親が亡くなった直後、多くの方が最初にぶつかるのは「そもそも財産がどこにあるか分からない」という壁です。2026年の相続手続きは、預貯金・不動産・生命保険の3方向で「一括照会窓口」が出そろったことで、従来の『通帳と郵便物を探す』手順そのものが古くなりました。
結論から申し上げます。まず着手すべきは、①戸籍の広域交付で相続人を確定する、②相続時預貯金口座照会(5,060円)・所有不動産記録証明書(1,600円〜)・生命保険契約照会(Web6,000円)の3窓口へ同時に申請して財産を洗い出す、③基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかを判定して10か月の期限が動くかを決める、の3つです。この順番で動けば、財産調査に数か月かける従来型の進め方より大幅に短縮できます。
この記事は、上位記事が触れていない「照会制度で取れないもの」「広域交付が効かない場面」「相続放棄した後に実家が残るケースの費用」まで書き切ることを目的にしています。税制・法律の適用は個別事情で変わるため、最終判断は税理士・司法書士等の専門家にご確認ください。
相続手続きは何から始めるべきか?まず動かす3つの順番
相続手続きは「戸籍で相続人を確定」→「3つの一括照会で財産を洗い出す」→「基礎控除超えかを判定」の順で着手します。ここを外すと、後工程の遺産分割協議がやり直しになります。
死亡直後の役所手続き(死亡届7日以内、世帯主変更・健康保険の資格喪失14日以内、年金受給権者死亡届)は、葬儀社や自治体の窓口が案内してくれる領域です。本当に自力で判断が要るのは、その先の「相続人」と「財産」の確定です。
順番1:戸籍で相続人を確定する(先に人を固める)
相続人が1人でも漏れると、遺産分割協議は無効になります。
2024年3月1日に始まった戸籍の広域交付により、被相続人の本籍地がどこであっても、最寄りの市区町村窓口で出生から死亡までの戸籍を一括請求できるようになりました。従来は本籍地ごとに郵送請求を繰り返して1〜2か月かかっていた工程が、即日〜数日に縮みます。
ただし後述のとおり、広域交付には実務で必ず詰まる4つの穴があります。
順番2:3つの一括照会を「同時に」出す
財産調査は直列ではなく並列で進めるのが2026年の最適解です。
相続時預貯金口座照会は結果通知まで約1か月、生命保険契約照会も申請から回答まで日数がかかります。1つずつ結果を待つと、それだけで3か月の相続放棄期限を消費してしまいます。着手時点でまとめて申請してください。
順番3:基礎控除を超えるかを最初に判定する
相続税の基礎控除は、国税庁タックスアンサーNo.4152によると3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
国税庁が2025年12月に公表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」では、被相続人1,605,378人に対し申告に係る被相続人は166,730人、課税割合10.4%で過去最高を更新しました。地価・株価の上昇により、「うちは関係ない」が通用しない層が広がっています。
基礎控除を超える可能性が少しでもあるなら、10か月の申告期限が全工程の締め切りになります。実家の評価額と預貯金を足して4,200万円(相続人2人の場合)を超えそうなら、財産調査と並行して税理士へ相談を始めてください。
遺産相続の手続きは2026年でどう変わった?従来のやり方との比較

2025年4月から2026年2月にかけて、預貯金・不動産・生命保険の3分野で一括照会の窓口が新設・拡充され、財産調査の標準手順が入れ替わりました。以下の比較表の右端「使えない・漏れるケース」が最も重要です。
| 工程 | 従来(2023年頃まで) | 2026年に使える制度 | 費用 | 所要期間 | 使えない・漏れるケース |
|---|---|---|---|---|---|
| 1. 戸籍集め | 本籍地ごとに郵送請求で1〜2か月 | 戸籍の広域交付(2024年3月1日〜/最寄り窓口で一括) | 謄本1通450円等 | 即日〜数日 | 兄弟姉妹など傍系は不可/郵送・代理人請求は不可/戸籍の附票は対象外/コンピュータ化前の古い戸籍は対象外 |
| 2. 預貯金の洗い出し | 通帳・キャッシュカード・郵便物から推測し、各行へ個別照会 | 相続時預貯金口座照会(2025年4月1日〜) | 5,060円(税込) | 約1か月 | 被相続人がマイナンバーを届け出た口座のみ/残高は分からない/死亡から10年以内が申込期限 |
| 3. 不動産の洗い出し | 固定資産税納税通知書と市区町村ごとの名寄帳 | 所有不動産記録証明制度(2026年2月2日〜) | 書面1,600円/オンライン郵送1,500円/オンライン窓口交付1,470円 | 数日〜 | 氏名・住所の表記が一致しないと抽出されない/同姓同名が混入しうる/非コンピュータ化物件は対象外 |
