相続の教科書|親が亡くなったらまず何をする?3つの期限と手順
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相続の教科書|親が亡くなったらまず何をする?3つの期限と手順

親が亡くなったあとの相続は、「3つの期限」と「全体像の把握」から始めるのが基本です。具体的には、相続放棄は3ヶ月以内、親の所得税の準確定申告は4ヶ月以内、相続税の申告・納付は10ヶ月以内という期限があり、ここから逆算して動くと大きな失敗を避けやすくなります。

この記事は、親の相続や実家の整理に直面した40〜60代の方に向けた『相続の教科書』です。つまずきの原因と見分け方、時系列の手順、ケース別の対処法、やってはいけないNG行為までを1本に整理し、読み終えたときに「今日から何をすればよいか」が分かる状態を目指します。

結論:まず「3つの期限」を確認し、相続人と財産の把握から始める

親の相続は、3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月という3つの期限を押さえ、相続人の確定と財産の洗い出しから着手するのが基本です。

主な期限は次のとおりです。起算日は原則「相続の開始があったことを知った日(の翌日)」とされています。

期限手続き過ぎた場合の主なリスク
3ヶ月以内相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所)原則、借金も含めて相続したことになる(単純承認)
4ヶ月以内準確定申告(亡くなった方の所得税)延滞税などの負担が生じるおそれ
10ヶ月以内相続税の申告・納付無申告加算税・延滞税、税額軽減の特例が使いにくくなるおそれ
3年以内相続登記(不動産の名義変更・2024年4月から義務化)正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得る

そのうえで、最初の1〜2週間は次の順番で動きます。

  1. 死亡届の提出(7日以内)と火葬許可の手続き
  2. 年金の受給停止、健康保険証の返却などの届出(概ね10〜14日以内)
  3. 遺言書を探す(自宅・貸金庫・法務局の保管制度・公証役場)
  4. 当面の支払いと公共料金・サブスクの整理
  5. 戸籍の収集と財産の洗い出しを開始
ポイント

期限は「知った日」から自動的に進みます。葬儀後は気力が落ちがちですが、四十九日を目安に財産の洗い出しまで終えると、その後の判断(放棄するか・誰が何を継ぐか)に余裕が生まれます。

相続でつまずく主な原因を深掘り

相続でつまずく主な原因を深掘り

相続のつまずきは「期限を知らない」「把握漏れ」「分けにくい財産」「感情のもつれ」の4つにほぼ集約されます。

原因1:期限を知らないまま時間が過ぎる。相続放棄の3ヶ月は特に短く、借金の存在に気づいたときには単純承認とみなされていた、というケースが典型です。

原因2:相続人・財産の把握漏れ。戸籍をたどると前婚の子など想定外の相続人が見つかることがあります。ネット銀行・ネット証券などのデジタル遺産は紙の通帳がなく、見落とされやすい財産です。

原因3:不動産など分けにくい財産が大半を占める。実家1軒と少しの預金という構成では、公平に分ける手段が限られ、話し合いが行き詰まりやすくなります。

原因4:感情のもつれ。介護の負担差や生前贈与の不公平感が、金額の大小と関係なく対立の火種になります。裁判所の司法統計では、遺産分割調停が成立した事件のうち遺産総額1,000万円以下が約3分の1、5,000万円以下まで含めると約4分の3を占めるとされています。

注意

「うちは財産が少ないからもめない」は統計と逆の思い込みです。むしろ財産が実家しかないケースほど分け方の選択肢が少なく、話し合いが難航しやすいとされています。

原因別の見分け方

ご自身の状況を4つのタイプに当てはめると、最初にやるべきことと相談先が明確になります。

タイプ典型的なサイン最優先の行動
期限型借金・保証人の可能性がある/死亡からすでに1〜2ヶ月経過信用情報の照会と相続放棄の検討(家庭裁判所・専門家へ)
把握型親の財産や取引口座が分からない/戸籍が複雑そう戸籍収集と財産目録づくりに集中
分割型財産の大半が実家などの不動産分割方法(現物・代償・換価)の比較検討
感情型介護負担や生前贈与への不満が既に出ている感情と手続きを分離し、早めに第三者(専門家)を挟む

複数に当てはまる場合は、==取り返しがつかない順=「期限型」を最優先==にしてください。放棄の期限だけは後から巻き戻せないためです。

補足

借金の有無は、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3つの信用情報機関に相続人として開示請求すると、ローンやカードの契約状況を確認できるとされています。

具体的な解決方法(時系列の手順)

