まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
注意
調査と死亡の届出は「順序」が勝敗を分けます。市区町村への死亡届(7日以内)は法律上の義務なので必ず出しますが、カード会社・金融機関への死亡の連絡は、信用情報の開示請求を出した後に回すという順序設計が有効とされています。
相続で借金を調べるには、まず何をすべきですか?
- 自宅の書類を確保する(郵便物・督促状・契約書・通帳・スマホの決済アプリ)
- 3機関へ同時に開示請求を出す(1機関ずつ順番に出すと2か月かかります)
- 市区町村・市税事務所で税や保険料の滞納を確認する
- 不動産があれば所有不動産記録証明書を請求し、抵当権から債権者を特定する
- 残り日数を数え、3か月に間に合わないと判断したら熟慮期間の伸長を申し立てる
なぜ「順序」がそこまで重要なのか
3機関を同時に出す理由
借金が「見えなくなる」主な原因は何ですか?

原因1:死亡の確認によって信用情報から消える
原因2:そもそも信用情報機関に登録されない債務がある
原因3:保有期間を過ぎて消えている
注意
3機関の開示は「借金がある証明」には使えても「借金がない証明」にはならないとされています。白紙の報告書を見て安心せず、後述の15項目チェックリストで裏取りをしてください。
遺産相続の借金の調べ方は?3機関の比較と実費
【2026年9月時点】相続人が使える開示3機関 完全比較表
| 項目 | CIC | JICC | KSC(全国銀行個人信用情報センター) |
|---|---|---|---|
| カバーする借入 | クレジットカード・信販・携帯端末の分割 | 消費者金融・信販・一部銀行 | 銀行・信用金庫・日本政策金融公庫・信用保証協会 |
| 相続人の申込方法 | 郵送のみ | 郵送のみ | 郵送のみ |
| 手数料 | 1,500円(コンビニ開示利用券・商品番号0267477、発券手数料込み) | 2,177円(開示手数料1,960円+発券手数料217円)/速達2,511円 | 2,403円(開示手数料2,060円+発券手数料343円) |
| 所要日数 | 法定相続情報一覧図なら約10日/戸籍謄抄本の束なら約20日 | 書類到着後7〜10日 | 通常1週間〜10日 |
| 法定相続情報一覧図で代替 | 可(日数が約半分に短縮) | 可 | 可 |
| 死亡によるデータ削除 | あり(登録元が死亡確認時点で削除と明記) | 記載なし | 記載なし |
| 合計 | 6,080円/最短でも約3週間 |
本人開示との料金差に注意
補足
「ネットなら500円と書いてあったのに」という食い違いは、本人開示と法定相続人開示で料金体系がまったく別であることが原因です。相続人が参照すべきは郵送料金の欄です。
法定相続情報一覧図を先に作ると日数が半減する
被相続人の借金の調べ方|信用情報以外の確認先
通帳から債務を読み解く着眼点
- 毎月同額・同日の引落:ローン、リース、割賦の可能性
- 末日や5日・27日など締め日の引落:カード決済
- 少額で不規則な入金:個人間の貸し借り
- 見慣れない会社名からの入金:借入の実行
- 他人名義への定期送金:連帯保証の肩代わり
所有不動産記録証明制度で全国の不動産を1通で洗い出す
注意
登記簿上の氏名・住所が検索条件と一致しない不動産は抽出されません。転居や住所変更登記の未了がある場合は、旧住所でも検索する必要があるとされています。
役所での滞納確認
相続放棄と借金の調べ方|3か月で間に合わせる逆算フロー
3か月で間に合うか? 逆算フローチャート
| 経過日数 | 判断 |
|---|---|
| 45日以内 | 3機関開示に十分間に合う。今すぐ戸籍収集と開示請求を並行 |
| 46〜75日 | 法定相続情報一覧図を先に作り、開示を約10日に短縮して滑り込む |
| 76日以上 | 伸長の申立てを前提に動く(開示結果を待たない) |
- 第1順位(子):直系なので戸籍の広域交付が使え、窓口1回で完結しやすい
- 第2順位(親):直系のため広域交付の対象
- 第3順位(きょうだい):広域交付の対象外。本籍地ごとに郵送請求が必要で、+2〜4週間を見込む
到達点は4つ
| 到達点 | 判断 | 費用 | 残り日数の目安 |
|---|---|---|---|
| A. 開示が間に合う | 通常どおり単純承認・放棄を判断 | 6,080円+戸籍代 | 30日以上残 |
| B. 間に合わない | 熟慮期間の伸長を申立て(令和6年実績9,791件) | 収入印紙800円+郵便切手 | 残り30日を切ったら即申立て |
| C. プラス財産は多いが負債が読めない | 限定承認を検討 | 印紙・官報公告費等 | 3か月以内・相続人全員の同意が必要 |
| D. 明らかに債務超過 | 即・相続放棄(令和6年実績308,753件) | 申述人1人につき印紙800円+切手 | 3か月以内 |
実務の第一選択は「限定承認」ではなく「期間伸長」
- 相続の放棄の申述の受理:308,753件(令和5年282,785件、令和4年260,497件から増加し、初めて年間30万件を突破)
- 相続の承認又は放棄の期間の伸長:9,791件
- 相続の限定承認の申述受理:690件(相続放棄の約0.22%)
