相続の仮払い制度|上限150万円を親の口座から出す2週間の手順
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相続の仮払い制度|上限150万円を親の口座から出す2週間の手順

まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
注意

仮払いで受け取ったお金は、使い方によっては相続を承認したとみなされる可能性があるとされています。借金の有無がはっきりしないうちは、動く前に弁護士や司法書士への相談をご検討ください。

結論|相続の仮払い制度は「放棄の確認→計算→約2週間で着金」の順に進めます

  1. 相続放棄の可能性を確認する。借金や連帯保証が心配なら、お金を動かす前にいったん止まります。判断がつかないときは、相続の開始を知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります(裁判所)。
  2. 引き出せる額を計算する。「残高×3分の1×法定相続分」を口座ごとに出し、金融機関ごとに150万円の上限をかぶせます。
  3. 必要書類を集める。戸籍の収集がいちばん時間を食います。ここが全体の所要日数を決めます。
  4. 金融機関の窓口で請求する相続手続きの担当部署に取り次がれ、書類の審査が入ります。
  5. 着金を確認し、領収書を保管する。何にいくら使ったかを残すことが、後の遺産分割と放棄の判断を守ります。

そもそも相続の仮払い制度とは?2019年に始まった単独払戻しの仕組み

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口座はいつ凍結されるのでしょうか

補足

凍結される前に引き出しておけばよい、という考え方は危険です。遺産を勝手に使った扱いになり、あとの遺産分割でもめる原因になります。引き出しの記録は通帳に必ず残ります

払戻しには2つのルートがあります

  • ①金融機関の窓口で単独請求(民法909条の2)。家庭裁判所の判断を経ずに請求できますが、同じ金融機関につき150万円が限度です。
  • ②家庭裁判所の預貯金債権の仮分割の仮処分(家事事件手続法200条3項)。150万円の縛りはありませんが、遺産分割の調停または審判の申立てをしていることが前提です。要件は「急迫の危険を防止するため」から「行使する必要があると認めるとき」に緩和されました。

口座凍結で葬儀費用を引き出したい|上限150万円と計算方法

仮払い制度の計算方法は「残高×3分の1×法定相続分」

相続人の構成配偶者子ども1人あたり親・兄弟姉妹1人あたり
配偶者+子1人1/21/2
配偶者+子2人1/21/4
配偶者+子3人1/21/6
子のみ2人(配偶者なし)1/2
配偶者+親2人2/31/6
配偶者+兄弟姉妹2人3/41/8
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上限150万円は金融機関ごとに適用されます

  • 同一の金融機関に対する権利行使の限度が、法務省令で150万円と定められています。
  • 同じ銀行のA支店とB支店、普通預金と定期預金は、合算して150万円が上限です。
  • 銀行が2行、3行とあれば、それぞれに150万円までの枠があります。

仮払い上限 早見・積み上げ表

金融機関・口座種別相続開始時の残高残高×1/3×1/4金融機関ごとの上限請求できる額
A銀行・普通普通預金500万円約41.6万円
A銀行・定期定期預金400万円約33.3万円
A銀行 小計900万円75.0万円150万円75.0万円
B銀行・普通普通預金300万円25.0万円150万円25.0万円
合計1,200万円100.0万円100.0万円
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注意

不足額がプラスになったら、家庭裁判所の仮分割の仮処分を検討する分岐です。金額が足りないまま窓口へ行っても、150万円の枠を窓口で広げてもらうことはできません。

相続の仮払い制度を使ってよいか?5問でわかる判断チャート

  • はい/わからない → 仮払いは原則として保留します。次にやること:相続の開始を知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てます(収入印紙800円+連絡用の郵便切手/裁判所)。どうしても必要なら、社会通念上相当な範囲の葬儀費用に限り、領収書をすべて保管します。
  • いいえ → Q2へ
  • ある → その預貯金について特定財産承継遺言や遺贈があると、遺産分割の対象から外れ、仮払いの対象にならないとされています。次にやること:遺言書の写しを持って金融機関に相談し、遺言執行者のルートへ切り替えます。
  • ない → Q3へ
  • 収まる → 窓口ルートで進みます。次にやること:早見表で口座ごとの金額を確定します(必要書類は戸籍一式・印鑑証明書)。
  • 超える → 家庭裁判所の仮分割の仮処分を検討します。次にやること:遺産分割調停の申立て(収入印紙1,200円+郵便切手)とあわせて弁護士に相談します。
  • いる → 戸籍集めの難度が上がります。兄弟姉妹は戸籍の広域交付が使えず、郵送請求で2〜3週間みておきます。判断が難しい方には成年後見、行方不明なら不在者財産管理人の検討が必要です。次にやること:司法書士に戸籍収集を依頼します。
  • いない → Q5へ
  • 10日未満 → 仮払いは間に合わない前提で組み立てます。次にやること:葬儀社の後払い、生命保険金の請求、いったん立替えを先に動かします。
  • 10日以上 → 窓口ルートで進めます。次にやること:戸籍の請求から着手します。

