているかどうかが費用差になります。
押さえておきたい期限
| 期限 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2027年3月31日 | 施行日前に発生した相続の相続登記の期限(最短) | 改正不動産登記法76条の2/法務省案内 |
| 2027年3月31日 | 登録免許税の免税措置(100万円以下の土地等)の期限 | 租税特別措置法84条の2の2 |
| 2028年3月31日 | 施行日前に生じた住所変更の変更登記の期限 | 改正不動産登記法76条の5 |
| 2028年3月31日 | 遺産分割の10年ルールの経過措置期限 | 改正民法904条の3(2023年4月1日施行) |
最後の遺産分割の10年ルールは見落とされがちです。2023年4月1日より前に開始した相続では、2028年3月31日を過ぎると特別受益・寄与分を主張できず、法定相続分での分割になるとされています。分割内容が変われば、登記する持分も変わります。
費用0円で使える公的な仕組み
相続人申告登記は、期限内に「自分がこの被相続人の相続人である」旨を登記官に申し出ることで申請義務を履行したものとみなされる簡易な手続きで、登録免許税はかかりません。(法務省「相続人申告登記について」)
スマート変更登記は、検索用情報を申し出れば法務局が職権で住所等変更登記を行う仕組みで、登録免許税等の費用はかからず電子証明書も不要です。ただし海外居住者は対象外です。(法務省「スマート変更登記のご利用方法」)
このほか、法定相続情報一覧図の写しの交付も無料です。「相続人申告登記」「スマート変更登記」「法定相続情報一覧図」の3つは、いずれも0円で使えます。
税制・法令は改正されます。この記事の内容は執筆時点の一次情報に基づくものですが、ご自身のケースの最終判断は、司法書士・税理士や法務局の窓口でご確認ください。特に数次相続や私道の評価が絡む場合、書面だけでは判断できないことが少なくありません。
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やってはいけないNG対応
避けたいのは、「評価額だけで見積もり、私道と数次相続を確認しないまま申請する」ことです。補正・追納・再訪問で時間と費用の両方を失います。
1. 課税明細の「課税標準額」を評価額として計算する
登録免許税の計算に使うのは「価格(評価額)」欄です。住宅用地の特例などが効いた「課税標準額」を使うと、税額が過少になり補正の対象になります。
2. 評価額0円の公衆用道路を対象から外す
「0円だから非課税」と判断して申請から漏らすと、私道だけ名義が変わらないまま残ります。将来の売却時に買主から指摘され、その時点で改めて登記費用が発生します。
3. 免税措置の記載を省略する
価額100万円以下の土地等が該当しても、申請書への非課税規定の記載がなければ免税は受けられないとされています。該当しそうな場合は必ず記載してください。
4. 相続人申告登記だけで完了したと考える
相続人申告登記は申請義務を履行したとみなされる仕組みですが、権利関係を公示するものではなく、持分や取得者は確定しません。売却・担保設定・国庫帰属の申請には、正式な相続登記が別途必要です。
5. 見積書の総額だけで事務所を選ぶ
実測分布で見たとおり、報酬の中央帯は6〜8万円です。ただし安い見積もりが「登記申請のみ、戸籍収集は依頼者側」という前提であることもあります。含まれる業務範囲を揃えて比較してください。
6. 期限直前に動き出す
戸籍の取り寄せと遺産分割協議には想像以上に時間がかかります。相続登記の件数は増加が続いており、余裕を持った着手が現実的です。
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よくある質問
Q1. 相続 不動産名義変更の司法書士費用はいくらが妥当ですか?
平均74,888円、6〜8万円台が全体の46.6%を占めます(日本司法書士会連合会 2024年調査、有効回答1,109件)。標準的な単独相続で10万円を超える見積もりが出た場合は、筆数・相続人数・数次相続のどれで加算されているか内訳を確認してください。地域差や業務範囲の違いもあるため、金額だけで高い・安いは判断できません。
Q2. 不動産相続の名義変更費用を自分で申請して安くできますか?
できます。司法書士報酬(平均74,888円)が不要になり、登録免許税+実費のみで済みます。評価額600万円の実家なら約3万円、2,000万円の都市部戸建てでも約8.7万円が目安です。ただし数次相続・私道持分・複数管轄が絡む場合は、補正や追納のリスクが上がります。5分岐チャートのQ1・Q2でNOが出た方は、無料相談で確認されることをおすすめします。
Q3. 相続の不動産名義変更の費用に消費税はかかりますか?
登録免許税と書類の取得手数料は非課税、司法書士報酬には消費税がかかります。したがって報酬7万円なら税込77,000円が実際の支払額です。見積書が税抜表示か税込表示かは事務所により異なるため、比較時は必ず揃えて確認してください。
Q4. 期限に間に合いそうにない場合はどうすればよいですか?
登録免許税0円の「相続人申告登記」を先に申し出れば、申請義務を履行したものとみなされるとされています(法務省)。遺産分割協議がまとまらない、相続人と連絡が取れないといった場合の期限対策になります。ただし持分や取得者は確定しないため、協議がまとまり次第、正式な相続登記を行う必要があります。
Q5. 相続登記のあとに引っ越したら、また費用がかかりますか?
かかりますが、0円にできる方法があります。2026年4月1日施行の改正により住所変更登記は義務化され、変更日から2年以内に登記しないと5万円以下の過料の対象とされています。通常は不動産1個につき登録免許税1,000円+司法書士報酬(平均13,913円)ですが、法務省の「スマート変更登記」で検索用情報を申し出ておけば、以後は法務局が職権で登記を行い費用はかかりません(海外居住者は対象外)。
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まとめ|まず3つを確認してください
相続による不動産の名義変更費用は、登録免許税(評価額×0.4%)+実費(数千円〜1万円)+司法書士報酬(依頼するなら平均74,888円)という単純な足し算です。
見積もりを取る前に、次の3点だけ確認してください。
- 固定資産税課税明細の「価格」欄の金額(課税標準額ではありません)
- 公衆用道路(評価額0円)の持分が含まれていないか
- 登記事項証明書の名義人が親本人か、祖父など前の世代か
この3点が分かれば、見積もりの妥当性を実測分布と照らして判断できます。10万円未満が84.7%という数字が、その基準になります。
期限は2027年3月31日(施行前の相続の相続登記・免税措置)と2028年3月31日(施行前の住所変更・遺産分割10年ルール)に集中しています。相続人申告登記・スマート変更登記・法定相続情報一覧図の3つは0円で使えますので、費用を抑えたい方はまずここから着手されるとよいでしょう。
本記事は執筆時点で確認できた公的な一次情報(法務省・法務局・日本司法書士会連合会・国土交通省)に基づいて作成しています。税制・法令は改正される可能性があり、個別のケースの判断は司法書士・税理士等の専門家や法務局の窓口でご確認ください。特に数次相続、私道の近傍宅地評価、遺産分割協議が絡むケースは、書面上の情報だけでは適切な判断が難しいとされています。
最終確認日:2026年8月9日




