遺言書は法務局へ|親に書いてもらう子世代の判断チャートと3,900円の手順
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遺言書は法務局へ|親に書いてもらう子世代の判断チャートと3,900円の手順

親に遺言書を書いてもらいたい。でも「法務局に預ける制度」が本当に使えるのか、公正証書遺言と比べてどうなのか、判断がつかない——そんな方に向けた記事です。

結論から申し上げます。親がご自身で法務局の窓口へ行けて、全文を手書きでき、相続争いの芽が小さいのであれば、自筆証書遺言書保管制度が最有力の選択肢です。費用は保管申請1件3,900円、家庭裁判所の検認も不要です(法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」2026年)。

一方で、法務局が確認するのはあくまで形式面だけです。内容の有効性まで保証されるわけではないため、遺留分を侵害するような分け方や、不動産を1人に集中させる内容であれば、公正証書遺言+専門家への相談のほうが安全とされています。

さらに2026年は制度の転換点です。令和8年3月2日に省令改正が施行され、同年6月24日には民法等の改正法が公布されました。PC作成データを預ける「保管証書遺言」の創設や押印の任意化が決まっていますが、施行日はまだ政令で定められておらず、現時点では使えません。「待つ」判断にはリスクが伴います。

この記事では、子世代が代行できる範囲を明示した逆算チェックリストまで含めて、実務ベースで整理します。

ポイント

判断の軸は3つだけです。①親が窓口に出頭できるか ②全文を手書きできるか ③内容に争いの芽があるか。この3つで、法務局保管・公正証書・待機の3択がほぼ決まります。

遺言書を法務局に預けるとは何か?まず何をすべきか

法務局の自筆証書遺言書保管制度とは、遺言者本人が書いた自筆証書遺言の原本を法務局が保管する制度です。手数料は1件3,900円、相続開始後の家庭裁判所の検認は不要になります

2020年7月10日にスタートし、全国312か所の遺言書保管所(法務局・地方法務局の本局と支局、および東京法務局板橋出張所)で取り扱われています(法務省「07:管轄/遺言書保管所一覧」2026年)。

まず子世代がやるべきことは、次の3ステップです。

  1. 親の状態を確認する — 自力で法務局の窓口まで行けるか、全文を手書きできるかを確かめます。ここが制度利用の可否を分ける最大の関門です。
  2. 財産の全体像を把握する — 不動産の有無、預貯金の口座数、有価証券の有無を洗い出します。不動産があると相続登記の義務(後述)も絡みます。
  3. 相続人の関係性を見極める — 争いの芽があるなら、形式チェックのみの法務局保管では不十分な可能性があります。

制度の利用は増えているが、まだ少数派です

法務局保管の利用は増加基調ですが、公正証書遺言と比べれば規模は小さいのが実情です。

法務省民事局「遺言書保管制度の利用状況」(令和8年7月時点)によると、制度開始から令和8年7月までの保管申請は累計127,253件、現に保管されているのは126,976件です。年間で見ると令和6年23,419件、令和7年22,550件で推移しています。

対して日本公証人連合会の公表では、令和7年(2025年)の遺言公正証書作成件数は123,891件。同じ年の法務局保管(22,550件)の約5.5倍という差があります

ただし2026年に入って明確な増加が見られます。令和8年1〜7月の保管申請は15,513件で、前年同期12,778件の約1.21倍。単月では令和8年7月が2,532件と、制度開始直後の令和2年7月(2,608件)に迫る水準まで戻っています。

補足

「みんなが使っている制度だから安心」という選び方はできない段階です。件数の少なさは制度の欠陥ではなく、認知度と、後述する“出頭要件”のハードルによるところが大きいと考えられます。

保管された遺言書が実際に使われた割合は約1割です

もう一つ、上位の解説記事があまり触れない数字があります。相続開始後に遺言書情報証明書の交付が請求された件数は累計12,890件。保管申請の累計127,253件に対して約10.1%にとどまります(法務省民事局の月次データをもとに筆者が計算)。

これは制度の失敗を意味するものではありません。制度開始から6年しか経っておらず、預けた方の多くがご存命だからです。とはいえ「預けたあと、家族がきちんと動けるか」という論点が残ることは示唆しています。この点は次章で詳しく扱います。

まとめ

法務局保管は3,900円・検認不要で、2026年に利用が伸びている制度です。ただし公正証書遺言の約1/5の規模で、選択肢の一つとして冷静に比較すべき段階にあります。

自筆証書遺言を法務局に預けるデメリットは何か?