| 4. 生命保険の確認 | 保険証券・通帳の引落履歴・郵便物を探す | 生命保険契約照会制度(生命保険協会) | Web6,000円/書面7,000円(対象者1名につき・災害時は無料) | 数週間 | 有効に継続している契約のみ/支払済・解約済・失効済は対象外/財形保険や支払開始済の年金保険等も対象外 |
| 5. 当座の生活費・葬儀費用 | 口座凍結で引き出せず立替 | 預貯金の仮払い制度(民法909条の2) | 無料(書類実費) | 数日〜2週間 | 1金融機関150万円が上限、かつ「預貯金額×1/3×法定相続分」の低い方まで |
| 6. 名義変更(登記) | 任意だったため放置されがち | 相続登記の義務化(2024年4月1日〜・3年以内) | 登録免許税=評価額×0.4%+報酬 | 1〜2か月 | 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。2024年4月1日前の相続は2027年3月31日が期限 |
生命保険契約照会制度の利用料は2026年4月に改定され、従来の一律3,000円からWeb6,000円・書面7,000円になったと案内されています。申請前に生命保険協会の公式サイトで最新の料金をご確認ください。
表の右端が示す「制度では埋まらない穴」
照会制度は万能ではなく、証券口座・暗号資産・ネット銀行の一部は横断照会の仕組みがありません。
証券やネット資産については、被相続人のメール受信箱、スマートフォンのアプリ、クレジットカードの明細、確定申告書の控えから地道にたどるほかありません。この分野だけは2026年時点でも「制度なし」と正直に申し上げます。
3つの照会制度は「所在を教えてくれる」だけで、残高・金額・過去の契約までは分かりません。制度で骨格を作り、細部は従来型の資料調査で埋める二段構えが現実的です。
親の財産はどこまで自力で探せる?判定チャート
探したい財産の種類によって、使うべき窓口と「その窓口では取れないもの」が違います。以下のチャートで自分のケースを判定してください。
``` 【スタート】探したい財産は? │ ├─① 預貯金 │ └─ Q. 被相続人は生前にマイナンバーを口座に登録していた? │ ├─ YES →【相続時預貯金口座照会】 │ │ 窓口:いずれかの金融機関 / 費用:5,060円 │ │ 期間:約1か月(簡易書留等で通知) │ │ 期限:死亡から10年以内 │ │ 取れないもの:残高/未登録口座/貸金庫の中身 │ └─ NO・不明 →【従来型調査】 │ 通帳・キャッシュカード・郵便物・確定申告書控え │ → 心当たりの金融機関へ残高証明書を請求(支店単位の名寄せ) │ 費用:残高証明書 1行あたり数百〜千円程度 │ ├─② 不動産 │ └─ Q. 所在に心当たりはある? │ ├─ 全部ある → 固定資産税の納税通知書+登記事項証明書で確認 │ └─ ない・一部だけ →【所有不動産記録証明書】 │ 窓口:法務局 / 費用:書面1,600円・オンライン1,500円 │ (検索条件1件・1通あたり。条件4件×1通なら6,400円) │ ⚠ 注意ノード:氏名・住所の表記ゆれで漏れる/同姓同名が混入する/ │ 非コンピュータ化物件は載らない │ → 補完策:市区町村ごとの【名寄帳】を併用する │ ├─③ 生命保険 │ └─【生命保険契約照会制度】(生命保険協会) │ 費用:Web6,000円/書面7,000円(対象者1名につき・災害時無料) │ 取れないもの:支払済・解約済・失効済の契約/財形保険/支払開始済の年金保険等 │ └─④ 証券・ネット資産・暗号資産 └─ 一括照会制度は存在しない メール/スマホのアプリ/クレカ明細/確定申告書控えから個別に特定 (証券は「証券保管振替機構への開示請求」で口座の所在を確認する方法もあります) ```
法務省民事局の「所有不動産記録証明制度について」(2026年)によると、この証明書は登記名義人本人またはその相続人等が請求でき、全国の所有不動産を一覧化した証明書が交付されます。ただし同資料では、氏名・住所の表記が一致しないと抽出されないこと、同姓同名が混入しうること、非コンピュータ化物件は対象外であることが限界として明記されています。
所有不動産記録証明書は「出てきたものが全部」ではありません。実家の登記名義が古い住所のままだと、その物件が抽出されない可能性があります。心当たりのある市区町村では、名寄帳を併せて取得してください。
相続手続きの期限はいつまで?起算点が全部違う5つの締め切り
相続手続きの期限は3か月・4か月・10か月・3年・10年の5段階で、しかも起算点(数え始める日)がそれぞれ違います。ここを混同すると、間に合ったつもりで遅れます。
| 期限 | 手続き | 起算点(ここが違う) | 遅れた場合 |
|---|---|---|---|
