まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
- 親名義の不動産を全国から1通で洗い出す(所有不動産記録証明制度/2026年2月2日運用開始・書面請求1,600円)
- 相続登記を3年以内に申請する(怠ると10万円以下の過料/義務化前の相続は2027年3月31日が期限)
- 住所等変更登記を2年以内に申請する(2026年4月1日施行・5万円以下の過料/施行前の変更分は2028年3月31日が期限)
遺産相続の手続きの流れ7ステップ|いつまでに何をやるか
| ステップ | やること | 期限の目安 | 主な窓口 |
|---|---|---|---|
| 1 | 死亡届・年金・健康保険の届出 | 7日〜14日以内 | 市区町村役場 |
| 2 | 遺言書の有無を確認(検認の要否判定) | できるだけ早く | 自宅・法務局・公証役場 |
| 3 | 相続人の確定(戸籍収集・法定相続情報一覧図) | 1〜2か月 | 市区町村役場・法務局 |
| 4 | 財産と負債の調査(所有不動産記録証明・残高証明) | 2〜3か月 | 法務局・金融機関 |
| 5 | 相続放棄・限定承認の判断 | 3か月以内 | 家庭裁判所 |
| 6 | 遺産分割協議・準確定申告・相続税申告 | 4か月/10か月以内 | 相続人間・税務署 |
| 7 | 相続登記・住所等変更登記・預貯金の名義変更 | 3年/2年以内 | 法務局・金融機関 |
期限は「短い順」に管理する
| 期限 | 手続き | 過ぎるとどうなるか |
|---|---|---|
| 7日以内 | 死亡届の提出 | 火葬許可等が進まない |
| 10日/14日以内 | 年金受給権者死亡届(厚生年金10日・国民年金14日) | 過払い分の返還が発生しうる |
| 14日以内 | 健康保険の資格喪失、世帯主変更届 | ― |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の申述 | 原則として単純承認(負債も承継) |
| 4か月以内 | 準確定申告 | 加算税・延滞税 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付 | 加算税・延滞税(国税庁 No.4205) |
| 3年以内 | 相続登記 | 10万円以下の過料(義務化前の相続は2027年3月31日) |
| 2年以内 | 住所等変更登記 | 5万円以下の過料(2026年4月1日施行・経過措置2028年3月31日) |
2026年に何が変わったのか(本記事の主題)
- 2024年3月1日:戸籍の広域交付が開始
- 2024年4月1日:相続登記の義務化、相続人申告登記の新設
- 2026年2月2日:所有不動産記録証明制度の運用開始
- 2026年4月1日:住所等変更登記の義務化
注意
数年前の解説記事をそのまま参考にすると、「名寄帳を市区町村ごとに集める」「相続登記さえ済ませれば登記の義務は終わり」という古い前提で動くことになります。2026年時点では、どちらも実務上の最適解ではありません。
2024〜2026年に増えた相続の新制度 早見表

| 制度 | 施行日 | 請求・利用できる人 | 費用 | これができる | これはできない(落とし穴) | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ①所有不動産記録証明制度 | 2026/2/2 | 名義人本人/相続人その他の一般承継人 | 書面1,600円・オンライン郵送1,500円・オンライン窓口受取1,470円 | 全国の名義不動産を1通で一覧化(管轄制限なし) | 登記簿上の氏名・住所と検索条件が一致しない不動産は抽出されない | 法務局(2026)[URL1] |
| ②相続人申告登記 | 2024/4/1 | 相続人が単独で申出可 | 非課税(0円) | 3年以内の申請義務を履行したとみなされ過料を回避 | 権利の公示ではないため売却も抵当権設定も不可。遺産分割後に改めて相続登記が必要 | 法務省(2024)[URL2] |
| ③戸籍の広域交付 | 2024/3/1 | 本人・配偶者・直系尊属・直系卑属 | 1通450〜750円程度 | 本籍地以外の窓口で戸籍謄本類を一括取得 | 兄弟姉妹・叔父叔母の相続では請求不可/代理人・郵送・オンライン不可/未電子化の改製原戸籍は対象外/顔写真付き本人確認書類が必須 | 法務省(2024)[URL3] |
| ④法定相続情報証明制度 | 2017 | 相続人 | 無料・必要通数を交付(保管5年間は再交付可) | 戸籍の束を窓口ごとに出し直す必要がなくなる | 相続放棄の有無までは分からない | 法務局(2017)[URL4] |
| ⑤預貯金の仮払い制度 | 2019/7/1 | 各相続人が単独で | 無料(金融機関所定の手数料を除く) | 1金融機関150万円まで即時に現金化 | 引き出した資金の使途によっては単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性 | 民法909条の2 |
