親の実家の相続税評価額を知りたいとき、最初にすべきことは 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(rosenka.nta.go.jp)で、相続開始日の属する年分の路線価を引くこと です。ここで押さえるべきは、路線価図の数字が「1㎡当たり・千円単位」であることと、路線価は毎年1月1日時点で評価され、毎年7月1日ごろに公表されるという2点です。
ただし、調べた路線価に面積を掛けただけの金額は、申告で使う評価額とは別物です。実家1軒を評価しきるまでには、必ず次の4つの分岐を通ります。
- 年分の分岐:相続開始が1〜6月だと、その年分の路線価公表(7月1日ごろ)を待つ必要があり、申告期限10か月のうち作業期間が圧縮されます
- 物件種別の分岐:実家が分譲マンションなら、令和6年1月1日以後の相続は「居住用の区分所有財産の評価」(区分所有補正率)が入ります
- 路線価の有無の分岐:前面道路に数字がなければ、倍率方式か、税務署への特定路線価設定申出のどちらかです
- 減額の分岐:奥行・不整形の補正、地積規模の大きな宅地、小規模宅地等の特例(特定居住用330㎡まで80%減)で、結論が反転しえます
この記事は、この4分岐を1本の導線につないで、実家1軒を期限内に自力で「仮評価」しきることを目標にしています。なお最終的な申告額の確定は税理士の確認が必要です。
路線価を調べる目的が「申告」か「遺産分割の話し合い」か「売却判断」かで、見るべき価格は変わります。分割協議や売却では、路線価÷0.8で実勢の目安を持つ発想が要ります。
まず何をすべき?路線価の調べ方は4ステップで完結します
結論として、路線価は国税庁サイトで「年分→都道府県→路線価図→市区町村→地名」の順にたどれば、無料で5分ほどで確認できます。必要なのは実家の住所だけです。
国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)は、相続・遺贈・贈与により取得した財産の相続税・贈与税評価に適用される公式の基準です。国税庁サイトでは令和8年分から平成30年分まで、9年分が公開されています(国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表、2026年)。
手順:国税庁サイトでの調べ方
迷いやすいのは「年分の選択」と「地名から図にたどり着く部分」の2か所です。
- rosenka.nta.go.jp にアクセスする:日本地図が表示されます
- 年分を選ぶ:相続開始日(被相続人が亡くなった日)が属する年分を選びます。調べている今年ではありません
- 都道府県をクリックする:メニューから「路線価図」を選びます(同じ画面に「評価倍率表」もあります)
- 市区町村→地名(町丁名)と進む:地名の右側に路線価図のページ番号が並びます。番号が複数あるときは、順に開いて実家の前面道路を探します
- 図中で実家の前面道路を特定する:道路上に書かれた「200E」などの数字が路線価です
地図から探したい場合は、一般財団法人資産評価システム研究センターの全国地価マップ(chikamap.jp)も使えます。相続税路線価等・固定資産税路線価等・地価公示価格・都道府県地価調査の4種類を地図上で閲覧できます(全国地価マップ、2026年)。住所検索から視覚的にたどれるため、路線価図のページ番号で迷ったときの併用先として有効です。
令和8年分(2026年)の路線価はどう動いたか
令和8年分の路線価は2026年7月1日に公表され、標準宅地の評価基準額は全国平均で前年比+2.9%と5年連続の上昇でした。現行の算定方式となった2010年以降で最大の伸び率です(国税庁 令和8年分財産評価基準書、2026年7月)。
- 全国最高路線価:東京都中央区銀座5丁目「銀座中央通り」(鳩居堂前)で1㎡当たり5,336万円(前年比+11.0%)。昭和61年分以降41年連続でトップです
- 都道府県別の標準宅地平均の上昇率トップ:東京都 +9.4%
- 都道府県庁所在都市の最高路線価:上昇44都市・横ばい3都市・下落0都市。下落都市がゼロになったのは約35年ぶりとされています
地価が上がっているということは、去年の感覚で「うちは相続税がかからない」と考えていた実家が、今年は基礎控除を超える可能性があるということです。国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月公表)によると、課税割合は10.4%と過去最高を更新しています。