始める前の準備|預貯金の仮払い制度の必要書類チェックリスト

書類取得先手数料・期間の目安つまずきポイント
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本本籍地の市区町村(広域交付は最寄りの窓口)自治体の定める手数料/数日〜数週間転籍が多いと通数が増える
法定相続情報一覧図の写し(戸籍一式の代わり)法務局無料/申出から交付まで概ね1〜2週間先に戸籍一式をそろえる必要がある
相続人全員の戸籍謄本各人の本籍地自治体の定める手数料遠方の相続人がいると郵送待ちが発生
請求する人の印鑑証明書住所地の市区町村・コンビニ交付自治体の定める手数料/即日金融機関ごとに有効期限の指定あり
通帳・キャッシュカード・届出印自宅見つからないときは金融機関に相談
金融機関所定の払戻請求書各金融機関様式も添付書類も銀行ごとに違う
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法定相続情報一覧図を先に作ると、あとがラクになります

戸籍の広域交付が使えるかどうかで日数が変わります

注意

兄弟姉妹や代理人は広域交付を使えません。戸籍抄本、戸籍の附票、コンピュータ化前の一部の戸籍も対象外で、郵送やオンラインでの請求もできません。親の相続で子が請求する場合は使えますが、おじ・おばの相続では使えない、と覚えてください。

補足

法務省によると、2026年5月26日から戸籍に氏名の振り仮名が記載されます(届出は2026年5月25日まで)。戸籍の振り仮名と金融機関に登録されている読み方が食い違うと、確認や変更の手続きが増えることがあります。

手順を順番に詳しく解説|請求から着金までの実日数タイムライン

  1. 死亡の連絡と口座の確認(1日目)。金融機関に連絡すると口座は止まります。同時に、相続手続きの担当窓口と必要書類の一覧を確認します。支店ではなく相続センターが窓口になる銀行も増えています。
  2. 戸籍と印鑑証明書を集める(1〜3週間)。全体の所要日数を決めるのがここです。広域交付が使えるなら窓口で数日、郵送請求なら2〜3週間を見込みます。
  3. 法定相続情報一覧図を作る(任意・1〜2週間)。銀行が複数あるときだけ有効です。急ぐ1行目は戸籍の原本で進め、2行目以降を一覧図にする手もあります。
  4. 金融機関で払戻しを請求する(1日)。所定の請求書に記入し、書類を提出します。計算の根拠として残高証明書を求められることがあります。
  5. 審査と着金(数日〜2週間程度。金融機関により異なります)。本部での確認が入ります。窓口で現金を渡されるのではなく、請求者の口座へ振り込まれる扱いが一般的です。
  6. 領収書と明細を保管する(以後ずっと)。何にいくら使ったかを残します。あとの遺産分割と、放棄の判断を守る材料になります。
注意

葬儀社の請求期限は、葬儀のあと1〜2週間に設定されていることが多いとされます。戸籍集めに2週間かかると、支払期限と重なります。着金を待たず、後払いができるかを葬儀社へ先に相談してください。

つまずきやすいポイントと対処法|窓口で断られる3つのケース

ケース1 満期前の定期預金

ケース2 遺言で承継先が決まっている預金

ケース3 相続人に認知症の方や行方不明の方がいる

注意

認知症の相続人がいる場合の成年後見、行方不明の相続人がいる場合の不在者財産管理人は、いずれも家庭裁判所の手続きで時間がかかります。葬儀費用の工面は、仮払い以外のルートと並行して考えてください。

効率化・応用のコツ|仮払いより速いお金のルートはある?

