遺言書

遺言書の撤回方法|親の遺言は法務局で返却しても無効にならない

親の遺言書の撤回を考える40〜60代向け。自宅・法務局・公証役場の保管場所別の手順と、法務局で返してもらうだけでは遺言は無効にならない注意点を解説します。2025年10月改定後の撤回手数料13,000円と、入院中に出張してもらう費用の目安も出典付きで示します。

遺言書の撤回方法|親の遺言は法務局で返却しても無効にならない
まな先生解説
こころ質問
すい要点整理

遺言書の撤回方法は?保管場所で決まる結論

保管場所親の状況おすすめの撤回ルート費用の目安
自宅問わない全部やめるなら本人が破棄。一部を変えるなら新しい遺言を書く0円
法務局出向ける原本のある保管所で返還を受け、本人が破棄するか新しい遺言を作る0円
法務局遠方・入院中自宅で撤回の遺言を自筆で書く。返還は出向けるときに0円
公証役場出向ける公証役場で撤回の公正証書を作る原則13,000円
公証役場入院中公証人に出張してもらい撤回する29,500円〜+交通費(試算)
不明—公証役場で遺言検索(平成元年以降の公正証書遺言が対象)を依頼するなどして保管の有無を確かめる—
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この記事で扱う範囲と、上位記事との違い

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確認した点nao-lawoffice.jpoffice-tree.jpsouzokusp.comこの記事
法務局で返してもらっても撤回にならない説明あり説明あり返還手順を説明説明あり
公正証書で撤回する手数料11,000円(令和4年8月現在の表記)財産額別の作成手数料のみ記載なし改定後の定額13,000円
入院先への出張費用確認範囲で記載なし記載なし確認範囲で記載なし病床加算・日当込みで試算
親が遠方のときの進め方確認範囲で記載なし確認範囲で記載なし撤回の遺言を作る方法を推奨遠方・入院中・2通ある場合の3ケース
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民法が定める撤回の4つの方法と基本ルール

  1. 撤回の遺言を作る(1022条): 「前の遺言を撤回する」と書いた遺言を作る
  2. 前の遺言と食い違う遺言を作る(1023条1項): 食い違う部分だけが撤回とみなされる
  3. 遺言と食い違う生前処分をする(1023条2項): 遺言で渡すとした自宅を売るなど。その部分が撤回とみなされる
  4. 遺言書や遺贈する物を本人がわざと破棄する(1024条): 破棄した部分が撤回とみなされる
  • 公正証書遺言は手元の紙を破っても撤回にならない: 日本公証人連合会は、原本が必ず公証役場に保管されるため、破棄や改ざんのおそれがないと説明しています。手元の正本や謄本を破っても原本は残るので、撤回するには新しい遺言を作ります。
  • 撤回の遺言は種類を問わない: 日本公証人連合会は、撤回や変更は新たな遺言の形式で行う必要があり、「自筆証書であるか、公正証書であるかの種類は問いません」としています(「2 遺言」、2026年10月15日確認)。ただし新しい遺言の方式は守る必要があり、方式不備の争いを避けたいなら公正証書のほうが安全です。
  • 撤回を取り消しても原則は復活しない: 民法1025条は、撤回された遺言は効力を回復しないと定めています。撤回が錯誤・詐欺・強迫による場合は例外です。
  • 撤回にも判断能力が要る: 民法963条は、遺言をする時に能力を有していなければならないと定めています。撤回も遺言の方式で行うため、同じ前提で考えます。

保管場所別の撤回手順

自宅保管の自筆証書遺言

  1. 親本人が遺言書を確認する
  2. 全部やめるなら、本人がシュレッダーなどで破棄する
  3. 一部を変えるなら、全文・日付・氏名を自分で書き、押印した新しい遺言を作る(民法968条1項)。財産目録は自書しなくてよく、各ページへの署名押印が必要です(同条2項)
  4. 古い遺言のコピーがあれば処分する

法務局に預けた自筆証書遺言

  1. 遺言書の原本が保管されている保管所に予約を入れる(予約は必須。ほかの保管所ではできない)
  2. 撤回書を作る(様式は法務省「自筆証書遺言書保管制度で使用する申請書等」に掲載)
  3. 予約した日に遺言者本人が、撤回書と、官公署が発行した顔写真付きの身分証明書を持って出向く。手数料はかからない
  4. 返された遺言を、取り消したいなら本人が破棄する。内容を変えたいなら新しい遺言を作る

公正証書遺言

  1. 公証役場に連絡し、必要書類と日程を確認する
  2. 証人2人を手配する(民法969条1号)。日本公証人連合会は、未成年者・推定相続人・遺贈を受ける人などは証人になれないと案内しています
  3. 撤回の公正証書を作る。内容も変えるなら、新しい遺言公正証書を同時に作る
注意

認知症の診断があるなど判断能力に不安があるときは、手続きの前に司法書士や弁護士へ相談してください。

撤回の費用比較と試算(2025年10月改定後)