なぜ路線価だけでは評価額が出ないのか?主な原因を深掘りします

結論を先に述べます。路線価×面積が申告額と一致しないのは、土地の形・広さ・使われ方に応じた補正と特例が、評価額に何重にもかかるからです。
相続税評価額の基本式は「路線価 × 奥行価格補正率等 × 地積(㎡)」です。この「等」の部分に、実家の個別事情が全部詰まっています。
原因1:土地の形状による補正が入る
奥行価格補正率は、地区区分と奥行距離の組み合わせで定められ、財産評価基本通達の付表として公表されています(国税庁 財産評価基本通達 付表1 奥行価格補正率表、2025年)。
これに加えて、間口が狭い土地には間口狭小補正率、形が整っていない土地には不整形地補正率がかかります。なお、不整形地補正率に間口狭小補正率を乗じる場合の下限は0.60とされています。つまり、条件が重なる土地では最大4割程度の減額に届く場合があります。
原因2:面積が大きいと別のルールが動く
三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地で、普通住宅地区・普通商業併用住宅地区にあるなど一定要件を満たすものは、「地積規模の大きな宅地」として規模格差補正率により減額評価できます(国税庁 タックスアンサー No.4609、2025年)。平成30年1月1日以後の相続から適用されています。
市街化調整区域や工業専用地域は原則として対象外で、指定容積率は東京都特別区で300%未満、それ以外で400%未満という要件もあります。地方の広い実家は、この条件に当てはまることが少なくありません。
原因3:住み方によって8割減りうる
特定居住用宅地等に該当する自宅敷地は、小規模宅地等の特例により、330㎡までの部分の評価額を80%減額できます(国税庁 タックスアンサー No.4124、2025年)。
この特例が使えるかどうかで、評価額は5分の1になります。「路線価×面積」の単純計算だけを見て相続税の要否を自己判断すると、結論が逆になりうるということです。
路線価は評価の出発点にすぎません。形状補正・面積要件・小規模宅地等の特例の3つを通過して、はじめて申告に近い数字になります。
路線価図 見方:「200E」は何を意味するのか?
結論です。「200E」は1㎡当たり20万円の路線価で、Eは借地権割合50%を示す記号です。数字は千円単位で、坪単価ではありません。
国税庁は「路線価図の閲覧の仕方」で、年分・都道府県・市区町村の選択方法から、地区区分や借地権割合記号の凡例の見方までを公式に解説しています(国税庁 路線価図の閲覧の仕方、2026年)。
借地権割合の記号はA〜Gの7段階
数字の後ろのアルファベットは、借地権割合を10%刻みで表します。
| 記号 | 借地権割合 | 記号 | 借地権割合 |
|---|---|---|---|
| A | 90% | E | 50% |
| B | 80% | F | 40% |
| C | 70% | G | 30% |
| D | 60% | — | — |
出典:国税庁「路線価図の閲覧の仕方」
この記号が効いてくるのは、実家の敷地が借地(底地の所有者が別にいる)である場合や、逆に人に貸している土地がある場合です。実家が借地上の建物だった場合、相続財産になるのは借地権であり、路線価×地積×借地権割合が評価の出発点になります。
地区区分の記号は図の左上の凡例で確認する
路線価の数字を囲む記号(丸、四角、菱形など)や斜線の入り方は、地区区分を示します。ビル街地区・高度商業地区・繁華街地区・普通商業併用住宅地区・普通住宅地区・中小工場地区・大工場地区の区分があり、凡例は各路線価図の左上に必ず載っています。
地区区分は、奥行価格補正率表のどの列を読むかを決めるものなので、飛ばさずに確認してください。「地積規模の大きな宅地」の適用可否にも関わります。
路線価図には矢印が引かれていることがあります。矢印はその路線価が適用される範囲を示しており、矢印の先端で路線価が切り替わります。実家の前面がちょうど境目にあるときは、どちらの数字を採るかで評価額が変わるため、図を拡大して確認してください。
評価倍率表 見方と特定路線価とは?路線価がないときの分岐
