まず判定:実家の路線価「4ルート判定チャート」
Q1|相続はいつ起きましたか?
- 1〜6月に発生 → その年分の路線価は7月初旬まで公表されません。前年分で仮試算し、7月に確定計算へ差し替えます(後述のタイムライン参照)
- 7〜12月に発生 → その年分は公表済み。すぐ本計算に進めます
Q2|市区町村を開くと、路線価図ボタンはありますか?
Q3|路線価図で実家前の道路に数字がありますか?
Q4|実家は戸建てですか、分譲マンションですか?
4ルートの終点一覧
| ルート | 判定 | 計算式 | 使うサイト・必要書類 | 取得先と費用 | 所要時間の目安 |
|---|
| A 路線価方式 | 前面道路に数字あり | 路線価 × 奥行価格補正率等 × 地積 | rosenka.nta.go.jp/公図・地積測量図 | 法務局(オンライン取得可・手数料要) | 図の特定5分+補正判断 |
| B 倍率方式 | 倍率表に「1.1」等の数字 | 固定資産税評価額 × 評価倍率 | 評価倍率表/固定資産税課税明細書の「価格」「評価額」欄 | 明細書紛失時は市区町村(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証明書 | 明細書が手元にあれば5分 |
| C 分譲マンション | 実家が区分所有建物 | 敷地権割合で按分 → 令和6年1月1日以後は区分所有補正率を乗じる | タックスアンサー No.4667/登記事項証明書(敷地権割合・築年・総階数・所在階) | 法務局 | 指数計算が必要。税理士推奨 |
| D 過去年分が必要 | 平成29年分以前 | 当時の路線価で評価 | 国立国会図書館デジタルコレクション(昭和25〜平成17年分)/WARP/税務署の閲覧コーナー | 図書館・税務署 | 年分により変動 |
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注意ルートBで最も多い取り違えが、課税明細書の「課税標準額」を使ってしまうことです。倍率方式で使うのは「価格」または「評価額」と書かれた欄です。住宅用地の特例が効いている土地では、課税標準額は価格の6分の1程度まで下がっているため、そのまま倍率を掛けると評価額を大幅に過小計上します。
その前に:親名義の不動産を全部洗い出せていますか
所有不動産記録証明制度(2026年2月2日開始)
名寄帳(固定資産課税台帳)との併用
補足住所等変更登記は2026年4月1日に義務化されました。住所・氏名の変更から2年以内の申請義務があり、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象とされています。施行日前の変更も対象です。親が存命なら、この機会に登記上の住所を現住所に合わせておくと、将来の記録証明の精度が上がります。
路線価図 見方|「200E」は何を意味するのか
借地権割合の記号はA〜Gの7段階
| 記号 | 借地権割合 | 記号 | 借地権割合 |
|---|
| A | 90% | E | 50% |
| B | 80% | F | 40% |
| C | 70% | G | 30% |
| D | 60% | — | — |
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出典:国税庁「路線価図の説明」(2026年)
借地権割合 とは|実家が借地だったときに効く数字
地区区分の記号は図の左上の凡例で確認する
補足路線価図の矢印は、その路線価が適用される範囲を示します。矢印の先端で路線価が切り替わるため、実家の前面がちょうど境目にあるときは図を拡大して確認してください。
倍率地域 調べ方|地方の実家はこちらの確率が高い
倍率方式の実行手順
- rosenka.nta.go.jp で年分→都道府県→「評価倍率表(一般の土地等用)」→市区町村と進む
- 町丁名の行を探し、「宅地」列の数字を読む(例:1.1)。田・畑・山林の列にも別の倍率が並びますが、実家の敷地なら「宅地」列です
- 固定資産税課税明細書を用意し、「価格」または「評価額」欄の金額を読む(課税標準額ではありません)
- 価格 × 倍率で相続税評価額を算出する
課税明細書が見つからないときの取得先
| 書類 | 取得先 | 何が分かるか |
|---|
| 固定資産税課税明細書 | 毎年4〜6月に納税通知書と同封で郵送 | 地番・地積・価格(評価額) |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村役場(東京23区は都税事務所) | 価格。相続人からの請求は戸籍等で相続関係の証明が必要 |
| 名寄帳(固定資産課税台帳の写し) | 同上 | その自治体内の親名義不動産の一覧 |
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注意倍率方式では、固定資産税評価額の中に既に個別事情が織り込まれているため、原則として奥行価格補正や不整形地補正を重ねて適用しません。「補正で下げられるはず」と考えて二重に減額しないよう注意してください。
路線価 計算 相続税|実家3タイプの「通し計算表」
(a)〜(c) 土地評価額を出すまで
