まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
補足
本記事は2026年10月2日時点で確認した法務省・国税庁などの公開情報にもとづく一般的な解説です。税金や登記の結論は家族ごとに変わるため、実際の判断は税理士・司法書士・弁護士に相談してください。
配偶者居住権とは?結論から押さえよう
家を2つに分けて相続する方法
成立の基本ルール
- 相続開始のとき、配偶者がその建物に住んでいたこと(民法1028条)
- 遺産分割・遺贈・家庭裁判所の審判のいずれかで取得すること(民法1028条・1029条)
- 期間は原則として終身。遺産分割や遺言で期間を定めることもできる(民法1030条)
- 亡くなった人が配偶者以外の人と建物を共有していた場合は成立しない(民法1028条1項ただし書)
配偶者居住権の仕組み:親と子それぞれの制約

親(配偶者)ができること・できないこと
| 行為 | 配偶者(親)の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 無償で住む | できる | 民法1028条 |
| 権利を人に譲る | できない | 民法1032条2項 |
| 第三者に貸す・増改築 | 所有者の承諾が必要 | 民法1032条3項 |
| 住むための修繕 | 配偶者が行える | 民法1033条 |
| 建物の通常の必要費 | 配偶者が負担 | 民法1034条 |
子ども(所有者)にかかる制約
- 親が住む間は、自分で住めない
- 売ることはできても、買う人は親の権利が付いた家を買うことになり、買い手は限られやすい
- 固定資産税の納税義務者は所有者なので、通知は子に届く
固定資産税は誰が払う?
配偶者居住権の評価はいくら?親の年齢別に試算
国税庁の評価式
- 配偶者居住権 = 建物評価額 − 建物評価額 ×(残存耐用年数 − 存続年数)÷ 残存耐用年数 × 複利現価率
- 居住建物(子の分) = 建物評価額 − 配偶者居住権
- 敷地利用権 = 土地評価額 − 土地評価額 × 複利現価率
- 敷地所有権(子の分) = 土地評価額 − 敷地利用権
年齢別の試算表(当サイトの独自試算)
| 親の年齢・性別 | 平均余命→存続年数 | 複利現価率 | 配偶者居住権 | 居住建物(子) | 敷地利用権 | 敷地所有権(子) | 親の取り分合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 女性70歳 | 20.45→20年 | 0.554 | 10,000,000円 | 0円 | 13,380,000円 | 16,620,000円 | 23,380,000円 |
| 女性75歳 | 16.22→16年 | 0.623 | 10,000,000円 | 0円 | 11,310,000円 | 18,690,000円 | 21,310,000円 |
| 女性80歳 | 12.25→12年 | 0.701 | 9,460,769円 | 539,231円 | 8,970,000円 | 21,030,000円 | 18,430,769円 |
| 女性85歳 | 8.73→9年 | 0.766 | 7,643,077円 | 2,356,923円 | 7,020,000円 | 22,980,000円 | 14,663,077円 |
| 男性70歳 | 16.09→16年 | 0.623 | 10,000,000円 | 0円 | 11,310,000円 | 18,690,000円 | 21,310,000円 |
| 男性75歳 | 12.54→13年 | 0.681 | 10,000,000円 | 0円 | 9,570,000円 | 20,430,000円 | 19,570,000円 |
| 男性80歳 | 9.34→9年 | 0.766 | 7,643,077円 | 2,356,923円 | 7,020,000円 | 22,980,000円 | 14,663,077円 |
| 男性85歳 | 6.59→7年 | 0.813 | 6,247,692円 | 3,752,308円 | 5,610,000円 | 24,390,000円 | 11,857,692円 |
- 女性70歳の親の取り分は約2,338万円で、家全体4,000万円の約58%
- 男性85歳では約1,186万円で、約30%
- 存続年数が13年以上だと、建物の価値はすべて配偶者居住権になり、子が持つ建物の評価は0円
注意
土地は小規模宅地等の特例を使う前の金額です。実際の申告では、国税庁「配偶者居住権等の評価明細書」と最新の複利現価率表で確認してください。
法定利率3%は2029年3月まで据え置き
制度ができた背景と利用状況
設定登記の件数
| 年 | 設定登記の件数 |
|---|---|
| 2021年 | 880件 |
| 2022年 | 892件 |
| 2023年 | 911件 |
配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い
| 項目 | 配偶者居住権 | 配偶者短期居住権 |
|---|---|---|
| 発生 | 遺言・遺産分割・審判で取得 | 無償で住んでいれば自動で発生 |
| 期間 | 原則終身(期間を定めることも可) | 遺産分割で家の行き先が決まった日か、死亡から6か月を経過する日の遅いほう |
| 登記 | できる | できない |
配偶者居住権のメリット
住まいと生活資金を両立しやすい
二次相続で権利は親の財産に残らない
家の最終的な行き先を固定できる
配偶者居住権のデメリット(子ども側の視点)
施設に入っても権利は残る
途中で権利を消すと課税されることがある
注意
権利を消す前に、必ず税理士に相談してください。
登記しないと第三者に主張できない
3つの時点で損得を比べる(具体例)
時点1:一次相続〜母が住み続けている間
- 母:配偶者居住権9,460,769円+敷地利用権8,970,000円=約1,843万円
- 子:居住建物539,231円+敷地所有権21,030,000円=約2,157万円
時点2:数年後に母が施設へ入る
| 選択 | 家の状態 | 税金 |
|---|---|---|
| 権利を残す | 空き家、または承諾して賃貸 | 新たな課税は生じにくい |
| 無償で合意解除・放棄して売る | 子が自由に売れる | 子に贈与税の可能性 |
| 子が対価を払って消す | 子が自由に売れる | 母に譲渡所得税の可能性 |
時点3:母が亡くなる(二次相続)
配偶者居住権の始め方:判断から登記まで
設定すべきか判断するチャート(当サイトの整理)
- 親は今の家に住み続けたい? いいえ→専門家に相談 / はい→2へ
- 自宅以外の財産で親の法定相続分に足りる? はい→配偶者が所有権を相続 / いいえ→3へ
- 5年以内に施設入居や売却の可能性がある? はい→設定は慎重に(解除で子に贈与税のおそれ)、専門家に相談 / いいえ→4へ
- 相続人どうしの関係は良好? はい→配偶者が所有権を相続、または子が相続して使用貸借 / いいえ→5へ
- 再婚家庭などで将来の所有者を確定させたい? はい→設定を検討 / いいえ→遺言で調整
設定から登記までの手順
- 評価額を確認する:市区町村で固定資産税評価証明書を取る
- 設定するかを決める:上のチャートで家族と話し合う
- 遺言か遺産分割協議書に書く:遺言の場合、民法1028条1項2号は「遺贈」による取得を定めているため、書き方は専門家に確認する
- 建物に登記する:所有者には登記を備えさせる義務がある(民法1031条)
- 相続税を申告する:必要な場合、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に「配偶者居住権等の評価明細書」を添えて申告
登記にかかる費用
注意
配偶者居住権の登記は建物にするもので、土地には登記できません。
自宅の相続3パターンを比較
| 比較項目 | 配偶者居住権+子が所有権 | 配偶者が所有権を相続 | 子が所有権+使用貸借 |
|---|---|---|---|
| 親の住む権利 | 強い。登記で第三者に主張できる | もっとも強い | 弱い。登記できない |
| 途中で権利を消す課税 | 無償なら子に贈与税の可能性 | 該当なし | 一般に生じにくい |
| 二次相続 | 権利は消え、親の財産に残らない | 家全体が親の財産 | 家は親の財産に入らない |




