遺産分割ともめ事

相続廃除とは?認められるのは約2割|親の相続に備える40代からの基礎

親の相続で「この子には渡したくない」と悩む40〜60代向けです。相続廃除の要件と手続き、2025年の司法統計で認容は既済の約21%という現実、孫が代襲相続するときの計算例、遺言など代わりの手段まで整理します。

相続廃除とは?認められるのは約2割|親の相続に備える40代からの基礎
まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
注意

結論は家族の構成や財産、いきさつで変わります。動く前に弁護士・司法書士・税理士へ相談してください。

相続廃除とは?定義をひとことで

  • 推定相続人:いま相続が起きたら相続人になる人です。
  • 遺留分:遺言があっても請求できる最低限の取り分です。

相続廃除の仕組み:どんな場合に認められる?

相続廃除の仕組み:どんな場合に認められる?

認められる理由は3つ

  1. 虐待:親への暴力や、生活を脅かす扱い
  2. 重大な侮辱:親の名誉や気持ちをひどく傷つける言動
  3. その他の著しい非行:財産の使い込みや、親に大きな負担をかける犯罪など

判断で考慮されやすい事情

認められる方向に働きやすい事情認められにくい方向に働きやすい事情
暴力や暴言が長く繰り返されている一度きりの口論やけんか
親の預金を無断で引き出し、多額に使い込んだ親が同意していた援助や貸し借り
診断書・警察の相談記録などの客観的な証拠がある親の話だけで、裏づけの記録がない
親の側にこれといった落ち度がない対立のきっかけが親の側にもある
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廃除が決まると何が起きる?

  • 廃除された人は相続人になれず、遺留分の請求もできなくなります。
  • 申立人は審判確定から10日以内に市区町村へ廃除届を出し、廃除は戸籍に記載されます(大阪市「推定相続人廃除届」)。
  • 廃除された人に子がいれば、その子が代わりに相続します(民法887条2項)。
  • 親はいつでも取消しを家庭裁判所に請求できます(民法894条)。

なぜ相続廃除が重要?最新の司法統計で見る現実

2024年と2025年の数字

項目2024年(令和6年)2025年(令和7年)
受理総数(旧受+新受)333件(131+202)301件(123+178)
既済(終わった事件)210件223件
認容49件(約23.3%)47件(約21.1%)
却下88件(約41.9%)107件(約48.0%)
取下げ69件(約32.9%)66件(約29.6%)
その他4件3件
未済(翌年へ持ち越し)123件78件
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数字を読むときの注意

  • 分母のちがい:受理総数301件を分母にすると、2025年の認容は約15.6%です。
  • 取消しも含む:「廃除」と「廃除の取消し」の合計です。
  • 取下げの理由は不明:統計からは理由はわかりません。

相続廃除の種類:生前廃除と遺言による廃除

比べる点生前廃除(892条)遺言廃除(893条)
申し立てる人親本人遺言執行者
申し立てる家庭裁判所親の住所地相続が開始した地
親が事情を説明できるかできるできない(書面や証拠が頼り)
効力が生じる時点審判の確定時親の死亡時にさかのぼる
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遺言廃除は書き方と証拠がカギ

  • 「長男〇〇を廃除する」と相手と意思をはっきり書き、具体的な事情と時期も書く
  • 遺言執行者を指定し、証拠の保管場所を伝えておく
  • 方式の不備を避けるため、公正証書遺言や法務局での保管も検討する

2026年の遺言制度の改正

相続廃除のメリットは?

  • 遺留分まで消せる:遺言だけでは遺留分の請求が残りますが、廃除が認められれば本人は請求できません。
  • 公的な記録になる:廃除届により戸籍に記載されます。
  • やり直しができる:関係が修復したら取消しを請求できます(民法894条)。

相続廃除のデメリット・注意点

  • 認められにくい:2025年は既済の約48%が却下でした。
  • 孫が代襲相続する:子がいれば、取り分と遺留分を引き継ぎます。
  • 証拠集めが大変:客観的な記録が求められます。
  • 対立が深まる:審判では相手も反論できます。
  • 審判中の財産の扱い:確定までの遺産の管理が問題になります(民法895条)。

具体例:相続廃除で孫が代襲相続すると取り分はいくら?

