まな先生解説
こころ質問
すい要点整理
- 枠を取りに行けるか:手帳がない親・きょうだいでも、3つのルート(相基通19の4-3/成年被後見人=特別障害者/障害者控除対象者認定書)で控除の対象になり得ます
- 枠をどう配るか:本人で引ききれない分は扶養義務者に回せますが、一次相続で使い切ると二次相続にはほとんど残りません
結論:相続税の障害者控除とは何か?
「控除枠」として捉えると判断しやすい
控除額の大きさのイメージ
| 相続時の年齢 | 一般障害者(年10万円) | 特別障害者(年20万円) |
|---|---|---|
| 30歳 | 550万円 | 1,100万円 |
| 45歳 | 400万円 | 800万円 |
| 55歳 | 300万円 | 600万円 |
| 70歳 | 150万円 | 300万円 |
| 80歳 | 50万円 | 100万円 |
| 85歳以上 | 0円 | 0円 |
税額控除の適用順序
注意
相続開始時に満85歳以上の場合、控除額は0円となり適用できません。内閣府「令和7年版障害者白書」によると、在宅の身体障害者415万9千人のうち65歳以上は296万2千人(71.2%)とされています。高齢の相続人ほど残り年数が短く、控除額も小さくなる点は現実として押さえておく必要があります。
障害者手帳がない親・きょうだいでも控除は取れるか(判定フロー)

3分岐フローチャート:手帳がなくても障害者控除は取れるか
分岐A:相基通19の4-3ルート(手帳が間に合えば使える)
分岐B:成年被後見人は特別障害者に該当
分岐C:障害者控除対象者認定書(要介護高齢者の主要ルート)
注意
認定基準・死後申請の可否・必要書類は自治体ごとに異なります。横浜市の例は目安であり、必ずお住まいの市区町村の介護保険担当課へご確認ください。また、認定書があっても最終的な税務上の判断は所轄税務署・税理士の確認が必要です。
相続税 障害者控除の申告不要はどこまで本当か
申告の要否を分ける3つの階層
| 状況 | 申告の要否 | 理由 |
|---|---|---|
| 遺産総額が基礎控除以下 | 不要 | そもそも課税対象にならない |
| 基礎控除超だが障害者控除のみで税額ゼロ | 原則不要 | 障害者控除は適用に申告要件がないとされる |
| 小規模宅地等の特例を使ってゼロ | 必須 | 特例の適用に申告が要件とされている |
| 配偶者の税額軽減を使ってゼロ | 必須 | 同上 |
なぜ実家がある相続では申告が必要になりやすいか
課税対象は増えている
相続税 障害者控除の扶養義務者とは:枠の配り方を決める
配分は協議で決められる
一次相続で使い切るか、二次相続に残すか
| ケース1:一次で使い切る | ケース2:二次に温存する | |
|---|---|---|
| 一次での使い方 | 二男の税額200万円を全額控除し、残り600万円を扶養義務者である母・長男の税額から控除 | 二男本人の200万円分のみ使用 |
| 一次の家族合計の減税額 | 最大800万円(母・長男の税額が600万円以上ある場合) | 200万円 |
| 二次相続(母死亡・二男48歳と仮定)の控除額 | 一次で使い切っているため、19条の4の2回目計算により残枠はほぼなし | 「(85−48)×20万円=740万円」と「持ち越せる残枠600万円」の少ない方=600万円 |
| 通算の考え方 | 一次で確実に800万円分を消化 | 一次200万円+二次で最大600万円 |
過去に使った分は2回目で制限される(相続税 障害者控除 2回目)
注意
上記のシミュレーションは判断軸を示すための簡略化した試算です。実際の税額は財産構成・分割内容・二次相続時の法改正により変わります。配分設計は必ず税理士とご検討ください。
節税と本人保護のトレードオフ:成年後見と「親なき後」
成年後見を使うと何が起きるか
「親なき後」の受け皿と併走させる
| 手段 | 効果の性質 | 金額の目安 | 使えるタイミング | 成年後見が必要になるか | 主なコスト | 落とし穴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 相続税の障害者控除 | 税額控除 | 10万円 or 20万円 × 85歳までの年数 | 相続後の申告時 | 分割協議が必要なら要 | 申告報酬 | 85歳以上は控除ゼロ/二次相続で枠が減る |
| 特定贈与信託(相法21条の4) | 贈与税の非課税枠 | 特別障害者6,000万円/特別障害者以外の特定障害者3,000万円 | 生前 | 不要 | 信託銀行の手数料 | 使途が生活費・医療費等に限定される |
| 遺言(付言・遺言執行者指定) | 財産の承継先の指定 | — | 生前 | 遺言があれば分割協議を回避できる | 公正証書遺言の作成費用 | 遺留分 |
| 家族信託(親なき後信託) | 財産管理の仕組み | — | 生前 | 不要 | 組成費用 | 受託者の確保 |
注意
成年後見・信託・遺言はいずれも本人の状況によって適否が大きく変わります。税務は税理士、後見・信託・遺言は司法書士や弁護士へ、早めにご相談ください。