ルート上限額他の相続人の同意主な必要書類入金までの目安実費相続放棄への影響遺産分割での精算
①金融機関の仮払い(民法909条の2)残高×1/3×相続分、同一金融機関150万円不要戸籍一式・印鑑証明書・所定の請求書書類完成後おおむね数日〜2週間(収集を含め全体で2週間前後)戸籍等の交付手数料使い方によっては単純承認とみなされる可能性一部分割として取得分から差引
②家裁の仮分割の仮処分(家事事件手続法200条3項)150万円の枠なし(必要と認められる範囲)不要(遺産分割の調停・審判の申立てが前提)申立書・戸籍一式・資金の必要性を示す資料申立てから数週間〜収入印紙1,200円+郵便切手2,760円〜(東京家裁の例)①と同様の考慮が必要一部分割として精算
③遺言書・遺言執行者による払戻し遺言の内容による不要遺言書(自筆証書は検認済み)・執行者の資格証明金融機関の確認後検認等の費用受け取り方により承認とみなされる可能性遺言の指定に従う
④生命保険金契約の保険金額不要死亡診断書・保険証券・受取人の本人確認書類各社の約款によるなし受取人固有の財産のため、放棄しても受け取れるとされる遺産ではないため精算不要
⑤国民健康保険の葬祭費・健康保険の埋葬料保険者が定める額不要申請書・葬儀の領収書・保険証など申請後の後払いなし葬祭を行った人への給付で、一般に影響しないとされる不要
⑥葬儀社の後払い・クレジット決済葬儀社の定める範囲不要契約書即日(支払いを先送りできる)分割手数料相続人が自分の財産から払う限り、遺産の処分にはあたらないと整理されることが多い費用の負担は相続人間の協議
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預貯金と並行して、不動産側の期限も確認します

補足

2026年2月2日に運用が始まった所有不動産記録証明制度では、被相続人名義の不動産を全国分まとめて一覧の証明書にできます。手数料は窓口請求1,600円、オンライン請求・郵送1,500円、オンライン請求・窓口交付1,470円です(法務省)。実家の財産把握の初動が変わりました。

注意点・リスク|仮払い制度のデメリットと相続放棄の関係

デメリット1 受け取った額は自分の取り分から引かれます

デメリット2 使い方によっては相続放棄ができなくなります

  • 使い道を、社会通念上相当な範囲の葬儀費用に限る
  • 領収書と請求書を、すべて原本で保管する
  • 仮払い金は専用の口座に入れ、自分の生活費と混ぜない
  • 香典を受け取った場合は、香典から先に葬儀費用へ充てた記録を残す
  • 親の借金の返済には、仮払い金を使わない
注意

相続財産から債権者へ一部でも弁済すると、相続を承認したと受け取られる危険があります。督促が来ても、放棄を検討している間は支払わず、相続人として調査中であることを伝えるにとどめるのが安全とされています。

判断がつかないときは、期限のほうを動かします

具体例・ケーススタディ|3つの家庭で通しにシミュレーションします

ケースA 配偶者+子2人、A銀行900万円・B銀行300万円

  • A銀行(普通500万円+定期400万円)=900万円×1/3×1/4=75万円。150万円の上限に届かないため75万円。
  • B銀行(普通300万円)=300万円×1/3×1/4=25万円。
  • 合計100万円。

ケースB 子のいない叔父の相続で、相続人が兄弟姉妹2人

ケースC 親に借金の可能性があり、放棄を検討中

注意

ここでの判断は、金額の大小ではなく「放棄の可能性を残せるか」で決めます。迷う場合は、動く前に弁護士へ相談してください。

よくある質問

仮払い制度に申請期限はありますか?

銀行が複数あれば、それぞれ150万円まで引き出せますか?

ゆうちょ銀行でも仮払い制度は使えますか?

仮払いで受け取ったお金に、相続税はかかりますか?

他の相続人が勝手に仮払いを受けていたら、どうなりますか?

  • 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html
  • 法務省「遺産分割前の払戻し制度について」 https://www.moj.go.jp/content/001278308.pdf
  • 法務局「法定相続情報証明制度について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
  • 裁判所「遺産分割調停」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
  • 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表) https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/index.htm
  • 鎌倉新書「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年5月12日発表) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000009951.html
  • ゆうちょ銀行「相続手続き」 https://www.jp-bank.japanpost.jp/tetuzuki/souzoku/tzk_szk_index.html
  • 法務省「所有不動産記録証明制度について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
  • 法務省「住所等変更登記の義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html

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