結論|生前整理のやり方は「片付けの順番」ではなく「手続きの締切」で決める
| 枠 | 中身 | 期限の性質 |
|---|---|---|
| ① 今すぐ枠 | 本人しか申請できない手続き(遺言書保管申請など) | 代理不可。本人が動ける今だけ |
| ② 判断能力があるうち枠 | 遺言・贈与・売却・解約・信託・任意後見 | 判断能力の低下=実質の締切 |
| ③ 死後枠 | 保険契約照会・ほふり開示・相続登記など | 死後でも可能。ただし有料・時間がかかる |
| ④ 物・書類の整理 | 要/不要/保留の仕分け、思い出の品 | 期限なし。いつでもやり直せる |
生前整理 何から始める?その手続き、今やるべきか判定チャート

- 自筆証書遺言書の保管申請(法務局へ本人が出頭。代理・郵送は不可/手数料3,900円)
- 所有不動産記録証明書の本人請求
- Apple「故人アカウント管理連絡先」の指定、Googleの死後アカウント設定の登録
- 生命保険契約照会制度(死亡または認知判断能力の低下が利用要件)
- 証券保管振替機構(ほふり)への登録済加入者情報の開示請求
- 戸籍の広域交付(2024年3月1日開始/本人・配偶者・直系親族のみ、窓口での本人請求限定)
- 相続登記、相続土地国庫帰属
| 枠 | 先送りした場合に遺族が負担するもの |
|---|---|
| ① 今すぐ枠 | 遺言書がなければ遺産分割協議が必要になり、相続人全員の合意と実印・戸籍収集が発生 |
| ② 判断能力があるうち枠 | 成年後見の申立てが必要になり、売却・贈与は原則不可に |
| ③ 死後枠 | 生命保険契約照会 WEB6,000円/書面7,000円、ほふり開示請求6,050円、所有不動産記録証明 1,470〜1,600円×検索条件件数 |
遺言書保管制度の手数料は、保管申請1件3,900円、閲覧請求(モニター)1回1,400円、遺言書情報証明書1通1,400円などと定められています(法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」2026年)。保管申請の撤回・変更の届出は無料です。
実家の不動産は「所有不動産記録証明制度」で一括で洗い出す
- 親本人の氏名・住所の変遷を確認する(旧住所での登記が残っている可能性があるため)
- 所有不動産記録証明書を本人名義で請求する
- 出てきた一覧と、固定資産税の納税通知書・権利書を突き合わせる
- 一致しない不動産(先代名義のまま、山林、私道の持分など)を洗い出す
- 名義が親でないものは、相続登記が済んでいない可能性として別リストにする
同制度には網羅性の限界があります。法務省も、同名異人が抽出される可能性や、未コンピュータ化の不動産は対象外である点を注意事項として示しています。証明書が「これで全部」を保証するものではないため、納税通知書などとの突き合わせは省略しないでください。
財産カテゴリー別|生前に洗い出す方法 vs 死後に調べる方法・費用
| 財産 | A 生前の方法と費用(親本人が実行) | B 死後に調べる方法と費用 | C 差額と実務メリット |
|---|---|---|---|
| ① 不動産 | 所有不動産記録証明の本人請求(オンライン窓口交付1,470円〜/書面1,600円、検索条件1件1通あたり) | 相続人による同制度の請求+相続登記(3年以内・過料10万円以下) | 生前なら親の記憶で裏取りできる。死後は突き合わせる相手がいない |
| ② 生命保険 | 保険証券の保管場所とエンディングノートへの記載=0円 | 生命保険契約照会制度 WEB6,000円/書面7,000円 | 差額6,000〜7,000円。しかも照会でわかるのは契約の有無のみで、保険金額・受取人・保障内容は各社への個別請求が別途必要 |
| ③ 証券口座 | 取引証券会社名のメモ=0円 | ほふり開示請求6,050円(法定相続情報一覧図の添付で4,950円、同一株主で2件目以降は1件あたり+1,100円) | 差額約5,000〜6,000円。生前なら口座の統廃合もできる |
| ④ ネット銀行・コード決済 | サービス名とID・パスワードの整理=0円 | スマホのロック解除が第三者には非常に困難 | 生前に残さないと、そもそも存在に気づけない |
| ⑤ サブスク契約 | 契約中のサービス一覧化=0円 | 解約するまで請求が継続 | 国民生活センターには、月約1,000円の請求元が特定できないという相談が寄せられている |
| ⑥ 戸籍・相続人確定 | 本籍地の記録=0円 | 戸籍の広域交付(2024年3月〜/本人・配偶者・直系親族のみ、窓口での本人請求限定、郵送・代理は不可) | 生前に本籍地がわかっていれば収集の起点が定まる |
③のほふり開示請求は、故人の証券口座の開設先が不明な場合に、法定相続人・その代理人・遺言執行者が利用できる制度です(株式会社証券保管振替機構、2025年)。「どこの証券会社かわからない」状態を、生前のメモ1枚で回避できます。
デジタル終活のやり方|パスワードを安全に残す実務
- 名刺大の紙にパスワードを書き、修正テープを2〜3回重ね貼りしてマスキングして保管する
- Apple「故人アカウント管理連絡先」を事前に指定する
- Googleの死後アカウント設定(アカウント無効化管理ツール)を登録する
- 株の取引先が不明な場合は、証券保管振替機構(ほふり)への有料開示請求を利用する
- スマホのロック解除方法(パスコード・生体認証の代替手段)を確保する
- クレジットカードの明細から、定期課金されているサービスを洗い出す
- ネット銀行・ネット証券・コード決済のサービス名だけを一覧化する
- Apple/Googleの死後設定を、親のスマホでその場で登録する
- パスワード本体は一覧に書かず、マスキング紙などの保管場所だけを家族に伝える