結論を先に述べます。前面道路に数字がないときは、「倍率地域だから数字がない」のか「路線価地域なのにその道路だけ数字がない」のかで、対応が真逆になります。
見分け方:まず評価倍率表を開く
同じ市区町村の「評価倍率表」を開いて、実家の町丁名を探してください。判定はここで付きます。
| 状況 | 評価倍率表の記載 | 取るべき対応 |
|---|---|---|
| 倍率地域 | 宅地の欄に「1.1」などの倍率が記載されている | 倍率方式で計算する |
| 路線価地域 | 宅地の欄が「路線」と記載されている | 特定路線価の設定を申し出るか、近隣路線価から検討する |
倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法で、その土地の固定資産税評価額に評価倍率表の倍率を乗じて計算します(国税庁 タックスアンサー No.4606、2025年)。固定資産税評価額は、毎年春に届く固定資産税の課税明細書、または市区町村で取得する固定資産評価証明書で確認できます。課税明細書では「価格」「評価額」と書かれた欄が該当し、課税標準額とは別物なので取り違えに注意してください。
特定路線価とは何か
特定路線価とは、路線価地域内で路線価が設定されていない道路について、納税者の申出に基づいて税務署が個別に設定する路線価のことです。国税庁「B2-11 特定路線価設定申出書」(2025年)によると、路線価地域内で路線価が設定されていない道路のみに接する宅地を評価する場合、納税者は税務署へ特定路線価設定申出書を提出して、路線価の設定を申し出ることができるとされています。
該当しやすいのは次のようなケースです。
- 実家が私道の奥にある(旗竿地)
- 行き止まりの位置指定道路にしか接していない
- 分譲時に造成された細い開発道路に面している
申出書には、物件案内図・地形図・写真といった添付書類が必要で、提出から回答までに一定の時間がかかります。申告期限から逆算して早めに動かないと間に合わない点が、この分岐の実務上の急所です。
特定路線価を申し出るか、近隣の路線価を使って評価するかは、評価額に直結する判断です。どちらが有利かはケースにより異なるため、この分岐に当たった時点で税理士に相談することをおすすめします。
相続税 土地 評価額 計算:実家モデル3ケースで「単純計算とのズレ」を可視化
結論です。単純計算(路線価×地積)と特例適用後の評価額は、条件がそろえば80%前後もかい離します。以下は概算モデルであり、実際の申告額とは異なります。
ケースA|郊外の一戸建て(160㎡)
路線価15万円/㎡、間口10m・奥行16m、地積160㎡、普通住宅地区。同居の子が相続し、小規模宅地等の特例(特定居住用)の要件を満たすと仮定します。
| 段階 | 計算 | 評価額 | ①からの乖離 |
|---|---|---|---|
| ①単純計算 | 15万円 × 160㎡ | 2,400万円 | — |
| ②補正後 | 2,400万円 × 奥行価格補正率1.00 | 2,400万円 | 0% |
| ③特例適用後 | 2,400万円 × (1−0.8) | 480万円 | −80% |
奥行16mは普通住宅地区で補正率1.00の範囲に入るため、②では減額が生じません。決定打は小規模宅地等の特例です。
ケースB|三大都市圏の広い実家(600㎡)
路線価12万円/㎡、地積600㎡、普通住宅地区、指定容積率200%。三大都市圏の500㎡以上なので、地積規模の大きな宅地の要件に当たりえます。
| 段階 | 内容 | 評価額の目安 |
|---|---|---|
| ①単純計算 | 12万円 × 600㎡ | 7,200万円 |
| ②補正後 | 規模格差補正率を適用 | 7,200万円より減額 |
| ③特例適用後 | 330㎡分のみ80%減、残り270㎡は減額なし | 按分計算が必要 |
このケースで最も誤解が多いのは③です。小規模宅地等の特例の限度面積は330㎡なので、600㎡のうち330㎡分だけが8割減となり、残り270㎡分はそのまま残ります。「広い実家ほど得」ではなく、330㎡を超える部分は減らないということです。使用する規模格差補正率は国税庁 タックスアンサー No.4609で確認してください。
ケースC|地方の倍率地域
路線価の設定がない地域。固定資産税の課税明細書に記載された評価額1,200万円、評価倍率表の宅地の倍率1.1と仮定します。