方法費用本人が出向く先撤回の確実さ争いのリスク
自宅の遺言を本人が破棄0円なし◎(全部を破棄)一部に線を引くだけだと解釈が割れやすい
法務局で返還→破棄0円原本のある保管所○(破棄して初めて撤回)返還だけで止めると遺言は有効なまま
撤回の遺言を自筆で書く0円なし○日付や押印が漏れると無効のおそれ
撤回の公正証書を作る原則13,000円公証役場(出張も可)◎低い
食い違う新しい遺言を作る作成費用方式による△(食い違う部分のみ)2通の解釈が争点に
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  • 4時間以内: 13,000円+6,500円(病床加算)+日当10,000円=29,500円
  • 4時間超: 19,500円+日当20,000円=39,500円

親が遠方・入院中のときの進め方(想定ケース)

ケース1: 法務局に保管、父は遠方に住んでいて元気

ケース2: 公正証書遺言、母が入院中

ケース3: 自宅に日付の違う遺言が2通ある

つまずきやすいポイントと対処法

  • 線を引くだけ: 最高裁第二小法廷の平成27年11月20日判決(平成26年(受)第1458号)は、遺言者が自筆証書遺言の文面全体に赤いボールペンで斜線を引いた行為を、民法1024条前段の「故意に遺言書を破棄したとき」にあたると判断しました。個別の事案の判断であり、一部の行だけに線を引いた場合は撤回か訂正かで争いになりえます。全部やめるなら紙ごと破棄し、一部を変えるなら書き直すのが無難です。
  • 撤回の撤回: 原則として前の遺言は復活しません(民法1025条)。例外として最高裁平成9年11月13日判決(民集51巻10号4144頁)は、遺言書の記載から最初の遺言の復活を望む意思が明らかな場合に、復活を認めました。元に戻したいなら、同じ内容で作り直すのが確実です。
  • 家族による破棄: 撤回とみなされるのは、遺言者本人がわざと破棄した場合です(民法1024条)。相続に関して被相続人の遺言書を破棄・隠匿した者は相続人になれません(民法891条5号)。
  • 意図しない撤回: 遺言で渡すとした不動産を売ったり贈与したりすると、その部分は撤回とみなされます(民法1023条2項)。

書き直しのコツと2026年改正民法の扱い

補足

記載例: 「遺言者は、令和○年○月○日付で作成した遺言を全部撤回する。」のあとに新しい内容を書きます。

まとめ:親の遺言を撤回する前に確認したいこと

よくある質問

法務局で保管の申請を撤回すると遺言は無効になりますか?

公正証書遺言は自筆証書遺言で撤回できますか?

遺言の撤回にかかる費用はいくらですか?

子が親の代わりに遺言を撤回できますか?

記事中の主張出典
撤回の方法、撤回の撤回(錯誤・詐欺・強迫の例外)、遺言能力、自筆証書の方式、証人2人、相続欠格e-Gov法令検索 民法1022〜1025条・963条・968条・969条・891条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
保管の申請の撤回は遺言の効力と関係がない。原本のある保管所のみ・予約必須・本人出頭・持ち物・手数料不要法務省「保管の申請の撤回」 https://www.moj.go.jp/MINJI/02.html
保管申請1件3,900円、撤回は手数料不要法務省「09 手数料」 https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html
撤回書の様式法務省「自筆証書遺言書保管制度で使用する申請書等」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00048.html
撤回手数料原則13,000円、病床加算2分の1、日当1万/2万円、交通費実費、令和7年政令第263号千住公証役場「公証人手数料に関して」 https://www.senju-kosho.jp/notices/requireddoc.html
遺言加算13,000円(1億円まで)、病床執務加算1.5倍、日当日本公証人連合会「12 手数料」 https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow12
撤回は新たな遺言の形式で・種類を問わない、いつでも自由に撤回・変更可、原本保管、証人になれない人、出張・ウェブ会議の条件、遺言検索(平成元年以降)日本公証人連合会「2 遺言」 https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
改正民法の成立・公布日と施行期限法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
斜線と「破棄」最高裁第二小法廷 平成27年11月20日判決(平成26年(受)第1458号)。判旨は判例解説 https://higobashi.com/pages/20/detail=1/b_id=56/r_id=82/ ・ https://hamakado-law.jp/blog/detail/20151125000009/ で照合(裁判所サイトの原文は未取得)
撤回の撤回と最初の遺言の復活最高裁 平成9年11月13日判決(民集51巻10号4144頁)。判旨は判例解説 https://sozoku-tako-law.com/commentary-22/ ほかで照合(裁判所サイトの原文は未取得)
上位記事の比較https://nao-lawoffice.jp/souzoku/columns/trust/1057/ 、https://office-tree.jp/blog/inheritance/will-revocation-method/ 、https://souzokusp.com/jihitsu-yuigon-henkou/
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最終確認日: 2026年10月15日

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