まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
注意
結論は家族の構成や財産、いきさつで変わります。動く前に弁護士・司法書士・税理士へ相談してください。
相続廃除とは?定義をひとことで
- 推定相続人:いま相続が起きたら相続人になる人です。
- 遺留分:遺言があっても請求できる最低限の取り分です。
相続廃除の仕組み:どんな場合に認められる?

認められる理由は3つ
- 虐待:親への暴力や、生活を脅かす扱い
- 重大な侮辱:親の名誉や気持ちをひどく傷つける言動
- その他の著しい非行:財産の使い込みや、親に大きな負担をかける犯罪など
判断で考慮されやすい事情
| 認められる方向に働きやすい事情 | 認められにくい方向に働きやすい事情 |
|---|---|
| 暴力や暴言が長く繰り返されている | 一度きりの口論やけんか |
| 親の預金を無断で引き出し、多額に使い込んだ | 親が同意していた援助や貸し借り |
| 診断書・警察の相談記録などの客観的な証拠がある | 親の話だけで、裏づけの記録がない |
| 親の側にこれといった落ち度がない | 対立のきっかけが親の側にもある |
廃除が決まると何が起きる?
- 廃除された人は相続人になれず、遺留分の請求もできなくなります。
- 申立人は審判確定から10日以内に市区町村へ廃除届を出し、廃除は戸籍に記載されます(大阪市「推定相続人廃除届」)。
- 廃除された人に子がいれば、その子が代わりに相続します(民法887条2項)。
- 親はいつでも取消しを家庭裁判所に請求できます(民法894条)。
なぜ相続廃除が重要?最新の司法統計で見る現実
2024年と2025年の数字
| 項目 | 2024年(令和6年) | 2025年(令和7年) |
|---|---|---|
| 受理総数(旧受+新受) | 333件(131+202) | 301件(123+178) |
| 既済(終わった事件) | 210件 | 223件 |
| 認容 | 49件(約23.3%) | 47件(約21.1%) |
| 却下 | 88件(約41.9%) | 107件(約48.0%) |
| 取下げ | 69件(約32.9%) | 66件(約29.6%) |
| その他 | 4件 | 3件 |
| 未済(翌年へ持ち越し) | 123件 | 78件 |
数字を読むときの注意
- 分母のちがい:受理総数301件を分母にすると、2025年の認容は約15.6%です。
- 取消しも含む:「廃除」と「廃除の取消し」の合計です。
- 取下げの理由は不明:統計からは理由はわかりません。
相続廃除の種類:生前廃除と遺言による廃除
| 比べる点 | 生前廃除(892条) | 遺言廃除(893条) |
|---|---|---|
| 申し立てる人 | 親本人 | 遺言執行者 |
| 申し立てる家庭裁判所 | 親の住所地 | 相続が開始した地 |
| 親が事情を説明できるか | できる | できない(書面や証拠が頼り) |
| 効力が生じる時点 | 審判の確定時 | 親の死亡時にさかのぼる |
遺言廃除は書き方と証拠がカギ
- 「長男〇〇を廃除する」と相手と意思をはっきり書き、具体的な事情と時期も書く
- 遺言執行者を指定し、証拠の保管場所を伝えておく
- 方式の不備を避けるため、公正証書遺言や法務局での保管も検討する
2026年の遺言制度の改正
相続廃除のメリットは?
- 遺留分まで消せる:遺言だけでは遺留分の請求が残りますが、廃除が認められれば本人は請求できません。
- 公的な記録になる:廃除届により戸籍に記載されます。
- やり直しができる:関係が修復したら取消しを請求できます(民法894条)。
相続廃除のデメリット・注意点
- 認められにくい:2025年は既済の約48%が却下でした。
- 孫が代襲相続する:子がいれば、取り分と遺留分を引き継ぎます。
- 証拠集めが大変:客観的な記録が求められます。
- 対立が深まる:審判では相手も反論できます。
- 審判中の財産の扱い:確定までの遺産の管理が問題になります(民法895条)。
具体例:相続廃除で孫が代襲相続すると取り分はいくら?