IDとパスワードの一覧をそのままエンディングノートに書き込むと、盗難や紛失時に悪用されるおそれがあります。ノートには「サービス名」と「保管場所のヒント」までにとどめ、パスワード本体は別に管理してください。
生前整理 やることリスト|1回の帰省で終わらせる棚卸し
- [ ] 通帳・キャッシュカードのある銀行名をすべて書き出す(残高は不要)
- [ ] 保険証券の保管場所を確認し、保険会社名と証券番号を控える
- [ ] 証券会社からの郵便物・取引報告書を探す
- [ ] 固定資産税の納税通知書を確認する(不動産の所在地がわかる)
- [ ] 権利書・登記識別情報の保管場所を確認する
- [ ] 年金手帳・年金定期便の場所を確認する
- [ ] 本籍地を確認する
- [ ] スマホの契約会社と、月々引き落とされているサービスを明細で確認する
- [ ] 所有不動産記録証明書の請求
- [ ] Apple/Googleの死後アカウント設定の登録
- [ ] 遺言書を作成する意思があるか確認する(作成する場合、保管申請は本人が法務局へ出頭)
- [ ] 使っていない口座・カード・サブスクの解約
- [ ] 要/不要/保留の3分類で仕分け(保留は箱に入れ、3か月後に再判断)
- [ ] 思い出の品は写真に撮ってから手放す
- [ ] 重要書類はファイルボックス1つにまとめ、場所を家族で共有する
実家 生前整理を親に切り出すには|子が独断で捨てるリスク
| つまずき | 言い換え |
|---|---|
| 「相続の話をしたい」→身構えられる | 「転ばないように床の物を減らそう」 |
| 「終活しよう」→縁起でもないと言われる | 「防災用に、避難経路と持ち出し品を確認したい」 |
| 「通帳を見せて」→警戒される | 「どこの銀行かだけ、メモしておきたい」 |
| 「捨てて」→反発される | 「一緒に見てみよう」 |
認知症などで親の判断能力が低下した後は、成年後見制度を使わない限り、預貯金の解約も不動産の売却も原則できなくなります。「まだ元気だから」ではなく「元気な今しかできない」と捉え直すことが、生前整理を先送りしない唯一の動機になります。
実家を「残すか壊すか」の税務分岐|空き家3,000万円特別控除
- 適用期間:平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡
- 控除額:3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は2,000万円)
- 建物:昭和56年5月31日以前に建築されたもの
- 売却代金:1億円以下
- 相続時から売却時まで、事業・貸付・居住の用に供していないこと
- 売却期限:相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
空き家の特例は要件が細かく、一つでも外れると適用されません。売却の段取りを組む前に、必ず税理士に要件の充足を確認してください。
生前整理 費用|「実家の先送りコスト」試算シート
| 間取り | 費用の目安(民間事業者の公表値) |
|---|---|
| 1DK | 約5〜12万円(別集計では1DK・2DKで8〜14万円) |
| 2LDK | 約12〜30万円(別集計では2LDK・3DKで14〜20万円) |
| 4LDK以上 | 約22〜60万円(別集計では3LDK・4LDK以上で30〜35万円) |
| 項目 | (A) 生前に着手 | (B) 相続後に放置 | 自分の場合 |
|---|---|---|---|
| 生命保険の調査 | 0円(証券を確認) | 7,000円(書面申請) | ______円 |
| 証券口座の調査 | 0円(メモ) | 6,050円(ほふり) | ______円 |
| 不動産の洗い出し | 1,600円×検索条件___件 | 1,600円×検索条件___件 | ______円 |
| 片付け費用 | ___万円(間取り別相場) | ___万円(+日程制約による割高分) | ______円 |
| 空き家3,000万円控除 | 適用できれば節税額 ___円 | 要件を外すと 0円 | ______円 |
| 固定資産税 | 現状のまま | 管理不全空家の勧告で住宅用地特例が解除され増額 | ______円 |
| 相続登記の過料リスク | 0円 | 10万円以下の過料の対象 | ______円 |
| 合計 | ______円 |
※節税額は譲渡益や税率によって変わるため、金額の見積もりは税理士にご確認ください。
生前整理とは|遺品整理・終活との違い(前提の確認)
| 用語 | 行う人 | 主なタイミング | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 生前整理 | 本人 | 元気なうち | 負担軽減・意思の明確化 |
| 老前整理 | 本人 | 主に40〜60代 | これからの暮らしの身軽化 |
| 遺品整理 | 遺族 | 亡くなった後 | 残された遺品の片付け |
| 終活 | 本人 | 任意 | 人生の総まとめ(生前整理を含む) |
生前贈与を検討する場合は、相続財産への加算期間が3年から7年へ段階的に延長されている点にご注意ください。2024年1月1日以後の贈与が対象で、2026年12月31日までに発生した相続は実質「相続開始前3年」ですが、2027年1月1日以後の相続から加算対象期間が順次伸び、2031年1月1日以後は完全に7年となります(延長された4年分の贈与には総額100万円の控除があります)。実行前に税理士へご相談ください。
まとめ|取り返せない順に手を付ける
よくある質問
本記事は一般的な進め方の目安をまとめたものです。相続税・遺言・名義変更など法律・税制にかかわる事項は改正されることがあるため、手続きの前に税理士・司法書士などの専門家、および各制度の公式情報を必ずご確認ください。
本記事の最終確認日:2026年8月19日