自筆証書遺言を法務局に預けるデメリットは何か?

最大のデメリットは遺言者本人が法務局の窓口へ出頭しなければならないことです。入院中・寝たきりの親は利用できず、子が代理申請することもできません。

ここが公正証書遺言との決定的な違いです。公正証書遺言は公証人の出張(病院・自宅・施設への出張)が可能とされていますが、法務局保管制度に出張の仕組みはありません。

デメリット1:本人出頭と予約が必須で、子は同席できません

保管申請は遺言者本人が遺言書保管所に出向いて行います。しかも法務局手続案内予約サービスによる事前予約が必要で、予約は遺言者1人ずつです。

つまり子ができるのは、予約の代行と当日の送迎まで。窓口での手続そのものには関与できません。親が高齢で耳が遠い、書類の受け答えに不安がある、といった場合はここが実務上の壁になります。

デメリット2:法務局は「形式」しか見ません

法務局の遺言書保管官が確認するのは、全文自書・日付・氏名・押印の有無や様式(余白・用紙サイズ等)といった外形的な形式面のみです。

法務局のオンライン手続案内資料(2026年)には、事前チェックについて次のように明記されています。

遺言書の内容についての相談に応じることはできません。また、遺言書の有効性を保証するものでもありません。

この区別は極めて重要です。次のような“中身の欠陥”は、形式が整っていればそのまま保管されます。

  • 遺留分の侵害 — 「長男に全財産」と書けば形式的には通りますが、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
  • 財産の特定不足 — 「自宅は長女に」だけでは、登記上どの不動産かを特定できず手続が滞ることがあります。
  • 遺言執行者の未指定 — 執行者がいないと、預貯金解約などで相続人全員の協力が必要になる場面が出てきます。
注意

「法務局が預かってくれた=有効な遺言書のお墨付きをもらった」ではありません。法務省の案内資料自身が有効性を保証しないと明記しています。内容面の妥当性は、司法書士・弁護士・税理士などの専門家に確認されることをおすすめします。

デメリット3:通知は「自動」では届きません

多くの解説記事は「相続人に通知が届く」とだけ書いていますが、実際は二段構えで、どちらも“誰かが動く”ことが前提です。

通知の種類発動条件見落としやすい点
指定者通知遺言者が保管申請時などに通知先を自分で申し出た場合のみ申し出なければ誰にも通知されません
関係遺言書保管通知相続人等の誰か1人が証明書取得や閲覧をした後誰も法務局に来なければ発動しません

指定者通知は、法務省「10:通知」によれば令和5年10月2日から対象者の範囲の限定が撤廃され、最大3名まで指定できます。すでに1名だけ指定している場合も、変更の届出で追加が可能とされています。

つまり、親が保管申請書の通知先欄を空欄のまま提出し、家族も保管の事実を知らなければ、遺言書は法務局で静かに眠り続けることになります。これは制度の穴ではなく、設計上そうなっているという理解が必要です。

デメリット4:管轄には実務的な落とし穴があります

保管の申請は、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所で行います(法務省「07:管轄」2026年)。ここまでは多くの記事が書いていますが、その先に注意点があります。

  • 2通目以降は1通目と同じ保管所に限定 — 法務省の案内では、既に遺言書を保管している場合、追加の申請はその遺言書を保管している遺言書保管所に対してしなければならないとされています。転居後に近所の法務局へ、というわけにはいきません。
  • 出張所は原則不可 — 遺言書保管事務を扱うのは本局・支局と東京法務局板橋出張所のみです。最寄りが出張所の方は要確認です。
  • 北海道は4管轄に分かれる — 札幌・函館・旭川・釧路の4つに分かれており、道内どこでもよいわけではありません。
まとめ

デメリットは「出頭必須」「形式チェックのみ」「通知は自動ではない」「管轄と2通目の制限」の4つです。いずれも制度を否定するものではなく、事前に知っていれば回避・対処できる性質のものです。

法務局に預ける遺言書の書き方と用紙のダウンロード方法は?