| ケース | (a)使う数字と入手元 | (b)基本式 | (c)土地評価額 |
|---|
| ①首都圏近郊の戸建て<br>土地150㎡・路線価250D・奥行20m | 路線価250(=25万円/㎡)はrosenka.nta.go.jp、地積は登記事項証明書 | 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積 | 25万円 × 1.00 × 150㎡ = 3,750万円 |
| ②地方都市の戸建て<br>土地250㎡・路線価85E・奥行25m | 路線価85(=8万5千円/㎡)、地積は課税明細書と登記で照合 | 同上 | 8万5千円 × 1.00 × 250㎡ = 2,125万円 |
| ③倍率地域の実家<br>土地400㎡・固定資産税評価額1,200万円・倍率1.1 | 評価額は課税明細書の「価格」欄、倍率は評価倍率表 | 固定資産税評価額 × 評価倍率 | 1,200万円 × 1.1 = 1,320万円 |
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※奥行価格補正率は地区区分と奥行距離の組み合わせで定められています(国税庁「奥行価格補正率表」財産評価基本通達付表1)。ここでは普通住宅地区で補正率1.00となる範囲と仮定しました。
(d)〜(g) 特例・控除を通した後の相続税額
| ケース | (d)小規模宅地等の特例適用後 | (e)建物+預貯金を加えた課税価格 | (f)基礎控除4,800万円を引いた課税遺産総額 | (g)相続税の総額 |
|---|
| ① | 150㎡は330㎡以内なので全部が80%減<br>3,750万円 ×(1−0.8)= 750万円 | 750万円+建物500万円+預貯金2,500万円=3,750万円 | 0円(基礎控除以下) | 0円 |
| ② | 250㎡は330㎡以内なので全部が80%減<br>2,125万円 ×(1−0.8)= 425万円 | 425万円+建物300万円+預貯金1,800万円=2,525万円 | 0円(基礎控除以下) | 0円 |
| ③ | 330㎡分のみ80%減、70㎡分は減額なし<br>減額分:1,320万円 ×(330/400)×0.8=871.2万円<br>1,320万円−871.2万円= 448.8万円 | 448.8万円+建物400万円+預貯金8,000万円+有価証券3,000万円=1億1,448.8万円 | 1億1,448.8万円−4,800万円=6,648.8万円 | 下記のとおり 約712万円 |
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ケース③の相続税総額の計算過程
| 相続人 | 法定相続分による取得金額 | 税率・控除額 | 算出税額 |
|---|
| 配偶者(1/2) | 3,324.4万円 | 20%・控除200万円 | 464.88万円 |
| 子A(1/4) | 1,662.2万円 | 15%・控除50万円 | 199.33万円 |
| 子B(1/4) | 1,662.2万円 | 15%・控除50万円 | 199.33万円 |
| 相続税の総額 | — | — | 約863.5万円 |
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※実際には配偶者の税額軽減により、配偶者が法定相続分どおり取得すれば納付額は大きく下がります。上表は「総額」であり、各人の納付額ではありません。
この表から読み取るべきこと
- 土地評価額が3,750万円あった①でも、特例と基礎控除で税額0。「路線価×面積が基礎控除を超えたら相続税」は誤りです
- 税額が出た③の決定打は、土地ではなく預貯金8,000万円+有価証券3,000万円です。土地だけ見ていても要否は判定できません
- ③のように330㎡を超える土地は、超過分に特例が効きません。「広い実家ほど有利」ではありません
注意これらは概算モデルです。小規模宅地等の特例には、同居の有無、申告期限までの保有・居住継続など細かい要件があります。また特例で税額0になる場合でも、特例適用には申告書の提出が要件です。「ゼロだから何もしない」は避けてください。
1〜6月に相続が起きた人の「路線価待ち」10か月逆算タイムライン
| 経過月 | やること | 路線価がなくても進められるか | 必要書類・取得先・費用 |
|---|
| 〜3か月 | 相続放棄・限定承認の判断と申述 | ○ | 家庭裁判所へ申述。判断材料として財産の概況が要る |
| 〜4か月 | 準確定申告(被相続人の所得税) | ○ | 源泉徴収票・медиcal費領収書等 |
| 〜4か月 | 所有不動産記録証明書と名寄帳で親名義の不動産を全部洗い出す | ○ | 法務局(窓口1通1,600円)/市区町村 |
| 4〜5月 | 固定資産税課税明細書が届く。紛失時は評価証明書を取得 | ○ | 市区町村(東京23区は都税事務所) |
| 〜6月 | 前年分の路線価図・評価倍率表で仮試算し、基礎控除超えの有無を判定 | ○ | rosenka.nta.go.jp(前年分) |
