デジタル遺産の相続方法5ステップ|親のスマホ・ネット口座はどうする?
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デジタル遺産の相続方法5ステップ|親のスマホ・ネット口座はどうする?

親が亡くなったあと、ネット銀行や証券口座、スマホの中の写真といった「デジタル遺産」は、通帳のような形が残らないため、存在に気づかないまま相続手続きが終わってしまうことが少なくありません。結論からお伝えすると、デジタル遺産の相続は「①調査→②一覧化→③評価→④遺産分割→⑤各サービスでの手続き」という5つのステップで進めるのが基本です。この記事では、親の相続や実家の整理に直面する40〜60代の方に向けて、具体的な手順、パスワードが分からない場合の対処法、相続税の注意点までを順番に解説します。

結論:デジタル遺産の相続は5つのステップで進める

デジタル遺産の相続は「調査→一覧化→評価→遺産分割→各社手続き」の5ステップで進めるのが基本とされています。

全体の流れと目安の時期は次のとおりです。相続放棄(3か月)や相続税申告(10か月)など期限のある手続きから逆算して動くことが大切です。

ステップやること目安時期
①調査スマホ・PC・郵便物から手がかりを集める死後1〜2か月
②一覧化デジタル遺産の財産目録を作る〜3か月
③評価残高証明書などで金額を確定する〜4か月
④遺産分割遺産分割協議書に記載する〜6か月
⑤手続き各サービスで相続・解約を行う〜10か月
ポイント

相続放棄には「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」という期限があります(民法915条)。FXの損失や後払い決済の残債など、デジタル遺産に負債が含まれる可能性がある場合は、早い段階で司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

そもそもデジタル遺産とは何ですか?

そもそもデジタル遺産とは何ですか?

デジタル遺産とは、故人がスマホやネット上に残した財産・データの総称で、金銭的価値のあるものは相続財産に含まれるとされています。

相続の対象になる主なデジタル遺産

金銭的価値のあるデジタル資産は、原則として相続の対象です。民法896条では、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定められており、ネット上の資産も例外ではないと解釈されています。

  • ネット銀行の預金(住信SBIネット銀行、楽天銀行など)
  • ネット証券の株式・投資信託(SBI証券、楽天証券など)
  • 暗号資産(ビットコインなど)
  • FX口座・CFD口座の残高
  • 電子マネー・スマホ決済の残高(払い戻しの可否は各社の規約によります)
  • 航空会社のマイル(ANA・JALは規約上、相続の手続きが可能とされています)

相続の対象にならないとされるもの

SNSやメールのアカウント自体は、規約上相続できないのが一般的です。LINEやX(旧Twitter)などの利用規約では、アカウントの権利は本人のみに帰属する「一身専属」とされ、相続や譲渡はできないと定められていることが多いためです。ただし、アカウントは相続できなくても、中の写真データなどは各社の故人向け制度(後述)で一部対応できる場合があります。

なぜ今、デジタル遺産が問題になるのか

高齢層のネット利用が広がり、形のない財産が急増しているためです。総務省の通信利用動向調査(2024年公表)では個人のインターネット利用率は8割を超え、60代・70代でもネットバンキングや証券のオンライン取引が一般化しています。国民生活センターにも「亡くなった家族のデジタル遺品を確認できない」といった相談が寄せられており、注意喚起が行われています。

補足

「デジタル遺産」に法律上の明確な定義はまだなく、専門家によって「デジタル遺品」「デジタル資産」と呼び方が分かれています。本記事では、金銭的価値の有無を問わず故人が残したデジタルデータ全般を広く指す言葉として使います。

始める前の準備・必要なもの

準備は大きく2つで、相続手続きに使う書類一式と、デジタル遺産を探すための「手がかり」の確保です。

  1. 相続関係の書類: 故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍・印鑑証明書、(あれば)遺言書。ネット銀行・証券の相続でも紙の銀行と同様に必要です。
  2. 故人のスマホ・パソコン: 最大の手がかりです。絶対に初期化しないでください
  3. 紙の郵便物: 証券会社の取引残高報告書、税務署からのお知らせ、カード明細など。ネット専業の金融機関でも、重要書類は郵送されることがあります。
  4. 通帳・クレジットカード明細: サブスクの引き落としや証券口座への入出金の痕跡が見つかります。
  5. 確定申告書の控え: 故人が申告していた場合、口座や資産の所在が分かります。
注意