ケース配偶者次男長男長男の子(孫)
① 廃除しない(法定相続分)1/2=2,000万円1/4=1,000万円1/4=1,000万円なし
① の遺留分1,000万円500万円500万円なし
② 長男を廃除・孫あり2,000万円1,000万円0円1/4=1,000万円
③ ②+「全財産を配偶者と次男へ」の遺言遺言どおり遺言どおり0円遺留分500万円を請求できる
④ 長男を廃除・長男に子なし1/2=2,000万円1/2=2,000万円0円なし
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相続廃除の手続きの流れと集めておく証拠

A:親が元気なうちに準備するもの

  • [ ] けがの診断書・写真、警察やDV窓口への相談記録
  • [ ] 暴言の録音、メール、LINE
  • [ ] 無断の引出しがわかる通帳・取引履歴
  • [ ] ケアマネジャーなど第三者の見聞きしたメモ
  • [ ] いつ・何が起きたかの時系列メモ

B:遺言廃除で子が遺言執行者になるときの手順

  1. 遺言書の検認:自筆の遺言書は最後の住所地の家裁で検認を受けます(印紙800円)。公正証書遺言と法務局保管の遺言は不要です(裁判所「遺言書の検認」)。
  2. 遺言執行者の選任:指定がなければ最後の住所地の家裁に申し立てます(印紙800円、裁判所「遺言執行者の選任」)。
  3. 廃除の申立て:相続が開始した地の家裁へ(印紙1名800円+切手)。
  4. 遺産の管理(必要なとき):確定までの管理の処分を求められます(民法895条)。
  5. 廃除届:確定から10日以内に本籍地か届出人の所在地の市区町村へ。審判書謄本と確定証明書が必要です(大阪市「推定相続人廃除届」)。

費用と書類の目安

項目目安
収入印紙推定相続人1名につき800円
郵便切手合計3,098円(名古屋家裁の例。裁判所ごとに異なる)
主な添付書類戸籍謄本、遺言書の写し、遺言執行者選任の審判書謄本、廃除の原因を示す資料
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相続廃除と相続欠格の違いは?代わりの手段とも比べる

比べる点相続廃除相続欠格
根拠民法892条・893条民法891条
主な理由虐待・重大な侮辱・著しい非行親を死亡させ刑に処せられた、遺言書の偽造・隠匿など
親の意思必要(請求する)不要(当然に失う)
孫の代襲相続起きる(887条2項)起きる(887条2項)
取消しできる(894条)民法に取消しの規定はない
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相続放棄との違い(代襲と基礎控除)

  • 代襲相続:廃除では孫が代襲します。放棄は民法887条2項の代襲原因に入っていないので、代襲しません。
  • 相続税の基礎控除の人数:基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。廃除された人は数えず、代襲する孫がいれば孫を数えます。放棄した人は、放棄がなかったものとして数えます(国税庁相続税法基本通達15-2・タックスアンサーNo.4152)。この人数は相続税の計算用で、誰が財産を受け継ぐかを決めるものではありません。

特定の子に渡さない7つの手段を比較

手段誰が動くか家裁の関与遺留分を消せるか孫の代襲相続確実性
相続廃除(生前)親本人審判が必要認容されれば消える起きる低め(認容は既済の約21%)
相続廃除(遺言)遺言執行者審判が必要認容されれば消える起きる低め。親の説明が聞けない
遺留分を考えた遺言親本人不要(自筆証書は検認)消せない子が先に亡くなれば孫が相続遺留分の分は残る
生前贈与親本人不要消せない(相続人への贈与は原則10年分が算入・民法1044条)直接の関係なし遺留分の請求は残りうる
生命保険の受取人指定親本人不要保険金は原則として受取人固有の財産受取人の指定しだい著しい不公平なら例外あり
遺留分の放棄渡したくない子本人許可が必要本人の分は消える孫への影響は専門家に確認本人の同意しだい
相続欠格(891条)誰も申し立てない不要資格ごと失う起きる891条の事由に当たる場合だけ
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まとめ:相続廃除は「通らなかったとき」まで考えておく

最終確認日:2026年11月2日

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