一般障害者と特別障害者の違い
区分の判定基準
| 項目 | 一般障害者 | 特別障害者 |
|---|---|---|
| 1年あたりの控除額 | 10万円 | 20万円 |
| 身体障害者手帳 | 3〜6級 | 1〜2級 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 2〜3級 | 1級 |
| 療育手帳 | 中軽度(B、3度・4度など) | 重度(A、1度・2度など) |
| 成年被後見人 | — | 該当(東京国税局 平成26年3月14日文書回答) |
| 50歳時点の控除額 | 350万円 | 700万円 |
| 65歳時点の控除額 | 200万円 | 400万円 |
補足
手帳の等級は更新や再判定で変わることがあります。判定の基準時は相続開始時ですので、直近の等級を手帳や自治体の通知でご確認ください。
適用の4要件と落とし穴
適用の4要件
- 相続や遺贈で財産を取得したこと
- 財産を取得した時に日本国内に住所があること(一定の例外あり)
- 財産を取得した時に障害者であること
- 法定相続人であること(相続の放棄があった場合は、放棄がなかったものとした場合の相続人)
見落としやすいパターン
- 孫や甥姪への遺贈:遺言で財産をもらっても、法定相続人でなければ障害者控除は使えません
- 相続時に85歳以上:控除額が0円になります
- 海外在住:住所が国外にある場合、原則として適用外とされています(例外規定あり)
- 引ききれない分の切り捨て:扶養義務者の税額からも引ききれなかった分は切り捨てとなり、還付も繰越もできません
相続放棄との関係
具体例で確認する
ケース1:本人の税額から引ききれる
ケース2:引ききれず母から控除する
ケース3:手帳がない要介護の母(分岐Cで救われる)
| ケース | 区分 | 年齢 | 控除額 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 一般 | 52歳 | 330万円 | 本人分で完結 |
| 2 | 特別 | 45歳 | 800万円 | 母へ引き継ぎ・250万円切り捨て |
| 3 | 認定書 | 78歳 | 70万円〜 | 手帳なしでも枠を取りに行ける |
障害者控除対象者認定書と相続税:申告手続きの流れ
手続きの5ステップ
- 障害者区分を確認する:手帳の等級を確認。手帳がなければ前述の3ルート(分岐A・B・C)を検討します
- 相続開始時の年齢を確定する:死亡日時点の満年齢を戸籍謄本等で確認します
- 必要書類を揃える:手帳の写し、または診断書・後見登記事項証明書・障害者控除対象者認定書
- 申告書第6表を作成する:「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」で控除額と扶養義務者への配分を記載します
- 被相続人の住所地の税務署に提出する:相続開始を知った日の翌日から10か月以内
ルート別の必要書類と逆算スケジュール
| ルート | 主な証明書類 | 入手先 | 取得目安 | 着手の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 手帳あり | 障害者手帳の写し | 本人保管 | 即日 | いつでも |
| 分岐A(相基通19の4-3) | 手帳の写し or 申請受理票+医師の診断書 | 医療機関・自治体 | 2〜4週 | 期限の2か月前 |
| 分岐B(成年被後見人) | 後見登記事項証明書 | 法務局 | 即日〜1週 | 期限の1か月前 |
| 分岐C(認定書) | 障害者控除対象者認定書 | 市区町村 | 2〜6週 | 期限の3か月前 |
| 共通 | 戸籍謄本・遺産分割協議書・第6表 | 市区町村・相続人・国税庁サイト | — | 早めに |
期限を過ぎてしまった場合
似た用語との違い
| 項目 | 相続税の障害者控除 | 所得税の障害者控除 |
|---|---|---|
| 引く対象 | 相続税額(税額控除) | 所得金額(所得控除) |
| 金額 | (85−年齢)×10万/20万円 | 27万円/40万円/75万円 |
| 使う場面 | 相続税の申告時 | 年末調整・確定申告 |
| 対象者 | 障害のある法定相続人 | 本人・同一生計配偶者・扶養親族 |
| 頻度 | 相続時のみ | 毎年 |
よくある質問
Q1. 相続税の障害者控除で税額ゼロなら申告不要ですか?
Q2. 相続税の障害者控除の扶養義務者とは誰を指しますか?
Q3. 障害者手帳がなくても障害者控除は使えますか?
Q4. 障害者控除対象者認定書は相続税でも使えますか。死後でも申請できますか?
Q5. 相続税の障害者控除は2回目も使えますか?
Q6. 障害のある子が相続放棄した場合はどうなりますか?
まとめ
注意
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。税制は改正されることがあります。適用にあたっては必ず国税庁ウェブサイト(タックスアンサーNo.4167)の最新情報を確認し、税理士等の専門家にご相談ください。