携帯電話を「月額料金がもったいないから」とすぐ解約すると、各サービスのSMS認証(本人確認コードの受信)ができなくなり、調査が極端に難しくなります。調査が終わるまでは回線の維持を検討してください。

デジタル遺産を相続する手順を順番に詳しく解説

手順は「洗い出し→財産目録→評価→遺産分割協議→各社手続き」の5段階で、税の申告期限から逆算して進めます。

ステップ1:端末と郵便物からデジタル遺産を洗い出す

まずスマホ・PC・郵便物・通帳の4か所を調べます。次の順で確認すると漏れが減ります。

  1. スマホのホーム画面のアプリ(銀行・証券・決済・暗号資産)を確認する
  2. メールを「口座」「残高」「取引報告書」「ログイン」などのキーワードで検索する
  3. 郵便物を1年分確認する(取引残高報告書は年1回以上郵送されることが多いため)
  4. 通帳・カード明細の引き落とし履歴からサブスクや証券への振替を洗い出す

ステップ2:財産目録(デジタル遺産一覧)を作る

見つけたものをサービス名・種類・おおよその金額で一覧にします。書式は自由ですが、「サービス名/名義/種類(資産か契約か)/金額/連絡先/手続き状況」の6項目を表にしておくと、後の遺産分割協議と各社手続きの進捗管理にそのまま使えます。

ステップ3:残高証明書を取り寄せて評価する

各社に相続発生を連絡し、死亡日時点の残高証明書を請求します。連絡した時点で口座は凍結されるのが一般的です。株式や投資信託は死亡日の時価で評価します。暗号資産も国税庁の取扱いでは相続税の課税対象とされており、死亡時点の価額で評価するのが原則とされています。

ステップ4:遺産分割協議書に記載する

デジタル遺産も預貯金や不動産と同じく、誰が相続するかを遺産分割協議書に明記します。「〇〇証券の口座番号××の有価証券一切」のように特定できる形で書くのが実務上のポイントです。あわせて「後日判明した財産の取り扱い」の条項を入れておくと、発見漏れがあっても協議のやり直しを避けられる場合があります。

ステップ5:各サービスで相続・解約手続きを行う

資産系は名義変更または解約・払い戻し、契約系は解約を進めます。ネット証券の株式は、相続人が同じ証券会社に口座を開設して移管を受けるのが一般的です。サブスクや有料アプリは解約し、返金の可否は各規約によります。

まとめ

5つのステップのうち時間がかかるのは①調査と③評価です。残高証明書の発行に2〜4週間程度かかる会社もあるため、相続税申告(10か月以内)が視野にある場合は早めに着手してください。

パスワードが分からないときはどうすればいいですか?

スマホのロック解除に通信キャリアは応じないため、メーカーの故人向け制度や専門業者の利用が現実的な選択肢とされています。

スマホのロックが解けない場合

AppleとGoogleには故人のデータにアクセスするための公式制度があります。

サービス制度概要
Apple故人アカウント(デジタル遺産プログラム)生前に「遺産管理連絡先」を設定していれば、アクセスキーと死亡証明書でデータにアクセス可能
Apple(生前設定なし)裁判所の命令等による申請ハードルが高く時間もかかるとされています
Googleアカウント無効化管理ツール生前設定があれば指定者にデータ共有。設定がない場合は遺族の申請による個別審査

生前設定がない場合、民間のデータ復旧・解除業者に依頼する方法もありますが、費用は端末や状態により数万円〜数十万円と幅があり、解除できる保証はありません。成功報酬型か着手金型か、失敗時の費用を必ず事前に確認してください。

どこに口座があるか分からない場合

株式は、証券保管振替機構(ほふり)への「登録済加入者情報の開示請求」で、故人がどの証券会社に口座を持っていたかを調べられます。銀行預金には一括照会の公的な仕組みがないため、心当たりのある銀行へ個別に照会するのが基本です。生命保険は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」(2021年開始)で一括照会が可能とされています(利用料は1回3,000円とされています)。