| 段階 | 計算 | 評価額 |
|---|---|---|
| ①倍率方式 | 1,200万円 × 1.1 | 1,320万円 |
| ②特例適用後 | 1,320万円 × (1−0.8) | 264万円 |
倍率方式では、固定資産税評価額にすでに個別事情が織り込まれているため、原則として奥行や不整形の補正は重ねません。
ここに示した数字はすべて概算モデルです。奥行価格補正率・規模格差補正率の適用や、小規模宅地等の特例の要件判定(同居の有無、申告期限までの保有・居住継続など)には細かい条件があり、申告額の確定は税理士の確認が必要です。
あなたの実家はどのルート?路線価5分岐チャート
結論です。START は「相続開始日」です。亡くなった日が決まれば、使う年分も、残り時間も、進む順番もすべて決まります。
分岐1|相続開始は1〜6月か、7〜12月か
相続税は相続開始日の属する年分の路線価で評価します。ところが、その年分の路線価は7月1日ごろにしか公表されません。1〜6月に亡くなった場合、7月1日まで評価計算に着手できないという待ち時間が発生します。
一方で、申告・納付期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 相続税の申告と納税)。つまり、待ち時間の分だけ実作業期間が削られます。
| 相続開始月 | 路線価公表 | 申告期限の目安 | 公表後に残る期間 |
|---|---|---|---|
| 1月 | その年の7月1日ごろ | 翌年11月 | 約4か月 |
| 2月 | 同上 | 翌年12月 | 約5か月 |
| 3月 | 同上 | 翌年1月 | 約6か月 |
| 4月 | 同上 | 翌年2月 | 約7か月 |
| 5月 | 同上 | 翌年3月 | 約8か月 |
| 6月 | 同上 | 翌年4月 | 約9か月 |
| 7〜12月 | 公表済み | 開始から10か月 | ほぼ全期間 |
1月に親が亡くなった場合、路線価が出るまでの半年で、戸籍収集・財産目録・遺産分割の下準備を進めておかないと、土地評価と分割協議と申告書作成を4か月に詰め込むことになります。
1〜6月の相続でも、前年分の路線価を使って「おおよその規模感」を掴むことはできます。地価が上昇局面にある現在は、前年分より数%高く出ると見込んでおくと安全側の見積もりになります(令和8年分は全国平均+2.9%)。
分岐2|戸建てか、分譲マンションか、借地か
物件種別で計算ルートが分かれます。
- 戸建て(土地):路線価方式または倍率方式。この記事の基本ルートです
- 分譲マンション:令和6年1月1日以後に取得したものは、区分所有補正率のルートに入ります。国税庁 タックスアンサー No.4667(2024年)によると、居住用の区分所有財産は、築年数・総階数指数・所在階・敷地持分狭小度から評価乖離率と評価水準を求め、区分所有補正率を乗じて評価します。戸建て前提の計算式をそのまま当てると評価額を大きく誤ります
- 借地:借地権割合(記号A〜G)を使って借地権を評価します
実家整理の場面ではマンションのケースも相当数ありますが、調べ方を扱う記事の多くが戸建て前提で書かれています。実家が分譲マンションなら、この分岐を必ず通ってください。
分岐3|前面道路に路線価があるか
前述のとおり、数字があれば路線価方式、なければ評価倍率表を開いて倍率方式か特定路線価かを判定します。
分岐4|減額の余地があるか
次の3点をチェックします。1つでも当たれば、単純計算の金額は上振れした過大な数字だということです。
- 地積が三大都市圏500㎡以上/それ以外1,000㎡以上か
- 間口が狭い・奥行が極端・形がいびつではないか
- 同居親族・配偶者・いわゆる家なき子に当たり、小規模宅地等の特例(330㎡・80%減)が使えないか
各終点で用意すべきものは共通して3点です。必要書類(固定資産税課税明細書、公図・地積測量図、住民票等)、根拠となる国税庁ページ、そして自力でいくか税理士に投げるかの判断です。目安として、分岐3で特定路線価に進んだ場合、分岐2でマンションに進んだ場合、分岐4で不整形地に当たった場合は、税理士への依頼を前提に考えるほうが安全とされています。
4つの土地価格の使い分け早見表|路線価と実勢価格の違い