| 3か月 | 相続放棄・限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 | 原則として単純承認とみなされ、負債も承継 |
| 4か月 | 準確定申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日 | 延滞税・加算税の対象 |
| 10か月 | 相続税の申告・納付 | 相続の開始があったことを知った日の翌日 | 延滞税・加算税。配偶者控除等の特例が使えない場合がある |
| 3年 | 相続登記(義務化) | 所有権を取得したことを知った日 | 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 |
| 10年 | 遺産分割(民法904条の3) | 相続開始の時 | 原則として特別受益・寄与分を主張できず、法定相続分で分けることに |
見落とされがちな「10年ルール」という時限爆弾
2023年4月1日施行の改正民法904条の3により、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなりました。
つまり「親の介護を10年続けた」「兄だけ住宅資金の援助を受けていた」といった事情が、10年経つと主張できず法定相続分で機械的に分けられることになります。「揉めそうだから先送り」は、10年後に自分の取り分を減らす選択になり得ます。なお施行日前に開始した相続については、猶予期間の定めが設けられています。
期限切れが特に多い「請求しないともらえないお金」
請求主義のため、知らないまま時効になるものがあります。
- 未支給年金:日本年金機構によると、年金支払日の翌月初日から5年で時効消滅します。
- 埋葬料:全国健康保険協会(協会けんぽ)では、生計を維持されていた方に埋葬料5万円が支給され、請求期限は死亡した日の翌日から2年です。
- 葬祭費:国民健康保険では自治体により概ね5万円(東京23区は7万円)、こちらも2年が目安とされています。
- 高額療養費:亡くなる直前の入院分が対象になることがあり、期限は2年です。
相続登記について、2024年4月1日より前に発生した相続は2027年3月31日が期限です。法務省の認知度調査(2024年12月)では、義務化を「聞いたことがある」は72.9%だった一方、期限が3年以内と知っている人は42.8%にとどまりました。祖父母名義のまま放置された実家がある方は、この期限が最優先です。
相続放棄の手続きは自分でできる?費用と「その後」の落とし穴
相続放棄の申立て自体は申述人1人あたり収入印紙800円+郵便切手で、書類が揃えば自分でできます。ただし『放棄すれば実家から解放される』とは限らないのが最大の落とし穴です。
裁判所の案内によると、相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ行います。費用は申述人1人あたり収入印紙800円と連絡用郵便切手(例:110円×5枚=550円、裁判所により異なります)です。
最高裁判所の司法統計年報によると、相続放棄の申述受理件数は令和元年225,416件、令和2年234,732件、令和3年251,994件、令和4年260,497件、令和5年282,785件と増え続け、2025年は32.4万件で過去最多となったと報じられています。使途のない土地・建物、いわゆる「負動産」を引き取らない動きが背景にあるとされています。
自分でやる場合の手順
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を確認します。
- 相続放棄申述書(裁判所ウェブサイトから入手可能)を作成します。
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本、住民票除票、申述人の戸籍謄本を集めます。
- 収入印紙800円を貼り、郵便切手を添えて家庭裁判所へ提出します(郵送可)。
- 後日届く「照会書」に回答して返送します。
- 「相続放棄申述受理通知書」が届いて完了です。債権者に示す場合は受理証明書(1通150円程度)を別途請求します。
放棄したのに実家の管理義務が残る人・残らない人
2023年4月1日施行の改正民法940条により、放棄後の保存義務は「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している者」に限定されました。
つまり、実家に同居していた・鍵を持って管理していた方は放棄後も保存義務を負い、遠方に住み一切占有していなかった方は負わない、と整理されています。「放棄すれば終わり」でも「必ず管理義務が残る」でもなく、占有の有無で結論が真逆になる点が実務上の分かれ目です。
相続人全員が放棄したら、実家はどうなるのか
全員が放棄しても、建物が自動的に消えるわけではありません。