相続で借金を調べる方法|信用情報に載らない15項目チェックリスト
| # | 債務の種類 | 確認先 | 通帳・書類で見るポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 個人間の借金 | 借用書・親族・知人 | 少額で不規則な入金、返済らしき定期出金 |
| 2 | 連帯保証・保証債務 | 保証契約書、主債務者 | 他人名義への肩代わり送金。保証会社の代位弁済はKSCに載る場合あり |
| 3 | 住民税・固定資産税・国保料の滞納 | 市区町村・市税事務所 | 納税証明書を相続人として請求。督促状の有無 |
| 4 | 家賃・管理費・共益費の滞納 | 大家・管理会社 | 毎月同額の引落が途中で止まっていないか |
| 5 | 水道光熱・通信の未払い | 各事業者 | 引落停止後の請求書・督促はがき |
| 6 | 医療費・介護費の自己負担分 | 病院・介護事業者 | 直近数か月の請求書、入院時の預り金 |
| 7 | 奨学金の返還残債 | 日本学生支援機構等 | 毎月27日前後の定額引落 |
| 8 | 事業性借入・買掛金 | 確定申告書控え・決算書 | 貸借対照表の負債の部、手形帳 |
| 9 | リース・割賦 | リース会社 | 毎月同額・同日の引落 |
| 10 | 後払い決済/BNPLの未払い | 各サービス | スマホアプリ、コンビニ払込票 |
| 11 | ヤミ金・無登録業者 | — | 短期・高頻度の入出金、不審な着信履歴 |
| 12 | 損害賠償債務・示談残 | 示談書・保険会社 | 定額の分割送金 |
| 13 | 未払いの養育費・婚姻費用 | 調停調書・公正証書 | 毎月の定額送金 |
| 14 | 税務調査による追徴の可能性 | 税理士 | 直近の申告内容、修正申告の有無 |
| 15 | 住宅ローン | 金融機関 | 団体信用生命保険で消える可能性あり=債務ではなくなる側として要確認 |
補足
15番の住宅ローンは唯一「減る方向」の項目です。団信に加入していれば死亡により残債が消えるため、これを負債に計上したまま相続放棄を選ぶと、本来受け取れたはずの自宅を失うことになりかねません。金融機関に団信の有無を必ず確認してください。
ケース別の対処|相続順位と財産構成で変わる進め方
ケース1:親が亡くなり子が相続する(第1順位)
ケース2:きょうだいが亡くなり自分が相続人になった(第3順位)
ケース3:不動産があり借入の有無が読めない
ケース4:疎遠で自宅にも入れない
予防・再発防止のコツ|生前と相続後にできること
生前にできること
- 金融機関・カード会社の一覧を作る(口座、カード、ローン、リースを1枚の紙に)
- 本人がネット開示で信用情報を取得しておく(CIC 500円、KSC 800円・マイナンバーカード必須)
- 連帯保証の有無を確認しておく(本人しか知り得ない情報の筆頭)
- 団信の加入状況を記録する
- エンディングノートに債務欄を設ける
相続後に守るべき期限
| 手続 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 相続開始を知った時から3か月 | 裁判所「相続の放棄の申述」(2025年) |
| 準確定申告 | 相続開始を知った日の翌日から4か月 | 所得税法 |
| 相続税申告 | 同10か月 | 相続税法 |
| 相続登記 | 取得を知った日から3年以内(違反は10万円以下の過料) | 法務省「相続登記の申請義務化について」(2024年) |
注意
相続登記は令和6年4月1日から申請が義務化されています。放棄しないと決めたら、3年以内の登記申請も同時に管理してください。
専門家・公的情報の見解
CIC「郵送による法定相続人開示(死亡開示)の申込み手続にあたって」(様式F39・2026年3月版)
「登録元のクレジット会社は、契約者の死亡を確認した時点で当社に登録されている当該クレジット契約の情報を削除します。当社は『信用情報開示報告書』作成時点で当社に登録されているクレジット契約の情報を開示します」
相談先の使い分け
- 司法書士:相続放棄の申述書作成、相続登記、戸籍収集の代行
- 弁護士:債務額が大きい、債権者と交渉が必要、限定承認、相続人間の争いがある
- 税理士:相続税申告、準確定申告、事業性負債の評価
やってはいけないNG対応
- 被相続人の預金を引き出して使う:法定単純承認とみなされる可能性があります。葬儀費用への充当も、金額や態様によって争いになり得ます。
- 借金を相続人のお金で返済する:債務の承認と評価されるおそれがあります。
- 遺品を売却・処分する:財産の処分にあたる可能性があります。
- カード会社に先に死亡を連絡してから開示請求する:CICの運用上、情報が削除された後の請求になります。
- 1機関だけ開示して「借金なし」と判断する:カバー範囲が異なるため漏れます。
- 3か月を過ぎてから相談する:期限後の放棄は例外的な事情の主張が必要になり、難易度が上がります。
- 報告書が白紙だから安心と決めつける:KSCの取引情報は契約終了日から5年、官報情報は7年で消えるとされています。
注意
迷ったら「何もしない」が原則です。熟慮期間中に財産に手を触れないことが、選択肢を残す最良の方法とされています。