結論です。相続税路線価は公示地価の約80%の水準であり、「売れる値段」ではありません。申告と分割協議と売却では、見るべき価格が違います。
| 項目 | (1)相続税路線価 | (2)固定資産税路線価 | (3)地価公示・地価調査 | (4)実勢価格 |
|---|---|---|---|---|
| 公表機関 | 国税庁 | 市区町村・東京都主税局 | 国土交通省・都道府県 | — |
| 価格の基準日 | 毎年1/1 | 3年に1度の1/1 | 毎年1/1・7/1 | 随時 |
| 公表時期 | 毎年7/1ごろ | 評価替え年の4月ごろ | 3月・9月 | — |
| 公示地価に対する水準 | 約80% | 約70% | 100% | 変動 |
| 調べられるサイト | rosenka.nta.go.jp | chikamap.jp | 土地総合情報システム | レインズ・マーケット・インフォメーション/不動産情報ライブラリ |
| 実家相続での用途 | 相続税・贈与税の申告 | 固定資産税・登録免許税の検算、倍率方式の基礎数値 | 路線価÷0.8の妥当性チェック | 遺産分割協議の取り分決め、売却判断 |
価格水準の出典は、公的土地評価の均衡化・適正化に基づく水準(国土交通省地価公示および各自治体の解説)です。固定資産税路線価は3年に1度の評価替え、相続税路線価は毎年更新という頻度の違いも押さえておいてください。
兄弟間の遺産分割協議で路線価を持ち出すと揉めやすいのは、路線価が申告用の価格であって、売れる値段ではないからです。実家を相続する側は路線価(低め)を、代償金を受け取る側は実勢価格(高め)を主張しがちで、話が噛み合いません。分割協議では、路線価÷0.8で試算した目安と、実際の成約事例の両方を最初にテーブルに載せるほうが早く決着します。
ケース別の対処:過去の年分・更正の請求・売却まで
結論です。国税庁サイトで見られるのは平成30年分以降の9年分だけなので、それより前は別ルートで探す必要があります。
過去の年分の路線価を調べたいとき
国立国会図書館のリサーチ・ナビ「相続税路線価の調べ方」(2026年)では、国税庁サイトに掲載のない古い年分の路線価図について、税務署の路線価図等閲覧コーナーや、国立国会図書館所蔵の冊子体(評価倍率表と路線価図が別冊)で確認する方法が案内されています。
この情報が必要になるのは、数年前に申告を済ませた人が、払いすぎた相続税の還付(更正の請求)を検討する場合です。更正の請求の期限は申告期限から5年、相続開始日から数えると実質5年10か月です(国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続)。
不整形地や特定路線価の判断、小規模宅地等の特例の適用漏れなど、土地の評価は結論が動きやすい分野です。過去分でも期限内なら見直しの余地があります。
調べた路線価を売却判断に使いたいとき
実家を売る前提なら、路線価の確認と並行して、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除も検討対象になります。国税庁 タックスアンサー No.3306(2025年)によると、この特例は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象で、昭和56年5月31日以前に建築された家屋につき耐震改修または取壊しが要件とされています(令和6年1月1日以後は、買主が譲渡年の翌年2月15日までに実施した場合も対象)。
適用期限が2027年12月31日である点は、実家整理のスケジュールに直接効きます。
相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象とされています。施行前に発生した相続についても2027年3月31日が期限です。路線価調査と並行して、登記の期限も確認しておいてください。
専門家・公的情報の見解:数字で見る「土地評価」の重み
結論です。相続税の課税割合は10.4%と過去最高で、相続財産に占める土地の割合は30.2%です。土地評価を誤ることの影響は、相続財産の3割に及びます。
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月公表)によると、令和6年分の被相続人数は1,605,378人、うち相続税の申告書提出に係る被相続人数は166,730人で、課税割合は10.4%と過去最高でした。