暗号資産の秘密鍵・ログイン情報が分からない場合

国内の暗号資産交換業者(取引所)に預けている場合は、他の金融機関と同様に相続手続きが可能です。一方、個人管理のウォレットで秘密鍵が不明な場合、技術的に取り出せない可能性が高いとされています。それでも課税対象になりうる点は、後述の注意点をご覧ください。

ポイント

「探しても見つからない」と「存在しない」は別です。メール検索の履歴や各社への照会結果など、調査を尽くした記録を残しておくと、後日財産が発見された場合や税務署とのやり取りで説明がしやすくなります。

効率化・応用のコツ(親が元気なうちの生前対策)

最も効果が大きいのは生前の一覧化で、財産の「所在だけ」を書いたリストと遺言書・エンディングノートの併用が有効とされています。

親と一緒にやっておきたい3つのこと

  1. サービスの棚卸し: ネット銀行・証券・暗号資産・サブスクを一覧にする(金額まで書く必要はありません)
  2. 所在リストの作成: 「どこに何があるか」だけを紙に書き、保管場所を家族で共有する
  3. スマホの緊急時設定: AppleとGoogleの故人向け制度を生前に設定しておく(いずれも無料で、所要10分程度です)

パスワードの残し方の注意点

遺言書にID・パスワードを直接書くのは避けるべきとされています。パスワードは変更のたびに遺言を書き直せませんし、遺言書は相続人全員が閲覧するため漏えいのリスクもあります。「ログイン情報は自宅の〇〇に保管している」と所在だけを示す方法が現実的です。

遺言書とエンディングノートの使い分け

役割が違うため併用が理想的とされています。遺言書は「財産の分け方」を法的に指定するもの、エンディングノートは「財産の所在情報」を家族に伝えるものです。エンディングノート自体に法的効力はありませんが、相続人の調査コストを大きく下げます。

補足

公正証書遺言にする場合、財産目録にネット口座を記載しておけば、相続人が公証役場経由で確実に把握できます。デジタル遺産が多い方ほど、遺言作成時に司法書士や公証人へ相談する価値が高いといえます。

デジタル遺産に相続税はかかりますか?(注意点・リスク)

ネット口座や暗号資産も相続税の課税対象とされ、遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は10か月以内の申告が必要です。

暗号資産はパスワード不明でも課税対象とされている

2018年3月の参議院財政金融委員会では、国税庁の担当者が「相続人がパスワードを知らない場合でも暗号資産は相続税の課税対象となる」という趣旨の答弁をしたと報じられています。取り出せないのに課税されうるという厳しい取扱いのため、暗号資産を保有する親がいる場合は、生前の情報共有が特に重要です。

申告漏れのリスク

ネット口座を見落として申告すると、後日、税務署の調査で把握される可能性があります。金融機関や暗号資産交換業者の取引は本人確認情報や支払調書を通じて把握されうるため、「ネットだから分からない」という考えは通用しないとされています。申告漏れには過少申告加算税や延滞税が課される場合があります。

「負のデジタル遺産」と相続放棄の関係

FXの追証や後払い決済の残債など、マイナスのデジタル遺産にも注意が必要です。相続放棄の期限は原則3か月ですが、故人の預金を使ったり資産を処分したりすると単純承認とみなされ、放棄できなくなる場合があります(民法921条)。デジタル資産の払い戻しを受ける前に、負債の全体像を確認してください。

注意

税制・法制度は改正される可能性があります。本記事は一般的な情報の整理であり、個別の税額計算や法的判断は、税理士(税務申告)・司法書士(名義変更・相続登記)・弁護士(相続争い)への相談をおすすめします。初回相談を無料とする事務所も多くあります。

具体例・ケーススタディ

典型的なつまずきは「ネット証券の発見遅れ」「スマホが開けない」「サブスクの引き落とし継続」の3つです。ここでは、よくある事例をもとにした架空のケースで流れを確認します。