| ケース | 配偶者 | 次男 | 長男 | 長男の子(孫) |
|---|---|---|---|---|
| ① 廃除しない(法定相続分) | 1/2=2,000万円 | 1/4=1,000万円 | 1/4=1,000万円 | なし |
| ① の遺留分 | 1,000万円 | 500万円 | 500万円 | なし |
| ② 長男を廃除・孫あり | 2,000万円 | 1,000万円 | 0円 | 1/4=1,000万円 |
| ③ ②+「全財産を配偶者と次男へ」の遺言 | 遺言どおり | 遺言どおり | 0円 | 遺留分500万円を請求できる |
| ④ 長男を廃除・長男に子なし | 1/2=2,000万円 | 1/2=2,000万円 | 0円 | なし |
相続廃除の手続きの流れと集めておく証拠
A:親が元気なうちに準備するもの
- [ ] けがの診断書・写真、警察やDV窓口への相談記録
- [ ] 暴言の録音、メール、LINE
- [ ] 無断の引出しがわかる通帳・取引履歴
- [ ] ケアマネジャーなど第三者の見聞きしたメモ
- [ ] いつ・何が起きたかの時系列メモ
B:遺言廃除で子が遺言執行者になるときの手順
- 遺言書の検認:自筆の遺言書は最後の住所地の家裁で検認を受けます(印紙800円)。公正証書遺言と法務局保管の遺言は不要です(裁判所「遺言書の検認」)。
- 遺言執行者の選任:指定がなければ最後の住所地の家裁に申し立てます(印紙800円、裁判所「遺言執行者の選任」)。
- 廃除の申立て:相続が開始した地の家裁へ(印紙1名800円+切手)。
- 遺産の管理(必要なとき):確定までの管理の処分を求められます(民法895条)。
- 廃除届:確定から10日以内に本籍地か届出人の所在地の市区町村へ。審判書謄本と確定証明書が必要です(大阪市「推定相続人廃除届」)。
費用と書類の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 収入印紙 | 推定相続人1名につき800円 |
| 郵便切手 | 合計3,098円(名古屋家裁の例。裁判所ごとに異なる) |
| 主な添付書類 | 戸籍謄本、遺言書の写し、遺言執行者選任の審判書謄本、廃除の原因を示す資料 |
相続廃除と相続欠格の違いは?代わりの手段とも比べる
| 比べる点 | 相続廃除 | 相続欠格 |
|---|---|---|
| 根拠 | 民法892条・893条 | 民法891条 |
| 主な理由 | 虐待・重大な侮辱・著しい非行 | 親を死亡させ刑に処せられた、遺言書の偽造・隠匿など |
| 親の意思 | 必要(請求する) | 不要(当然に失う) |
| 孫の代襲相続 | 起きる(887条2項) | 起きる(887条2項) |
| 取消し | できる(894条) | 民法に取消しの規定はない |
相続放棄との違い(代襲と基礎控除)
- 代襲相続:廃除では孫が代襲します。放棄は民法887条2項の代襲原因に入っていないので、代襲しません。
- 相続税の基礎控除の人数:基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。廃除された人は数えず、代襲する孫がいれば孫を数えます。放棄した人は、放棄がなかったものとして数えます(国税庁相続税法基本通達15-2・タックスアンサーNo.4152)。この人数は相続税の計算用で、誰が財産を受け継ぐかを決めるものではありません。
特定の子に渡さない7つの手段を比較
| 手段 | 誰が動くか | 家裁の関与 | 遺留分を消せるか | 孫の代襲相続 | 確実性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 相続廃除(生前) | 親本人 | 審判が必要 | 認容されれば消える | 起きる | 低め(認容は既済の約21%) |
| 相続廃除(遺言) | 遺言執行者 | 審判が必要 | 認容されれば消える | 起きる | 低め。親の説明が聞けない |
| 遺留分を考えた遺言 | 親本人 | 不要(自筆証書は検認) | 消せない | 子が先に亡くなれば孫が相続 | 遺留分の分は残る |
| 生前贈与 | 親本人 | 不要 | 消せない(相続人への贈与は原則10年分が算入・民法1044条) | 直接の関係なし | 遺留分の請求は残りうる |
| 生命保険の受取人指定 | 親本人 | 不要 | 保険金は原則として受取人固有の財産 | 受取人の指定しだい | 著しい不公平なら例外あり |
| 遺留分の放棄 | 渡したくない子本人 | 許可が必要 | 本人の分は消える | 孫への影響は専門家に確認 | 本人の同意しだい |
| 相続欠格(891条) | 誰も申し立てない | 不要 | 資格ごと失う | 起きる | 891条の事由に当たる場合だけ |
まとめ:相続廃除は「通らなかったとき」まで考えておく
最終確認日:2026年11月2日