法務局向けの遺言書はA4サイズ・片面のみに記載し、上5mm以上・下10mm以上・左20mm以上・右5mm以上の余白を確保します。専用用紙は法務省サイトから無料でダウンロードできます。

用紙は法務省の「03:遺言書の様式等についての注意事項」ページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html )で配布されており、余白のガイド線が入った様式が用意されています。この用紙のダウンロードと印刷は、子が代行できる数少ない作業の一つです。

様式の必須要件(2026年3月改正を反映)

法務省「03:遺言書の様式等についての注意事項」(2026年)に基づく要件は次のとおりです。

項目要件補足
用紙サイズA4他サイズは不可
記載面片面のみ裏面に書くと保管できません
余白上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上スキャン時に文字が欠けないため
綴じ方ホチキス等で綴じないクリップも外して持参します
ページ番号「1/2」「2/2」形式で記載令和8年3月2日以降、1枚なら不要
財産目録PC作成・通帳コピー可ただし全ページに署名押印が必要

ページ番号の扱いは、2026年3月2日施行の省令改正(令和8年法務省令第8号)で変わった点です。遺言書が1枚だけの場合はページ番号の記載が不要になりました。あわせて申請書・届出書・請求書から記名欄が削除されています(従来様式も引き続き使用できるとされています)。

本文で自書が必要な範囲

本文は全文を親本人が手書きする必要があります。PCで作成できるのは財産目録だけで、その場合も全ページへの署名押印が求められます。

実務上つまずきやすいのは次の点です。

  1. 日付を「令和8年8月吉日」と書く — 日付が特定できず無効となるおそれがあります。「令和8年8月18日」のように年月日を明記します。
  2. 財産の書き方が曖昧 — 不動産は登記事項証明書の記載どおりに所在・地番・家屋番号を書き写します。預貯金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号まで記載すると確実です。
  3. 加除訂正の方式ミス — 民法の定める方式に従った訂正が必要とされており、書き損じたら書き直すほうが安全です。

2026年3月改正:本文に住所を書く際の注意

省令改正でDV被害者等の住所・本籍を証明書や閲覧画面で「-」と非表示にする措置が新設されました(法務省「省令改正の概要」2026年3月)。

ただし遺言書の原本・画像情報そのものは非表示やマスキングができません。したがって、見せたくない住所・本籍がある場合は、そもそも遺言書の本文にそれを書かないという配慮が必要になります。

注意

非表示措置は申請書等の情報が対象で、遺言書の中身は対象外です。DV等の事情がある場合は、申請前に管轄の遺言書保管所へ相談されることをおすすめします。

ポイント

子が代行できるのは「用紙のダウンロードと印刷」「書き方ルールの説明」「登記事項証明書や通帳のコピー準備」まで。本文の執筆と署名押印は親本人しかできません。

遺言書の法務局保管にかかる費用と必要書類は?

費用は保管申請1件につき3,900円のみで、財産額にかかわらず定額です。必要書類は「本籍・筆頭者の記載がある住民票の写し(作成後3か月以内)」と本人確認書類が中心になります。

手数料一覧(法務省 2026年)

法務省「09:自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」(2026年)による手数料は次のとおりです。

手続手数料誰がいつ使うか
遺言書の保管申請1件 3,900円遺言者(生前)
遺言書の閲覧(モニター)1回 1,400円遺言者・相続人等
遺言書の閲覧(原本)1回 1,700円遺言者・相続人等
遺言書情報証明書の交付1通 1,400円相続人等(相続開始後)
遺言書保管事実証明書の交付1通 800円相続人等(相続開始後)
申請書等の閲覧1回 1,700円相続人等
撤回・変更の届出無料遺言者

注目すべきは撤回・変更の届出が無料である点です。住所や氏名が変わったとき、指定者通知の対象者を追加したいときに費用はかかりません。「通知先を後から3名まで増やせる」うえに無料なので、預けたあとに家族構成が変わっても対応できます。

手数料は収入印紙で納付します。当日は法務局内や近隣の郵便局等で購入することになるため、事前に用意しておくと安心です。

保管申請に必要な書類

  1. 遺言書の原本(ホチキス留めしない、封筒不要)
  2. 保管申請書(法務省サイトからダウンロード可、記載例も公開されています)
  3. 本籍・筆頭者の記載がある住民票の写し(作成後3か月以内のもの)
  4. 顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  5. 手数料3,900円分の収入印紙