| ⑥住所等変更登記の義務化 | 2026/4/1 | 所有権登記名義人 | 登録免許税1,000円/不動産 | ― | 変更から2年以内の申請義務。怠ると5万円以下の過料(施行前の変更は2028年3月31日まで) | 法務省(2026)[URL5] |
| ⑦相続土地国庫帰属制度 | 2023/4/27 | 相続等で土地を取得した相続人 | 審査手数料+負担金原則20万円 | 不要な土地を国に引き取ってもらえる | 建物付き・境界不明の土地は不可(=先に解体・測量が必要) | 法務省(2023)[URL6] |
- [URL1] https://houmukyoku.moj.go.jp/asahikawa/page000001_00531.html
- [URL2] https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
- [URL3] https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
- [URL4] https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
- [URL5] https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
- [URL6] https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
①所有不動産記録証明制度は「表記ゆれ」で空振りする
③広域交付が「使えない境界線」
- 子のいない方の相続で兄弟姉妹・甥姪が相続人になるケースでは請求不可
- 代理人による請求は不可(司法書士に頼んでも本人が行く必要がある)
- 郵送・オンライン請求は不可(顔写真付き本人確認書類を持参して窓口へ)
- 電子化されていない古い改製原戸籍は対象外(従来どおり本籍地へ郵送請求)
注意
兄弟姉妹が相続人になるケースでは、広域交付は最初から使えません。この場合は各本籍地へ個別に郵送請求することになり、戸籍収集だけで1〜2か月かかることがあります。着手前にここを見極めてください。
実家の名義、あなたはどのルート?(判定チャート)
遺産相続の手続きは自分でできる?費用と実働で判断する
実費シミュレーション(土地1,500万円+建物500万円=評価額2,000万円、相続人3人)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 80,000円 | 2,000万円×0.4%(評価額100万円以下の土地は免税措置あり) |
| 戸籍謄本等 15通 | 約9,000円 | 戸籍謄本450円・除籍/改製原戸籍750円が目安 |
| 住民票・印鑑証明(3人分) | 約2,000円 | ― |
| 所有不動産記録証明書 1通 | 1,600円 | オンライン請求・窓口受取なら1,470円 |
| 法定相続情報一覧図の写し | 0円 | 必要通数を無料交付・保管5年間は再交付可 |
| 登記事項証明書 2通 | 1,200円 | ― |
| 実費 小計 | 約93,800円 | 自分でやる場合の総額 |
| 司法書士報酬(相続登記) | 約75,000円 | 相場6〜9万円・平均約7万5,000円 |
| 司法書士報酬(遺産分割協議書作成) | 約30,000円 | ― |
| 専門家に依頼した場合の総額 | 約198,800円 | 実費込み |
- 市区町村窓口:相続人3人・本籍が2か所の場合、広域交付が使えるケースなら1〜2回の往復で済むが、使えないケース(兄弟姉妹が相続人/未電子化戸籍あり)は郵送請求で1〜2か月
- 法務局:登記申請1回+補正で呼び戻される可能性(申請書の記載不備は珍しくありません)
- いずれも平日日中のみ
10か月以内に必要な現金を先に計算する
- 基礎控除の計算:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 遺産総額(不動産の相続税評価額+預貯金+有価証券等)がこれを超えるかを判定
- 超える場合、相続税の申告・納付期限は死亡を知った日の翌日から10か月以内(国税庁 No.4205)
相続開始時の預貯金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分(ただし1金融機関あたり150万円が上限)
- 1,200万円 × 1/3 × 1/3 = 約133万円 → 150万円の上限内なので133万円まで払戻し可能
- 同じ計算を金融機関ごとに行い、合計が当面の資金になります
注意
仮払いで引き出した資金を相続債務の弁済以外に使うと、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなる可能性があります。負債の有無が不明な段階では、仮払いの利用そのものを専門家に相談してください。