ケース1:申告期限の直前にネット証券口座が見つかった

父親(75歳)を亡くしたAさんは、紙の通帳だけで遺産分割を終えかけていましたが、郵便物の取引残高報告書からネット証券の口座(評価額約400万円)を発見しました。遺産分割協議書に「後日判明した財産」の取り扱い条項を入れていたため協議のやり直しは不要で、期限内に相続税申告へ反映できました。教訓: 郵便物は最低1年分確認し、協議書に予備条項を入れておくこと。

ケース2:スマホのロックが解除できない

母親(68歳)のiPhoneのパスコードが分からなかったBさん。生前の「遺産管理連絡先」の設定がなく、Appleへの故人アカウント申請には時間がかかると案内されました。幸い、パソコンのメールから主要な口座は特定でき、金融資産の手続きは進められましたが、写真データの取り出しは断念しました。教訓: 資産の調査はメール・郵便物からでも可能。思い出のデータこそ生前設定が必要。

ケース3:死後もサブスクの引き落としが続いていた

Cさんは父親の死後半年たって、クレジットカード明細に動画配信など月額計4,000円前後の引き落としが続いていることに気づきました。カード会社に死亡を連絡してカードを停止し、各サービスへ死亡による解約を申請しました。過去分の返金は規約上難しいものが多かったものの、以後の課金は止まりました。教訓: カード明細の確認とカードの利用停止は初期段階で行うこと。

まとめ

3つのケースに共通するのは「手がかりの多くは紙とメールに残る」という点です。デジタル遺産といっても、調査の入口はアナログな資料であることが多いのです。

まとめ:期限から逆算し、迷ったら専門家へ

デジタル遺産の相続は、①調査②一覧化③評価④遺産分割⑤各社手続きの5ステップで、相続放棄3か月・相続税申告10か月の期限から逆算して進めるのが基本です。最初の一歩は、故人のスマホを初期化せずに確保し、郵便物とカード明細を1年分集めることです。ご自身の親がまだ元気なら、所在リストの作成とスマホの故人向け設定という生前対策を、今週末にでも始めてみてください。

ポイント

相続税がかかりそうな場合や負債の可能性がある場合は、自己判断で手続きを進める前に税理士・司法書士へ相談することをおすすめします。迷ったら、自治体の無料相続相談や法テラスを入口にする方法もあります。

よくある質問

Q1. 故人のネット口座を放置するとどうなりますか?

放置しても預金や株式が自動的に消えることはありませんが、リスクは残ります。証券口座の株式は死亡後も値動きし続ける一方、相続税は死亡日の評価額で計算されます。また、把握していない口座が後から見つかると遺産分割のやり直しにつながる場合があるため、早めの調査をおすすめします。

Q2. SNSのアカウントは相続できますか?

アカウント自体の相続は、多くのサービスの規約上できないとされています。ただし、Facebookの追悼アカウントやInstagramの追悼設定など、遺族の申請でアカウントを記念化・削除できる制度はあります。写真データを残したい場合は、生前にAppleやGoogleの故人向け制度を設定しておくのが有力な方法です。

Q3. 相続税の申告が必要かどうかは、どう判断すればいいですか?

遺産総額(デジタル遺産を含む)が基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるかどうかが目安です(国税庁)。例えば相続人が2人なら4,200万円です。不動産の評価などを含む正確な判定は複雑なため、超えそうな場合は税理士への相談をおすすめします。

Q4. デジタル遺産の調査を業者に頼むと費用はどのくらいですか?

内容により大きく異なり、スマホのロック解除やデータ復旧は数万円〜数十万円が目安とされています。成功報酬型か着手金型か、失敗時の費用、個人情報の取り扱いを契約前に必ず確認してください。金融資産の調査だけなら、まず郵便物・メールの確認とほふりへの開示請求(株式)を自分で行うのが経済的です。

Q5. 誰に相談すればいいですか?

内容で使い分けるのが基本です。相続税の申告は税理士、株式・不動産の名義変更や相続登記は司法書士、相続人同士の争いがある場合は弁護士が窓口です。どこに相談すべきか迷う場合は、自治体の無料相続相談や法テラスから案内を受ける方法もあります。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務の判断は税理士・司法書士等の専門家にご確認ください。最終確認日:2026年7月18日

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