住民票の写しは、同一世帯であれば子が代理で取得できる場合があります。マイナンバーカードがあればコンビニ交付も利用できます。3か月の有効期限があるため、取得のタイミングは予約日から逆算してください。

相続開始後にかかる費用の現実

親が亡くなった後、相続人側で発生する費用も見ておきましょう。金融機関や法務局での手続に使う遺言書情報証明書は1通1,400円です。

複数の金融機関や不動産の相続登記で並行して使いたい場合、原本還付を受けながら回すか、必要通数を取得するかを検討することになります。公正証書遺言の謄本取得と比べて、極端に高いわけではありません。

補足

2026年3月の省令改正により、指定者通知や関係遺言書保管通知が既にされている等の場合、遺言書保管事実証明書の交付請求などで「遺言者の最後の住所・本籍・死亡年月日」の記載と、除籍謄本等の死亡を証明する書類の添付を省略できるようになりました(法務省「省令改正の概要」P5-6)。相続開始後の負担が確実に軽くなっています。

まとめ

生前3,900円、相続開始後は証明書1通1,400円が基本線です。撤回・変更が無料なので、「まず預けて、状況が変わったら直す」という運用がしやすい設計になっています。

いま預けるべきか?公正証書か?改正法を待つか?(判断チャート)

親が窓口に出頭でき、全文手書きができ、争いの芽が小さいなら「いま法務局に預ける」が最適解です。どれか一つでも欠けるなら公正証書遺言を検討します。

2026年6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)により、将来はPC作成データを預ける「保管証書遺言」や押印の任意化、オンライン申請が実現します。ただし施行日はいずれも政令で定める日とされており、現時点では使えません

3択の判断チャート

上から順に判定してください。

Q1. 親は自力で(または付き添いで)法務局の窓口まで行けますか?

  • いいえ公正証書遺言へ。法務局保管に出張制度はありませんが、公正証書遺言は公証人の出張が可能とされています。
  • 費用:財産額に応じた公証人手数料+出張日当・交通費+証人2名の手配費用/本人の出頭:不要(出張可)/検認:不要
  • はい → Q2へ

Q2. 親は遺言の全文を手書きできますか?(財産目録以外は自書が必須です)

  • いいえ(手の震え・視力・体力等) → 公正証書遺言へ。公証人が本人の口述に基づき作成します。
  • 費用:公証人手数料+証人2名/本人の出頭:公証役場または出張/検認:不要
  • はい → Q3へ

Q3. 遺言の内容に争いの芽がありますか?(①相続人の1人に不動産を集中させる ②推定相続人以外への遺贈がある ③遺留分を侵害する、のいずれか)

  • はい公正証書遺言+専門家相談へ。法務局は形式しか見ないため、内容面のリスクは残ります。
  • 費用:公証人手数料+専門家報酬/本人の出頭:公証役場(出張可)/検認:不要
  • いいえ → Q4へ

Q4. 親が80歳未満で健康、かつ「押印なし・PCで書ける方式」を強く望んでいますか?

  • はい改正法の施行を待つ選択肢もあります。押印の任意化は公布から1年以内(〜2027年6月24日)、保管証書遺言の創設と保管制度のオンライン化は3年以内(〜2029年6月24日)に施行される予定です。
  • 費用:未定/本人の出頭:オンライン申請・ウェブ会議で可能になる見込み/検認:不要
  • いいえいまの法務局保管制度が最適です(費用3,900円/本人の出頭:必須・予約制/検認:不要)
注意

Q4で「待つ」を選ぶ場合、施行日はまだ政令で定められていません。「3年以内」は上限であり、親の健康状態が3年後も同じである保証はどこにもありません。待つ判断は、健康で若く、内容も固まっていない場合に限るのが安全とされています。なお、いま法務局に預けても、後で撤回の届出(無料)をして新方式に切り替えることは可能です。

3方式の比較表

比較項目法務局保管(現行)公正証書遺言保管証書遺言(2029年までに施行予定)
作成方法全文自書(財産目録のみPC可)公証人が本人の口述に基づき作成PC等でデータ作成可
本人の出頭必須・予約制公証人の出張が可能オンライン申請・ウェブ会議可の予定
押印必要必要改正後は任意化
費用3,900円(定額)財産額に応じた公証人手数料+証人手配未定
証人不要2人必要不要
検認不要不要不要
有効性のチェック形式のみ(法務省が「有効性を保証しない」と明記)公証人が内容にも関与保管官が本人確認+全文口述
相続人への通知指定者通知(最大3名)+関係遺言書保管通知なし(遺言検索システムで照会)指定者に通知
使えない人出頭できない人・手書きできない人特になし未定