手続きは「直後→3ヶ月→4ヶ月→10ヶ月→3年」の時系列で進めると、漏れと期限切れを防げます。

  1. 遺言書の確認:自筆の遺言書は開封せず家庭裁判所の検認を受けます。公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要とされています。
  2. 戸籍の収集:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍で相続人を確定します。2024年3月開始の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも直系の戸籍をまとめて請求しやすくなりました。
  3. 法定相続情報一覧図の作成:法務局で無料で認証を受けられ、以後の銀行・証券・登記の手続きで戸籍の束の代わりに使えます。
  4. 財産目録づくり:預貯金・証券・保険・不動産(固定資産税の課税明細書が手がかり)・借金をリスト化します。
  5. 相続放棄・限定承認の判断(3ヶ月以内):マイナスがプラスを上回る可能性があれば家庭裁判所へ申述します。
  6. 準確定申告(4ヶ月以内):親に事業所得や不動産所得があった場合など。年金収入のみで一定額以下なら不要なケースもあります。
  7. 遺産分割協議と相続税申告(10ヶ月以内):相続人全員で分け方を合意し、遺産分割協議書を作成。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるなら申告します。
  8. 名義変更・相続登記(登記は3年以内):不動産・預貯金・車などの名義を順次変更します。
ポイント

葬儀費用などで当面の現金が必要な場合、遺産分割前でも1金融機関あたり150万円を上限に預貯金の一部を単独で払い戻せる仮払い制度(相続開始時残高×3分の1×法定相続分)が利用できるとされています。

ケース別の対処

財産の中身と家族関係で最適な打ち手は変わります。代表的な5つのケース別に対処法を整理しました。

ケース1:実家が財産の大半。誰かが住むなら、その人が実家を取得し他の相続人に金銭を払う代償分割、誰も住まないなら売却代金を分ける換価分割が現実的です。安易な共有名義は将来の売却や修繕で全員の合意が必要になり、次世代に問題を先送りします。

ケース2:借金があるかもしれない。信用情報の照会と郵便物の確認を急ぎ、3ヶ月以内に相続放棄か、プラスの範囲でだけ債務を引き継ぐ限定承認を検討します。判断が難しければ期間伸長の申立てという選択肢もあるとされています。

ケース3:疎遠・行方不明の相続人がいる。遺産分割協議は相続人全員の参加が必要です。行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。

ケース4:認知症の相続人がいる。判断能力が不十分な方は協議に参加できないため、成年後見制度の利用が必要になる場合があります。後見人は原則本人の法定相続分を確保する方向で動くため、分け方の自由度が下がる点は事前に理解しておきましょう。

ケース5:遺言の内容に大きな偏りがある。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり、侵害を知った日から1年以内であれば金銭の支払いを請求(遺留分侵害額請求)できるとされています。

注意

遺産分割協議は相続人が一人でも欠けると無効とされています。「連絡が取りにくい相続人を抜きで進める」ことはできません。

予防・再発防止のコツ(二次相続への備え)

次の相続に備え、遺言書・財産一覧・家族会議の3点セットを早めに整えることが有効とされています。

  • 遺言書:確実性を重視するなら公正証書遺言、費用を抑えるなら法務局の自筆証書遺言書保管制度(手数料3,900円・検認不要)が選択肢です。
  • 財産一覧・エンディングノート:口座・保険・ネット証券・サブスク・スマホのロック解除方法まで書き残すと、遺族の負担が大きく減ります。
  • 生前贈与:暦年課税(年110万円の基礎控除)や相続時精算課税(2024年改正で年110万円の基礎控除が追加)などの制度があります。ただし亡くなる前一定期間(段階的に7年へ延長中)の贈与は相続財産に加算されるルールもあるため、設計は税理士への相談が安全です。
  • 家族会議:一次相続(父または母)の分け方は、残された親の生活資金と二次相続の税負担まで見据えて決めると、トータルの負担を抑えやすいとされています。
まとめ

相続対策は「分け方を決めておく(遺言)」「見つけられるようにしておく(一覧)」「話しておく(家族会議)」の3つで大半のトラブルを予防できます。元気なうちほど選択肢が多く残ります。

専門家・公的情報の見解

一次情報は国税庁・法務局・裁判所で確認し、目的に応じて税理士・司法書士・弁護士を使い分けるのが安全です。

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。(国税庁タックスアンサーNo.4205「相続税の申告と納税」)