相続財産の金額の構成比は、現金・預貯金等34.9%、土地30.2%、有価証券17.8%、家屋4.8%、その他12.3%。被相続人1人当たりの課税価格は1億4,025万円、税額は1,946万円。(国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」)
注目すべきは、土地の構成比が平成27年の38.0%から30.2%まで低下している点です。それでも財産の3割を占め、かつ評価に最も判断が入る資産であることに変わりはありません。
また、国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査9,512件に対して非違件数7,826件(非違割合82.3%)、追徴税額824億円、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は3,093万円でした。調査に入られた場合の指摘率が高い分野であることは、公表資料から読み取れます。
なお、令和8年度(2026年度)税制改正大綱では、借入れによる貸付用不動産の評価方法と、不動産小口化商品の評価方法の見直しが盛り込まれました(不動産小口化商品は令和9年1月1日以後、通常の取引価額により評価)。土地・不動産の評価ルールは今も動いています。最新の取扱いは、国税庁のタックスアンサーや税理士への確認をおすすめします。
やってはいけないNG対応
結論です。最も多い失敗は、「路線価×面積」の1回の掛け算だけで相続税の要否を自己判断してしまうことです。
- 単純計算だけで「うちは相続税がかかる/かからない」と決める:補正率・地積規模・小規模宅地等の特例を通すと、結論が反転しえます。特に「かからない」と判断して申告しなかった場合、後から指摘されるリスクを負います
- 調べている今年の年分を選んでしまう:使うのは相続開始日の属する年分です。2026年に、2024年に亡くなった親の土地を調べるなら令和6年分を選びます
- 路線価の数字を「円」や「坪単価」として読む:路線価図の数字は千円単位・1㎡当たりです。「200」は20万円/㎡です
- 実家がマンションなのに戸建ての式で計算する:令和6年1月1日以後の相続では区分所有補正率が入ります(国税庁 タックスアンサー No.4667)
- 前面道路に数字がないのを「評価額ゼロ」と解釈する:倍率方式か特定路線価かの分岐であって、評価不要という意味ではありません
- 遺産分割協議で路線価の金額を「実家の価値」として提示する:申告用の価格です。売却価格の目安が必要なら別の指標を併用してください
- 小規模宅地等の特例を「適用できるから申告不要」と考える:特例を使って基礎控除以下になる場合でも、申告書の提出が要件とされています
小規模宅地等の特例のように、適用するために申告が必要な制度があります。「税額がゼロだから何もしない」という判断は避け、必ず税理士に確認してください。
予防・再発防止のコツ:親が元気なうちに集めておく3点
結論です。固定資産税の課税明細書・公図と地積測量図・登記事項証明書の3点を先に揃えておくと、路線価調査は5分で終わります。
実家の相続で時間を溶かすのは、路線価を引く作業そのものではなく、その前段の「実家の正確な地番と面積が分からない」段階です。
- 固定資産税の課税明細書(毎年4〜6月に届く):地番、地積、固定資産税評価額が載っています。倍率地域ではこの評価額が計算の基礎になるため、捨てずに保管してください
- 公図・地積測量図(法務局で取得):土地の形と間口・奥行の把握に使います。不整形地補正の判断材料です
- 登記事項証明書:所有者と地目、面積を確認します。共有名義や未登記建物の有無もここで分かります
あわせて、毎年7月に公表される路線価で、実家の前面道路の数字だけ記録しておくと、地価の推移が分かります。令和8年分は全国平均+2.9%と5年連続で上昇しており、「去年は大丈夫だった」が今年も通用するとは限りません。
親が元気なうちに、実家の路線価と地積を1枚のメモにまとめておくだけで、相続開始後の初動が変わります。相続開始が1〜6月なら7月1日まで正確な計算はできませんが、前年分の路線価で規模感を掴んでおけば、相続放棄の期限(3か月)や申告の要否判断に間に合います。
よくある質問
路線価はどこで無料で見られますか?