遺産相続 手続きの必要書類|1セット集めて全窓口を並列で回す
共通で使い回す書類(1セットで全窓口に対応)
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類(除籍・改製原戸籍を含む)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)
窓口ごとの固有書類
| 提出先 | 固有で必要になるもの | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| 銀行・信用金庫 | 各行の相続届出書、通帳・キャッシュカード、残高証明書の請求書 | 提出後おおむね2〜3週間(不備でさらに延伸) |
| 法務局(相続登記) | 登記申請書、固定資産評価証明書、被相続人の住民票除票 | 管轄により変動 |
| 法務局(所有不動産記録証明) | 請求書、本人確認書類、相続人であることを示す戸籍 | 1通1,600円(オンライン窓口受取1,470円) |
| 税務署(相続税申告) | 相続税申告書、財産評価資料、残高証明書 | 10か月以内が期限 |
並列化の設計(この順番で回す)
- 所有不動産記録証明書を請求し、親名義の不動産を全国分洗い出す(表記ゆれ分も複数条件で)
- 戸籍を1回で全部集める(被相続人の出生から死亡まで+相続人全員分)
- 法定相続情報一覧図を作成し、写しを必要な窓口数+予備分交付してもらう(無料)
- 一覧図の写しを使い、全金融機関へ同時に残高証明書を請求
- 並行して固定資産評価証明書を取得し、登記申請の準備を進める
- 残高証明が揃った時点で財産目録を確定し、遺産分割協議に入る
遺産の相続放棄手続き|3か月の期限と「やってはいけないこと」
判断がつかないときの選択肢
数次相続(相続手続き中に相続人が亡くなった)の場合
- 放棄の起算点は相続ごとに別々に判断される:一次相続(祖父)と二次相続(父)は別個の相続で、それぞれ「自分が相続人になったことを知った時」から3か月です。祖父の死亡から何十年経っていても、自分が相続人だと知ったのが最近なら、そこが起算点になり得るとされています。
- 二次相続を放棄すると、一次相続の相続権も引き継げなくなる:父を通じて祖父の相続権を承継しているため、父の相続を放棄すると祖父の遺産に関する地位も失うのが原則です。「祖父の実家だけ放棄したい」といった選択はできません。
注意
数次相続は、放棄の順序や起算点の判断を誤ると取り返しがつきません。相続人が10人を超えることも珍しくなく、一般的な解説の当てはめでは危険な領域です。着手前に必ず弁護士・司法書士へご相談ください。
放棄できなくなる典型パターン
- 預金を引き出して葬儀費用以外に使った
- 遺品や自動車・不動産を売却した
- 前述の仮払い制度で引き出した資金を、相続債務の弁済以外に使った
注意
放棄を検討している段階では、財産に一切手をつけないのが原則です。「少額だから大丈夫」という自己判断が単純承認とみなされるリスクがあります。判断に迷う場合は、財産に触れる前に弁護士・司法書士へご相談ください。
実家を「引き継がない」3つの出口を比較する
| 比較項目 | ①相続放棄 | ②相続土地国庫帰属制度 | ③相続して売却(空き家3,000万円控除) |
|---|---|---|---|
| 期限 | 相続を知ってから3か月以内 | 相続後(相続等で取得した土地に限る) | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12/31までの譲渡/適用期限は令和9年12月31日 |
| 費用 | 収入印紙+連絡用郵便切手 | 審査手数料+負担金原則20万円(市街化区域の宅地等は面積に応じ算定) | 仲介手数料・解体費・登録免許税0.4% |
| 建物があると | 使える | 使えない(更地が要件=先に解体) | 使える(耐震改修または取壊しの要件あり) |
| 他の財産も失うか | Yes(預貯金も含め全部放棄) | No(土地だけ手放す) | No |
| 控除額 | ― | ― | 最高3,000万円(相続人3人以上なら1人2,000万円に縮小) |
国庫帰属制度の実績は「思ったほど通らない」
空き家3,000万円特別控除は人数で変わる
やってはいけないNG対応6つ
1. 相続登記を終えて「登記は完了」と考える
2. 相続人申告登記で「終わった」と考える
3. 所有不動産記録証明書を1通取って安心する
4. 期限を「10か月」だけで管理する
5. 相続人を1人でも欠いて協議書を作る
6. 広域交付を過信して窓口へ行く
注意
上記のうち、相続放棄の3か月経過・財産の処分・相続人を欠いた協議書の3つは、後から修正できない性質の失敗です。少しでも不安がある段階で、司法書士または弁護士へご相談ください。