税制や登記のルールは改正が多いため、この種の一次情報での確認が欠かせません。専門家の使い分けの目安は次のとおりです。

相談先主な守備範囲費用の目安
税理士相続税の申告・生前贈与の設計報酬は遺産総額の0.5〜1%程度が目安とされる
司法書士相続登記・法定相続情報・放棄書類の作成支援登記は5〜15万円程度が目安とされる
弁護士相続人間の対立・調停・遺留分請求初回相談は無料〜1万円程度の事務所も
行政書士遺産分割協議書などの書類作成数万円程度から

公的な無料窓口として、税務署の電話相談、法務局の登記手続案内、市区町村の無料相談会、収入等の要件を満たす場合は法テラスの無料法律相談も利用できるとされています。

補足

相続税がかかるのは亡くなった方の約1割弱とされています(国税庁の統計)。まず基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と財産総額を比べ、超えそうな場合に税理士へ相談する、という順番が効率的です。

やってはいけないNG対応

預金の使い込み・期限の放置・口約束の分割・独断の名義変更は、後から取り返しがつきにくい典型的なNG行為です。

  1. 親の預金を引き出して私的に使う:相続財産の処分は単純承認とみなされ(民法921条)、相続放棄ができなくなるおそれがあります。葬儀費用に充てる場合も領収書を保管し、他の相続人に共有しましょう。
  2. 「財産が少ないから」と申告・登記を放置する:相続税の無申告には加算税・延滞税が、相続登記の放置には過料のリスクと、相続人が増えて収拾がつかなくなる実害があります。
  3. 分け方を口約束で済ませる:後日の言った言わないを防ぐため、必ず遺産分割協議書として書面化し、全員が実印を押して印鑑証明書を添付します。
  4. 一部の相続人だけで名義変更や解約を進める:他の相続人の不信感を招き、感情型トラブルの引き金になります。
  5. 自筆の遺言書を勝手に開封する:検認前の開封は過料の対象になり得るとされています。見つけたらそのまま家庭裁判所へ。
注意

「とりあえず全部共有名義に」も要注意です。目先の合意は楽ですが、売却・賃貸・修繕のたびに全員の同意が必要になり、次の世代で相続人が倍増して身動きが取れなくなる例が多いとされています。

まとめ:今日からできる3つの行動

迷ったら、次の3つから着手してください。

  1. 3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年の期限をカレンダーに登録する
  2. 戸籍の収集と財産目録づくりを始める(広域交付・法定相続情報を活用)
  3. 借金の可能性・実家の分け方・家族間の対立の芽が1つでもあれば、早めに専門家の初回相談を予約する
まとめ

相続は「期限の管理」と「全体像の見える化」ができていれば、大半の手続きは落ち着いて進められます。判断に迷う分岐(放棄・分割・税)だけ専門家の力を借りるのが、費用対効果の高い進め方です。

よくある質問

Q1. 相続税は誰にでもかかりますか?

かからない人が大多数です。相続税の課税対象になるのは亡くなった方の約1割弱とされ、遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら申告自体が不要です。ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は申告が必要とされている点に注意してください。

Q2. 遺言書を見つけたら開封してもいいですか?

自筆の遺言書は開封せず、家庭裁判所の検認を受けてください。検認前の開封は過料の対象になり得ます。公正証書遺言と、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要とされています。

Q3. 3ヶ月を過ぎたら相続放棄はもうできませんか?

原則はできませんが、例外が認められる余地はあります。借金の存在を知り得なかった事情がある場合などに、督促状が届いた時点を起算点として申述が受理された例もあるとされています。期限経過後に借金が発覚したら、自己判断で支払う前に弁護士・司法書士へ早急に相談してください。

Q4. 手続きはすべて自分でできますか?

相続人同士が円満で財産がシンプルなら、自分で完結することも可能です。役所・法務局・税務署の窓口や記載例も整備されています。一方、相続税申告が必要なケースや不動産の分け方でもめそうなケースは、報酬(税理士は遺産総額の0.5〜1%程度、登記は5〜15万円程度が目安とされる)を払っても専門家に任せるほうが、特例の適用漏れや手戻りを防げます。

Q5. 実家を相続しましたが、住む予定がありません。

空き家のまま放置しないことが最優先です。売却する場合、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる空き家特例が使える可能性があります(適用期限・耐震要件など条件が細かいため要確認)。買い手がつかない土地は、要件を満たせば国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度(負担金は原則20万円〜)という選択肢もあるとされています。

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本記事は一般的な情報の整理であり、個別の税務・法律判断を保証するものではありません。税制・法制度は改正されるため、実際の手続きの際は国税庁・法務局・裁判所の最新情報を確認のうえ、税理士・司法書士・弁護士など専門家への相談をおすすめします。

最終確認日:2026年7月13日

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