国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(rosenka.nta.go.jp)で、誰でも無料で閲覧できます。令和8年分から平成30年分までの9年分が公開されています。地図から探したい場合は全国地価マップ(chikamap.jp)も無料で利用できます。それより古い年分は、税務署の閲覧コーナーや国立国会図書館で確認する方法が案内されています。
路線価と実勢価格の違いは何ですか?
相続税路線価は公示地価の約80%の水準に設定された「申告用の価格」で、実勢価格は実際に売買が成立する価格です。目安として路線価÷0.8で公示地価水準に戻す考え方がありますが、個別の物件条件で上下します。売却や遺産分割の話し合いでは、レインズ・マーケット・インフォメーションなどの成約事例と併せて判断してください。
評価倍率表の見方を教えてください
市区町村と町丁名で行を探し、「宅地」の列を見ます。「1.1」などの数字があればその町は倍率地域で、固定資産税評価額×1.1が評価額です。「路線」と書かれていれば路線価地域なので、路線価図を見ます。田・畑・山林の列にも別の倍率が並びますが、実家の敷地であれば「宅地」の列を読みます。倍率方式は国税庁 タックスアンサー No.4606で解説されています。
特定路線価とは何ですか?申請は自分でできますか?
特定路線価とは、路線価地域内で路線価が設定されていない道路について、納税者の申出により税務署が個別に設定する路線価です。国税庁「B2-11 特定路線価設定申出書」によると、納税者本人が申出書を提出できます。ただし物件案内図・地形図・写真などの添付が必要で、回答まで時間がかかります。申告期限が迫っている場合は、早い段階で税理士に相談することをおすすめします。
1月に親が亡くなりました。路線価の公表を待つと間に合いますか?
その年分の路線価公表は7月1日ごろ、申告期限は相続開始の翌日から10か月なので、公表後に残る作業期間は約4か月です。間に合わせるには、公表を待つ間に戸籍収集・財産目録の作成・遺産分割の下話を終わらせておくことが要になります。前年分の路線価で規模感だけ先に掴んでおくと、税理士に依頼するかどうかの判断も早められます。
まとめ
路線価の調べ方そのものは、国税庁サイトで5分で終わります。難しいのはその先です。
- 使うのは相続開始日の属する年分。1〜6月の相続は7月1日の公表待ちで作業期間が圧縮されます
- 実家が分譲マンションなら、令和6年1月1日以後の相続は区分所有補正率のルートです
- 前面道路に数字がなければ、倍率方式か特定路線価設定申出かを評価倍率表で見分けます
- 単純計算の金額は、補正率・地積規模・小規模宅地等の特例(330㎡・80%減)を通すと大きく動きます
まずは実家の固定資産税課税明細書を手元に用意し、rosenka.nta.go.jp で該当年分の路線価を引いてみてください。そこで出た概算を持って税理士に相談すれば、話がはるかに早く進みます。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務判断を行うものではありません。土地の評価や特例の適用可否は個別事情により異なるため、実際の申告にあたっては税理士に、相続登記については司法書士にご相談ください。制度は改正されることがあるため、最新の取扱いは国税庁サイトでご確認ください。
最終確認日:2026年8月4日