※保管証書遺言の列は、法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(2026年)の概要に基づく見込みです。施行日は政令で未定(公布から3年以内)であり、運用の詳細は今後の政省令で定まります。

ポイント

迷ったときの実務的な落としどころは「いま3,900円で法務局に預けて、内容に不安があれば専門家に見てもらう」です。撤回は無料なので、後から公正証書に切り替える余地も残ります。

親の遺言書を預ける当日までの逆算チェックリスト

準備期間は3週間を見ておくと安全です。子が代行できるのは書類取得・用紙準備・予約まで。本文の執筆と当日の手続は親本人しかできません。

以下、「👤親のみ」「👨‍👩‍👦子が代行可」を明示したチェックリストです。

3週間前:保管所と書類の確定

#やること担当
1預ける遺言書保管所を決める(住所地・本籍地・所有不動産所在地の管轄/2通目以降は1通目と同じ保管所/出張所は板橋のみ/北海道は札幌・函館・旭川・釧路の4管轄)👨‍👩‍👦 子が代行可
2本籍・筆頭者記載の住民票の写しを取得(作成後3か月以内)👨‍👩‍👦 子が代行可(同一世帯の場合等)
3不動産の登記事項証明書・預貯金通帳のコピーを集める👨‍👩‍👦 子が代行可

2週間前:遺言書の作成

#やること担当
4法務省サイトからA4様式(余白:上5・下10・左20・右5mm)をダウンロードして印刷👨‍👩‍👦 子が代行可
5遺言書の本文を全文手書きする(日付は年月日を明記)👤 親のみ
6財産目録をPCで作成し、全ページに署名押印目録作成は👨‍👩‍👦/署名押印は👤
7指定者通知の対象者を最大3名決める(空欄だと死後に誰にも通知が飛びません)親子で相談

1週間前:事前チェックと予約

#やること担当
8対象地域なら電子メールで保管申請の事前チェックを依頼(39都道府県・79遺言書保管所で実施中)👨‍👩‍👦 子が送信代行可
9法務局手続案内予約サービスで予約(遺言者1人ずつ)👨‍👩‍👦 子が代行可
10収入印紙3,900円分を準備👨‍👩‍👦 子が代行可

事前チェックは、法務局「遺言書保管制度のオンライン手続の試行を実施中です!」(2026年)で案内されている試行サービスです。提出書類の写しを電子メールで事前送付し、形式面をチェックしてもらえます。当日の差し戻しリスクを下げられる、子世代にとって最も価値のある新サービスといえます。

ただし事前チェックを受けても、遺言者本人の出頭は従来どおり必要です。内容の相談には応じてもらえず、有効性の保証もありません。

当日:本人のみで手続

#やること担当
11遺言書原本(ホチキス留めしない)・申請書・住民票・顔写真付き本人確認書類・収入印紙を持参👤 親のみ入室
12保管証を受け取る👤 親のみ

当日以降:家族への共有

#やること担当
13保管証に記載された保管番号を家族で共有する(証明書請求時に手続がスムーズになります)親子で共有
14不動産があるなら相続登記の義務を家族で確認する👨‍👩‍👦 子が主導

14番について補足します。法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」(2024年)によれば、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続により不動産を取得した相続人は所有権の取得を知った日から3年以内に申請する義務を負います。正当な理由なく違反すると10万円以下の過料の適用対象となります。遺言書を預けて安心するのではなく、相続開始後の登記までを見据えておくことが大切です。

ポイント

保管証は再発行されないとされています。番号を控えて家族で共有しておくこと、そして「法務局に預けた」という事実自体を家族に伝えておくことが、通知の二段構えを補う最も確実な手段です。

やってはいけないNG対応

最大のNGは「子が親の代わりに書く・代わりに申請する」ことです。代筆した遺言書は自筆証書遺言として無効になり、場合によっては相続人としての資格を失うおそれもあります。

NG1:子が代筆する・下書きを親に清書させる

自筆証書遺言は全文の自書が要件です。子が代筆すれば無効です。

では「子が下書きを作り、親が丸写しする」のはどうか。形式上は自書ですが、親の真意に基づかない内容であれば、後日「遺言能力がなかった」「不当な働きかけがあった」として争われる火種になります。子は情報提供と選択肢の整理にとどめるのが安全です。