| 7月初旬 | 当年分の路線価公表 → 評価額を確定。奥行・間口狭小・不整形地・地積規模の大きな宅地の補正を検討 | ×(ここは待つしかない) | rosenka.nta.go.jp(当年分)/公図・地積測量図 |
| 〜9か月 | 遺産分割協議 ※分割は路線価ではなく時価が原則 | ○ | 戸籍一式・遺産分割協議書・印鑑証明 |
| 〜10か月 | 申告・納付、相続登記 | 一部× | 税務署・法務局 |
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注意相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が求められます。申告と登記は別手続きなので、10か月の申告期限とあわせて管理してください。
調べた路線価は「何に使う数字」か|目的別の使い分け
| 目的 | 使う価格 | 根拠・目安 | 注意点 |
|---|
| 相続税の申告 | 相続税路線価(または倍率方式の評価額) | 国税庁 財産評価基準書 | 補正・特例を通した後の額を使う |
| 兄弟間の遺産分割 | 時価が原則 | 成約事例、不動産会社の査定 | 路線価を「実家の価値」として提示すると揉めやすい |
| 売却するかの判断 | 実勢価格 | 路線価÷0.8はあくまで目安 | 個別の物件条件で上下する |
| 固定資産税の検算 | 固定資産税評価額 | 課税明細書、chikamap.jp | 相続税路線価とは別物 |
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注意遺産分割協議で路線価だけを持ち出すと噛み合いません。実家を相続する側は路線価(低め)を、代償金を受け取る側は実勢価格(高め)を主張しがちです。路線価÷0.8の目安と、実際の成約事例の両方を最初にテーブルに載せるほうが早く決着します。
実家が分譲マンションなら|按分だけでは終わらない
過去の路線価 調べ方|9年より前はどこで見るか
過去年分が必要になる場面
- 数年前に済ませた申告を見直したいとき:土地の評価は不整形地補正や特例の適用漏れで結論が動きやすい分野です
- 贈与時の評価額を確認したいとき:相続時精算課税や生前贈与の加算で、当時の評価額が必要になります
- 共有持分の経緯を整理したいとき:過去の分割時にどの水準で評価したかの確認
知っておきたい最近の改正動向
- 貸付用不動産の「5年ルール」:令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日公表)で、相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産は、路線価等ではなく取得価額をベースとした時価で評価する方針が示されました。2027年1月1日以後の相続・贈与から適用予定です
- 課税割合の上昇:令和6年分の相続税の課税割合は10.4%で前年比+0.5ポイント。申告書の提出に係る被相続人数は166,730人、被相続人1人当たりの課税価格は1億4,025万円、税額は1,946万円でした(国税庁、令和7年12月公表)
- 住所等変更登記の義務化:2026年4月1日施行。変更から2年以内の申請義務
注意地価が5年連続で上昇し、課税割合も過去最高を更新しています。「うちは相続税がかからない」という数年前の感覚が、今も当てはまるとは限りません。
やってはいけないNG対応
- 単純計算だけで「かかる/かからない」を決める:補正・特例・基礎控除を通すと結論が反転します。「かからない」と判断して申告しなかった場合のリスクが特に大きいです
- 調べている今年の年分を選ぶ:使うのは相続開始日の属する年分です
- 数字を「円」や「坪単価」として読む:千円単位・1㎡当たりです。「200」は20万円/㎡
- 課税明細書の「課税標準額」に倍率を掛ける:使うのは「価格」「評価額」欄です
- 実家がマンションなのに戸建ての式で計算する:令和6年1月1日以後は区分所有補正率が入ります
- 前面道路に数字がないのを「評価額ゼロ」と解釈する:倍率方式か特定路線価かの分岐です
- 遺産分割協議で路線価を「実家の価値」として提示する:分割は時価が原則です
- 小規模宅地等の特例で0円だから申告不要と考える:特例適用には申告書の提出が要件です
よくある質問
路線価はどこで無料で見られますか?
路線価図 見方で「200E」の意味を教えてください
倍率地域 調べ方はどうすればよいですか?
借地権割合 とは何ですか?実家が借地でも相続財産になりますか
過去の路線価 調べ方を教えてください
路線価 計算 相続税|路線価×面積が基礎控除を超えたら相続税がかかりますか?
1月に親が亡くなりました。路線価の公表を待つと間に合いますか?
まとめ
注意本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務判断を行うものではありません。土地の評価や特例の適用可否は個別事情により異なるため、実際の申告にあたっては税理士に、相続登記については司法書士にご相談ください。制度は改正されることがあるため、最新の取扱いは国税庁サイトでご確認ください。
最終確認日:2026年9月5日
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