最終的に手放しきるには家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てる必要があり、予納金として20万円〜100万円程度(家庭裁判所が事案ごとに決定)を求められるのが一般的とされています。「相続放棄=0円で終わり」ではないという点は、放棄を選ぶ前に必ず押さえてください。
放棄を検討している間に、故人の預金を引き出す、家財を処分する、賃料を受け取るといった行為をすると、単純承認とみなされて放棄できなくなるおそれがあります。3か月の期限に間に合わない事情がある場合は、家庭裁判所へ期間伸長の申立てができます。判断に迷う段階で弁護士・司法書士へご相談ください。
費用はいくらかかる?実家1件+銀行3行のモデルシミュレーション
「実家1件(土地800万円・建物300万円)+預金3行+生命保険不明・相続人は子2人」というモデルでは、自分でやる場合の総額は約66,660円、専門家に依頼する場合は約14万円が目安です。
自分でやる場合:約66,660円/3〜4か月
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 戸籍一式(広域交付) | 約5,000円 |
| 所有不動産記録証明書 | 1,600円 |
| 相続時預貯金口座照会 | 5,060円 |
| 生命保険契約照会(Web) | 6,000円 |
| 登録免許税(1,100万円×0.4%) | 44,000円 |
| 登記事項証明書・郵送実費等 | 約5,000円 |
| 合計 | 約66,660円 |
専門家に依頼する場合:約14万円/1.5〜2か月
上記実費に司法書士報酬が加わります。日本司法書士会連合会の報酬アンケート(令和6年3月実施)によると、相続登記を依頼した場合の報酬は一般的なケースで平均74,888円でした。実費66,660円+報酬74,888円で、合計は約14万円です。
差額は約7万円、短縮できる期間は1〜2か月程度という計算になります。平日に法務局や役所へ行けるかどうかが、実質的な判断基準になります。
分岐で総額はこう変わります
- 分岐A:土地の評価額が100万円以下——法務局の案内によると、価額100万円以下の土地は令和9年(2027年)3月31日まで登録免許税が免税とされています。この場合、登録免許税44,000円が0円になり、総額は2万円台まで下がります。
- 分岐B:相続人全員が相続放棄する——申立て実費は1人あたり800円台で済みますが、実家は残ります。清算まで進めるなら相続財産清算人の予納金20万〜100万円が別途必要になり、DIYの66,660円より一桁高くなる可能性があります。
- 分岐C:相続税がかかる場合——基礎控除は3,000万円+600万円×2=4,200万円です。これを超えるなら10か月の申告期限が最優先の締め切りになり、税理士報酬(遺産総額に対する料率で設定されることが多い)が加算されます。
費用は「実費+報酬」で見ると判断しやすくなります。実費は誰がやっても同じで、変わるのは報酬と所要時間だけです。まず基礎控除を超えるかを判定し、超えないなら実費中心のDIY、超えるなら税理士を軸に組み立てるのが合理的です。
専門家・公的情報はどう使い分ける?
司法書士=登記、税理士=相続税、弁護士=争いがある場合、行政書士=書類作成、と入口が分かれます。迷ったら「もめているか」「相続税がかかるか」の2軸で選んでください。
| 状況 | 相談先 | 主に頼めること |
|---|---|---|
| 実家の名義変更をしたい | 司法書士 | 相続登記、法定相続情報一覧図の作成 |
| 基礎控除を超えそう | 税理士 | 相続税申告、小規模宅地等の特例の適用判断 |
| 相続人間で対立している | 弁護士 | 遺産分割交渉、調停・審判の代理 |
| 書類収集・協議書作成を任せたい | 行政書士 | 戸籍収集、遺産分割協議書の作成 |
法定相続情報一覧図を先に作ると全工程が軽くなります
法務局が無料で交付する法定相続情報一覧図の写しは、戸籍一式の束の代わりとして金融機関・法務局・税務署で使えます。
銀行3行・証券1社を回るなら、必要な通数をまとめて交付してもらうことで、戸籍の原本を1か所ずつ返してもらう「原本還付」の往復が不要になります。手数料は無料です。
戸籍の広域交付には、実務で確実に詰まる4つの対象外があります。①兄弟姉妹など傍系の戸籍は請求できない(子がいない方の相続で必ず問題になります)、②郵送請求・代理人請求は不可(=専門家に丸投げできず、必ず本人が窓口へ行く必要があります)、③戸籍の附票は対象外(相続登記の住所証明で必要になり、本籍地へ別途請求します)、④コンピュータ化前の古い戸籍は対象外。「窓口1回で全部揃う」と考えていると二度手間になります。
やってはいけないNG対応
相続で取り返しがつかなくなるのは、「3か月以内に故人の預金に手をつける」「登記を放置する」「10年を過ぎるまで話し合いを先送りする」の3つです。