NG2:ホチキスで綴じる・封筒に入れる

法務局保管では、複数ページでもホチキス等で綴じてはいけません(法務省「03:遺言書の様式等についての注意事項」2026年)。封筒も不要です。当日窓口で外すことになり、遺言書を傷めるおそれもあります。

NG3:指定者通知の欄を空欄で提出する

前述のとおり、指定者通知は自分で申し出なければ発動しません。ここを空欄にすると、相続人の誰かが自主的に法務局へ照会しない限り、遺言書は発見されないまま時間が過ぎます。最大3名まで指定できるので、配偶者・長男・長女のように複数指定しておくのが実務上の安全策です。

NG4:改正法を「なんとなく」待つ

押印の任意化は2027年6月24日まで、保管証書遺言の創設は2029年6月24日までに施行される予定ですが、いずれも政令で定める日であり、確定していません。親が80代であったり、健康に不安があったりする場合、待っている間に「書けない・行けない」状態になるリスクのほうが大きいと考えられます。

NG5:法務局に内容の相談を持ち込む

遺言書保管官は内容の相談には応じられません。「この分け方で揉めませんか」「遺留分は大丈夫ですか」といった質問は、司法書士・弁護士・税理士など専門家の領域です。窓口で相談しようとして時間を浪費しないよう、役割分担を理解しておきましょう。

注意

遺言書の内容や相続税の試算については、必ず司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご確認ください。この記事は制度の仕組みを整理したものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。

公的情報の見解と、2026年の制度変更まとめ

2026年は法務局の遺言書保管制度にとって転換の年です。3月に省令改正が施行され、6月には保管証書遺言の創設を含む民法等改正法が公布されました。

多くの民間解説記事は改正前の前提のまま書かれているため、情報の鮮度に注意が必要です。ここで一次情報に基づいて整理します。

2026年3月2日施行:省令改正(令和8年法務省令第8号)

法務省「『法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部を改正する省令』の概要」(2026年)によると、主な改正点は3つです。

  1. DV被害者等の住所等の非表示措置の新設 — 遺言書情報証明書や閲覧画面で住所・本籍を「-」と表示できます(遺言書原本・画像は対象外)。
  2. 請求書の記載事項・添付書類の省略範囲の拡大 — 遺言者の最後の住所・本籍・死亡年月日の記載省略、死亡を証明する書類の添付省略が可能になりました。
  3. 様式の簡素化 — 申請書等から記名欄を削除、遺言書が1枚の場合はページ番号の記載が不要になりました(従来様式も引き続き使用可)。

2026年6月24日公布:民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)

令和8年6月17日成立、6月24日公布。法務省「改正法の概要」(2026年)による主な内容は次のとおりです。

  • 保管証書遺言の創設 — PC等で作成したデータを法務局に提供し、本人が対面またはウェブ会議で全文を口述して保管する新方式。
  • 自筆証書遺言等の押印の任意化
  • 自筆証書遺言書保管制度のデジタル化 — オンラインによる保管申請・証明書交付請求、ウェブ会議を利用した手続を可能に。

施行日は、押印の任意化等が公布から1年以内、保管証書遺言の創設等システム改修を要するものが3年以内で、いずれも政令で定める日とされています。

オンライン手続の試行状況(2026年2月時点)

法務局のリーフレット(2026年)によると、試行は2段階で進んでいます。

  • 試行1:保管申請の事前チェック — 提出書類の写しを電子メールで事前送付し形式面をチェック。39都道府県・79遺言書保管所で実施中。
  • 試行2:変更の届出のメール提出 — 東京法務局本局で実施中。

第1段階は令和7年3月10日に東京法務局本局中心で開始され、そこから全国規模に拡大しました。デジタル化は法改正の施行を待たずに、運用面から少しずつ進んでいるといえます。

まとめ

「使い勝手は年々良くなっているが、本丸のオンライン化は2029年まで待つ可能性がある」——これが2026年8月時点の到達点です。親の年齢と健康状態を軸に、待つか動くかを判断してください。

よくある質問

Q. 遺言書を法務局に預ける費用は結局いくらですか?

保管申請は1件3,900円のみで、財産額に関係なく定額です。撤回・変更の届出は無料です。相続開始後、相続人が遺言書情報証明書を取得する場合は1通1,400円、遺言書保管事実証明書は1通800円かかります(法務省「手数料一覧」2026年)。手数料は収入印紙で納めます。

Q. 子どもが親の代わりに保管申請できますか?

できません。保管申請は遺言者本人が遺言書保管所に出頭して行う必要があります。代理申請は認められておらず、当日窓口に子が同席することもできません(手続の予約は遺言者1人ずつです)。子が代行できるのは、住民票の取得、法務省サイトからの様式ダウンロード、予約サービスでの予約、事前チェック用メールの送信までです。

Q. 法務局が保管してくれれば、遺言書は確実に有効になりますか?

なりません。法務局が確認するのは形式面のみです。法務局の案内資料には「遺言書の有効性を保証するものでもありません」と明記されています。全文自書・日付・氏名・押印・様式といった外形要件は見ますが、遺留分の侵害、財産の特定不足、遺言執行者の未指定といった内容面の問題はそのまま保管されます。内容の妥当性は司法書士・弁護士等にご相談ください。

Q. 法務局の遺言書用紙はどこからダウンロードできますか?

法務省の「03:遺言書の様式等についての注意事項」ページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html )から無料でダウンロードできます。A4サイズ・片面のみ・余白(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上)の要件を満たすガイド線入りの様式が用意されています。市販の便箋やコピー用紙でも要件を満たせば使用できますが、余白の測り間違いを避ける意味でも公式様式の利用が確実です。印刷までは子が代行できます。

Q. 押印が不要になると聞きましたが、いま押印なしで預けられますか?

預けられません。押印の任意化は令和8年6月24日公布の改正法の内容で、施行日は政令で定める日(公布から1年以内)とされています。2026年8月時点では現行ルールどおり押印が必要です。同様に、PC作成データを預ける「保管証書遺言」やオンライン申請も公布から3年以内の施行予定で、まだ利用できません。

Q. 保管した遺言書は、親が亡くなったら自動で家族に通知されますか?

自動では届きません。通知は二段構えです。①指定者通知は、遺言者が保管申請時等に通知先を申し出た場合のみ発動します(令和5年10月2日から最大3名まで指定可)。②関係遺言書保管通知は、相続人等の誰か1人が証明書の取得や閲覧をして初めて、他の相続人に通知が飛びます。どちらも申し出や行動が前提なので、指定者通知の欄を必ず埋め、保管の事実と保管番号を家族で共有しておくことが最も確実です。

まとめ:まずやるべき3つのこと

  1. 親の状態を確認する — 窓口に出頭できるか、全文を手書きできるか。この2点が制度利用の可否を決めます。
  2. 内容に争いの芽がないかを見極める — 不動産の集中、推定相続人以外への遺贈、遺留分の侵害があれば、公正証書遺言+専門家相談を検討してください。
  3. 動くなら3週間前から準備を始める — 住民票の取得、様式のダウンロード、指定者通知3名の決定、予約。子が代行できる部分は先回りしておきます。

2026年は制度が動いている年です。押印の任意化やオンライン化は確かに便利になりますが、施行日は政令で未定であり、待つことにはリスクが伴います。親の年齢と健康状態を最優先の判断材料にしてください。

遺言の内容、相続税、遺留分の計算については、司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。制度の詳細や最新の運用は、必ず法務省・法務局の公式サイトでご確認をお願いします。

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最終確認日:2026年8月18日

主な参照先

  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
  • 法務省「09:手数料一覧」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00010.html
  • 法務省「07:管轄/遺言書保管所一覧」 https://www.moj.go.jp/MINJI/07.html
  • 法務省「03:遺言書の様式等についての注意事項」 https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html
  • 法務省「10:通知」 https://www.moj.go.jp/MINJI/10.html
  • 法務省民事局「遺言書保管制度の利用状況」(令和8年7月時点) https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/number.pdf
  • 法務省「省令改正の概要」(令和8年3月2日) https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/20260302.pdf
  • 法務省「民法等の一部を改正する法律について」 https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf
  • 法務局「遺言書保管制度のオンライン手続の試行」 https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/jizenkakunin.pdf
  • 日本公証人連合会「令和7年の遺言公正証書作成件数について」 https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/yuigon2025.html
  • 法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00590.html

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