- 相続放棄を検討中に故人の財産を使う——預金の引き出し、家財の処分、賃料の受領は単純承認とみなされるおそれがあり、放棄できなくなる可能性があります。
- 葬儀費用のために口座から勝手に引き出す——仮払い制度(1金融機関150万円かつ預貯金額×1/3×法定相続分の低い方)という正規のルートを使ってください。
- 相続登記を「いつかやる」で放置する——2027年3月31日という遡及分の期限があります。すぐに分割協議がまとまらない場合は、相続人申告登記という暫定手段で義務を履行できます。
- 遺産分割協議書を口約束で済ませる——名義変更の場面で必ず書面と実印・印鑑証明書を求められます。
- 照会制度の結果を「これで全部」と信じ切る——所有不動産記録証明は表記ゆれで漏れ、口座照会はマイナンバー未登録口座を拾えず、保険照会は解約済契約を返しません。
- 10年ルールを知らずに話し合いを先送りする——介護の寄与や生前贈与の事情が主張できなくなるおそれがあります。
迷ったときの原則は「お金を動かさない・書面を残す・期限から逆算する」の3つです。特に3か月と10か月は、後から取り戻せない性質の期限とされています。
再発防止:次の相続で同じ苦労をしないために
今回の相続で判明した口座・不動産・保険の一覧を、そのまま「次の相続」の資料として残しておくことが、最も効果の高い予防策です。
- 照会結果の通知書と残高証明書をまとめてPDF化し、相続人全員がアクセスできる場所に保管します。
- 存命の親については、金融機関へのマイナンバー登録を促しておきます。登録があれば、次の相続時に口座照会が機能します。
- 実家の登記名義と現住所の表記を一致させておきます。所有不動産記録証明制度は表記の一致が抽出の前提とされているためです。
- 遺言書がある場合、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば検認が不要になります。
- ネット証券・暗号資産・サブスクの契約は、一括照会の仕組みがないため、本人が一覧を残す以外に方法がありません。
2026年の相続手続きは、「制度で骨格を作り、手作業で細部を埋める」形に変わりました。3つの照会を同時に出し、5つの期限を起算点ごとに管理し、費用を実費と報酬に分けて把握する。この3点を押さえれば、進め方の見通しは立ちます。
よくある質問
相続手続きは全部で何か月かかりますか?
相続税の申告が不要なケースで、おおむね3〜4か月が目安です。相続時預貯金口座照会の結果通知に約1か月かかるため、着手直後に申請するかどうかで全体の期間が大きく変わります。相続税申告が必要な場合は、10か月の期限に合わせた進行になります。
相続放棄の手続きは自分でできますか?費用はいくらですか?
書類が揃えば自分で可能で、費用は申述人1人あたり収入印紙800円+連絡用郵便切手です。ただし、放棄後も実家を現に占有していた方には保存義務が残るとされ、最終的に手放すには相続財産清算人の予納金20万〜100万円が必要になる場合があります。実家がある場合は事前に専門家へご相談ください。
相続手続きの期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
期限ごとに結果が異なります。3か月を過ぎると原則として単純承認とみなされ負債も承継します(事情によっては期間伸長や例外的な受理の余地があるとされています)。10か月を過ぎると延滞税・加算税の対象となり、3年(相続登記)は正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
遺産相続の手続きで最初に集める書類は何ですか?
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式が出発点です。2024年3月1日開始の広域交付により最寄り窓口で一括請求できますが、兄弟姉妹の戸籍・戸籍の附票・コンピュータ化前の古い戸籍は対象外で、郵送や代理人による請求もできません。あわせて相続人の戸籍・住民票・印鑑証明書を準備します。
銀行口座が凍結され、葬儀費用が払えません。どうすればいいですか?
民法909条の2の預貯金の仮払い制度が使えます。1金融機関あたり150万円、かつ「相続開始時の預貯金額×1/3×法定相続分」のいずれか低い方までを、遺産分割前に単独で引き出せます。必要書類は戸籍一式と印鑑証明書で、数日〜2週間程度が目安です。
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本記事は公表資料をもとに整理したものです。税制・法令の適用や手続きの可否は個別の事情で変わります。実際の判断にあたっては、税理士・司法書士・弁護士等の専門家、および国税庁・法務省・裁判所の公式情報を必ずご確認ください。
最終確認日:2026年8月12日




